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2019年度予算は「放漫財政」のオンパレード

2019年度予算は「放漫財政」のオンパレード
業者が諮問機関委員を務め、忖度役人が予算を組む

史上初めて、当初予算として100兆円を突破した2019年度予算が、3月27日に成立した。内容は、何の必要性があるのか疑わしい米国製兵器の「爆買い」を中心とした5兆2574億円(今後5年間で27兆4700億円)もの防衛費を典型に、放漫財政のオンパレード。首相の安倍晋三は未だ「財政健全化」を口にするのを止めていないが、こんな予算を組んでおいて誰が真に受けるだろうか。

 そもそも安倍は18年、財政健全化の指標であり、借金に頼らず政策経費をどれだけ賄えるかを示す国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化について20年の達成を断念。それが「国際公約」とされていたにもかかわらず、25年に先送りにした。

財政健全化はさらに先送りに

 ところが、1月30日に開かれた経済財政諮問会議での田和宏・内閣府政策統括官の説明によれば、「PB黒字化の時期は26年度となる見込み」だという。1年も経たないうちに、さらに先送りにしたわけだ。

 この調子だと、「PB黒字化」の達成、すなわち「財政健全化」の実現など、いつのことになるやら見当もつかない。国の借金は、このままだとさらに増え続ける。今秋、消費税を10%増税するのなら、せめて歳出にメスを入れるくらいの議論があってしかるべきだ。だが、安倍がバラマキ財政を止めようとしないのは、“スポンサー”である財界を喜ばせるためではないのか。

 事実、前出の「経済政策の司令塔」とされる経済財政諮問会議の昨年2月20日の会合で、当時経団連会長だった委員の榊原定征らは、「(オリンピックなどの)一連のビッグイベント後の成長の基盤となるようなレガシー事業、大型投資プロジェクトや波及効果の大きな政策を実施すべきである」と発言している。

 何のことはない。「もっと税金で大型公共事業をやり、自分達の食い扶持を増やせ」と要求しているのに等しい。公共事業に寄生する業者の団体の一員が、政府の予算決定に関与する公的諮問機関の委員になること自体、利益相反だという常識はとうにこの国では消滅しているが、こんな自分達の利益しか頭にない集団の要求を聞いて放漫財政を続けたら、国家が破綻しよう。

 そのくせ消費税の増税を唱えながらも、安倍に法人税率を引き下げさせたのが榊原をはじめとした財界の面々だ。彼らの厚顔ぶりにはあきれるしかないが、少しでも景気が悪くなるとすぐに「財政出動」を叫び出すような財界が政権与党を牛耳っている限り、構造的にこの国では「財政健全化」など夢物語となっているのではないのか。

 加えて、何よりも人気取りばかり優先したがる安倍のこと。バナナの叩き売り紛いにやれ「地方創生」(15年)だの「一億総活躍社会」(16年)だの、さらには「人づくり革命」(18年)だのとコロコロ年度ごとに騒ぎ立てながら、成果らしいものは乏しいのに、無類の忖度好きらしい役人にそれらを名目に予算を過分に組ませ、大盤振る舞いを続けてきた。その結果が、国・地方の長期債務残高が昨年度末で過去最大の約1108兆円という、目も当てられぬ破局的な財政悪化に他ならない。

 周知のように、対国内総生産(GDP)債務残高比率で見ると、日本は先進主要国において飛び抜けて最悪レベルにとなっているのも、ある意味では当然なのだ。

 今どきカビが生えたように古臭いマルクスの『資本論』ではあるまいが、その中に「“我が亡き後に洪水は来たれ!”これが全ての資本家及び全ての資本家国民のスローガンである」と論じた箇所がある。「全ての」と言えるかどうか別にして、少なくとも自分達の目先の利益だけ優先し、後は野となれ山となれでツケを次世代に回して平気な風の安倍政権と財界、そしてそれに対し鈍感な国民の姿を真っ先に想起させるのは間違いあるまい。

経済指数は相次いで悪化

 安倍は予算が参議院で成立した日の予算委員会締めくくり質疑で、「内需の増加基調が続き景気は緩やかに回復している」などと述べた。ところが、この月の7日の時点で内閣府が発表した1月の景気動向指数(速報値)での基調判断は、「下方への局面変化を示している」だった。この表現が登場するのは実に4年2カ月ぶりという。

 また、日銀が4月1日に発表した3月の全国短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が、昨年12月の調査から7ポイント低下し、第2次安倍政権下で最大の悪化となった。これでは財政規律などどこ吹く風の治癒不能な放漫財政を続けながら、もはや「目先の利益」すら実現できなくなりつつある。借金の山を、さらに際限なく膨らましているにもかかわらずだ。

 そもそも、第2次安倍政権下で日本の名目GDPの延びは微々たるものでほぼゼロ。米国のそれは同時期、20%以上の増加率を示しているのとは対照的だ。それでも17年度の法人企業統計では大企業(金融・保険業を含む資本金10億円以上)の内部留保が425・8兆円と最高値を更新したのは、円安によって企業業績が水増しされ、さらには非正規雇用が増大して実質賃金が下がり続けたからに他ならない。

 仮に放漫財政と言われようが、まだ将来の成長戦略を確固としたものにし、今後の経済運営に資するような政策を実現できれば税収の増加が期待できよう。だが、出口が未だ見えぬまま、黒田日銀にマイナス金利とセットで実に400兆円も金融緩和させ、異常な財政出動を続けさせた挙げ句、何か日本経済に具体的な展望が生まれたとでも言えるのか。

 恐ろしいことに、普通国債残高の残存期間別内訳で見ると、償還までの年限が長い超長期国債(20年、30年、40年)へのシフトが進行している。その結果、借り換え分の国債発行残高を縮小できるため、一見財政規律が戻ったような印象を与えかねないが、さらにこの先の世代に途方もないツケを押し付けているだけにすぎない。これがモラルハザードでなくて、何なのか。

 この期に及んで「3本の矢からなるアベノミクスが、一定の成果をあげたのは間違いない」(『日本経済新聞』電子版18年12月22日付)などという提灯記事がいまだに堂々と出回っている限り、国の財政が当面する解決すべき真の、そして至難極まる課題に目を向けることなどまずできはしまい。

 安倍だの黒田だの榊原だのが「我が亡き後に洪水は来たれ!」を地で行っても、「洪水」で辛酸を舐めるのは今の、そしてこれから生まれてくる子ども達だ。その時はモラルハザードの当事者達は墓場にいるか、悠々自適にリタイヤ後の生活を享受しているかのどちらかだろうが、本当にこの時代の大人達は何の疑問も感じないのだろうか。  (敬称略)

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