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未来の会

【番外編3】日本の医療レベルと医療の国際化③

【番外編3】日本の医療レベルと医療の国際化③
アベノミクスと外国人の増加

 昨今、日本に暮らす外国人(在留外国人)、観光やビジネスで日本を訪れる外国人(訪日外国人)は増加の一途をたどり、それに比例するように日本国内の医療機関を受診する外国人患者は増え続けている。この動きは、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてさらに加速することが予想される。そのような社会情勢の中、外国人患者への対応は、薬局も含めどの医療機関にとっても重要な課題の一つとなっている。

 一方アベノミクスにおいて、医療ツーリズムを産業化しようとか日本の医療を海外に輸出しようという動きも盛んである。例えばカンボジアのプノンペンには東京・八王子の北原国際病院が、ロシアのウラジオストクには北海道・帯広の北斗病院が進出していた。このような動きは、日本政府の主導で ODA(政府開発援助)などを使い補助をしていくという従来の動きとは異なっている。

 産業的視点でいえば、訪れた人にいかにして良いもの(この場合には医療サービス)を提供できるか、言い換えれば高付加価値の医療サービスを提供できる組織しか生き残ることはできない。これは社会保障の中で全ての日本人に良いものを提供するという枠組みとは少し異なっている。

 難しいのは観光目的に日本に来た外国人の扱いである。日本国民ではなく税金を支払っているわけではないので、日本国民のような手厚い医療サービスをする必要はないともいえるが、医療の倫理あるいは応召義務といった観点からは、日本人と変わりがない医療を提供した方がいいという見方もある。この部分はやや哲学的な論争になるので本稿からは外すが、具体的なアクションとしては、厚生労働省は「すべての外国人が日本の医療を安全・安心に享受できる環境づくり」のため、平成23年度に「外国人患者受入れ医療機関認証制度 Japan Medical Service Accreditation for International Patients(JMIP)」を構築、平成24年度から一般財団法人日本医療教育財団が制度運営を開始している。JMIPでは「①受入れ対応」「②患者サービス」「③医療提供の運営」「④組織体制と管理」「⑤改善に向けた取り組み」の5つの観点で、外国人患者の受入れ体制を評価、認証している。

 外国人患者受入れ医療機関認証制度推進協議会では、平成24年度からJMIPの普及促進のために医療機関や外国人に対し、様々な活動を行っている。その活動の中で外国人患者対応への課題や取り組み事例を取り上げ、制度の普及推進のみならず、外国人患者の受入れ環境の整備、体制構築についても取り組んでいる。

新たに起きてきた問題

 それは、在留外国人による公的医療保険の不正利用や制度の隙間を突いた乱用である。 

 「在留外国人による公的医療保険の不正利用や制度の隙間を突いた乱用が問題視されていることから、厚労省は15日までに、実態把握に向けた全国調査を始めた。公的保険に加入して高額医療の自己負担額を低く抑える目的で不正に在留資格を得た事例の件数などを、市町村を通じて調べる。今秋に結果をまとめ、防止策を検討する。在留外国人は約256万人おり、国籍別では中国が最多。会社で働いている場合、中小企業が対象の全国健康保険協会(協会けんぽ)か大企業中心の健康保険組合に加入し、扶養家族にも適用される」(東京新聞朝刊2018年7月16日付 )

 ここで、再度外国人患者を3つに分類してみたい。1つ目は、医療ツーリズムに代表される自費で医療を受けに来日する外国人である。2つ目は、観光客が訪日中に怪我や病気になって医療機関を受診するケースである。そして3つ目が上述されている在留外国人である。1つ目や2つ目は、医療や観光という目的が明確な渡航であり、問題はもちろん起き得るが、それは外国人患者と医療提供側との問題が大きい。

 実はこの問題は、成長戦略として民主党が取り上げた頃から認識されており、厚労省も外国人を受け入れることができる病院の確保が重要だということで、外国人患者受け入れに関する認証制度を創設し、観光庁も訪日外国人旅行者受け入れ可能な医療機関を選んで対応しようとしてきた。しかし、それは悪意のある渡航者を対象にしたものではない。

 悪意のある渡航者対象には、2回目の渡航を認めないとか海外旅行の保険に加入させるとかの案も出ているようだが、あまり効果があるとは思えない。しかし、この問題はまったく新しい視点で解決できる部分もあるのではないかと思う。

 米国では営利や非営利の民間保険会社が我々のような勤労世代の医療保険を提供している。民間保険で問題になるのは、加入者の選別である。言い換えれば、民間保険は加入者を選別する力があるのである。これに対して、社会保険にはそのノウハウはない。日本にも、米国の民間保険とは異なるが、民間保険会社による医療保険の販売が行われており、加入者に対してリスクに応じた料金設定を行い、場合によっては加入を拒否している。

 そこで、日本に住む期間が短い外国人に対しては、医療保険の制度は変えず、医療保険加入審査と支払い業務を民間保険会社に委託してはどうだろうか。民間保険会社への委託費用はかかるが、これは保険料に上乗せすることで回収は可能である。

 そうすれば、現行の制度を変更して従来から疾病がある人(始期前発病)には支払わないといった対応も可能になる。それでもすり抜ける悪意ある外国人患者はいるだろうが、現状よりは明らかにましになるだろう。

まとめ

 日本の保険制度は社会保障制度の一部であり、日本国民(これは正規のルートをとっている外国人も含む)のための制度である。しかし、この加入への仕組みがあまりに「緩い」ために、様々な問題が起きてきている。

 

 

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