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未来の会

【番外編2】日本の医療レベルと医療の国際化②

 今回も前回に続き、日本の医療の国際化の歴史を眺めたい。

安倍政権における日本再興戦略としての
ヘルスケア戦略:国際交流と健康寿命の延伸

 世界的に見て、医療を目的にするかどうかは別にして、人の流動化はとどまるところを知らなかった。LCC(格安航空会社)の普及もこれを助長した。そして、オリンピックの誘致に成功した日本もこの波に乗ろうと、観光に力を入れだした。

 この話に移る前に、安倍政権における医療の国際化について少し考えてみたい。安倍政権は日本再興戦略の一つであるヘルスケア戦略として国際交流や健康寿命の延伸を行おうとしたり、医療を輸出するアウトバウンドまで事業範囲を広げたりしている。いわゆる「第3の矢」の重要項目に医療分野やその予防分野としての健康産業を位置付けている。

 このような状況を受け、経済産業省主導で2011年に設立され、外国人患者を受け入れるインバウンドを中心に活動していた一般社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)は、安倍政権の肝いりで2013年、日本病院会元会長の山本修三氏が理事長に就任、事業の中核をアウトバウンドに据えることになった。これは医療機器と医療サービスをセットで輸出していこうというものである。

 こうした動きに、医療機器会社を中心に50社以上が賛同した。医療機器会社は出遅れていた海外進出を何とかしたいという狙いもあった。

 医療が成長分野であること自体は疑いの余地がない。特にアジア諸国においてはヘルスケアやバイオなどはビジネスとして力を入れている。一方、iPS細胞が典型例だが、ライフサイエンス分野では今後も多くのブレークスルーが期待できる。市場が拡大していくのは確実であろう。

 そういった視点から、安倍政権では当初、アウトバウンドに注目した。国策を行っているMEJもアウトバウンドを事業の中核に据えたり、それに沿って理事を強化したりした。これは一定の成果を収めている。

 しかし、最大の問題は医療の国際展開を進められる「競争力」が日本にあるかであろう。医療の国際展開を図る上で意識すべき大きなライバルは、海外の医療機関となる。今までの日本の医療は社会保障の枠やODA(政府開発援助)の枠の中で行ってきたので、個々の組織体、例えば医療法人に海外の病院のような競争力があるかといえば、大半は乏しいと答えざるを得ないであろう。

日本発の医療ブランドの確立

 とはいえ、様々な方面から日本の医療が国際的に目立っているのは間違いない。これらが統合的に、日本の医療ブランドを高めていくだろう。

 旧来、日本の医療は個別専門分野での学会でアピールを行っていた。その中で、がんや透析治療など世界有数の治療成績を残している分野も多い。今後はそういった各分野での実績が全体としての評価に繋がっていく時期が来ている。

  「クール・ジャパン」という言葉は2002年に米国のジャーナリスト、ダグラス・マグレイ氏が「ジャパンス・グロス・ナショナル・クール」と題するエッセーを英語圏で発表し、日本文化を「クール指数世界ナンバー1」としたことがきっかけとなり普及した言葉である。このエッセーは「日本は美食やアニメ、音楽、ゲーム、キャラクター商品などの分野で世界的な人気を誇る」と論じた。ここには医療は入っていないが、医療も「クール・ジャパン」のアイテムの一つになることは間違いない。

医療アウトバウンドの必要性

 日本の状況からは想像しにくいが、世界では人口が増加し(図①)、全世界の医療ニーズはとどまるところを知らない。例えば糖尿病の患者は中国においては1億960万人になるという。(IDF調査、人口IMF - World Economic Outlook Databases、2015年10月版)。

 インバウンドの一つとして捉えられることが多い、海外の患者を日本で治療しようという医療ツーリズムがそれであるし、もう一つは医療をアジアなどの新興国に輸出しよう、というアウトバウンドという動きである。

 一方、医療分野でマーケットや市場というと、怒る人もいるかもしれない。「命は地球より重い」とか、医療に営利的な考え、分かりやすく言えば金儲け的な考え方は馴染まないという考え方が、日本では根付いているからだ。

 事実だけで見れば、アジアなどの新興国を中心に、医療に対する需要が急拡大している。これは、糖尿病患者の急増(図②)や、日本の20〜30年遅れで急速に高齢化していくアジア(図③)を考えれば明らかである。これをマーケットとして捉えるのが適当なのか、そういう捉え方は非人間的だ、と切り捨てるのが適当なのだろうか。

 次回は、このような動きの一方で起きてきた新たな問題点について考えてみたい。

図①:日本は人口減少でも世界は人口爆発図②:糖尿病患者数
(IDF調査、人口IMF - World Economic Outlook Databases、 2015年10月版)
図③:世界の高齢化率の推移




 

 

 

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