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第106回 ゾフルーザは抗体産生を減らす

第106回 ゾフルーザは抗体産生を減らす

 ゾフルーザは、インフルエンザウイルス特有の酵素cap-dependent endonuclease(CEN)を阻害してmRNAの合成を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制するとされる。タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤(NAI)はウイルスを呼吸器粘膜の細胞表面から離れなくするだけでウイルス増殖を抑制しないが、ゾフルーザは、動物で、肺内のウイルス増殖を抑制する。ヒトでも、服用開始翌日には鼻粘膜でウイルスが検出されなくなる。

 一見、NAIと比較して優れるとの印象だが、実際のところ、症状改善効果やハイリスク者に対する効果と害のバランスはどうか。薬のチェックTIP80号(2018年11月号)の記事1)の概略を紹介する。

症状改善までの期間はタミフルと差なし  

 インフルエンザの症状がなくなるまでの時間は、プラセボと比べて1日早まる程度(差は26.5時間)である。タミフルと比較すると差はない(0.3時間)。入院や抗生物質を要した割合も差がなかった。

 ヒトで重症患者や糖尿病、免疫が低下している人に効くかどうかは調べられていないので不明である。この点もタミフルと同様である。

抗体産生が30%低下、耐性も出現  

 抗体産生については、動物実験や臨床試験結果を審査報告書や申請資料概要でくまなく調べた。臨床試験では、血中抗体を調べているのに、審査情報では全く触れられていない。

 最近公表された文献2)の本文には、プラセボに比較して抗体産生は差がなかったと書かれていた。ところが、附録のデータを詳しく分析(メタ解析)したところ、4倍以上の抗体上昇が認められた人がプラセボに比較して28%少なかった(オッズ比0.72、 p=0.014)。 

 タミフルでは、4倍以上の抗体上昇が認められた人はプラセボに比べて18%減少(オッズ比0.82)したが、ゾフルーザの抗体産生低下はそれよりも大きい。

 タミフルでは、感染防御抗体(鼻粘膜IgA抗体)が10倍以上増加したオッズ比は0.17と5分の1以下であった3)。マウスの実験でも5分の1であり、ヒトデータと一致する3)。実際、ヒトでは再感染が著しい3)。

 ゾフルーザでは、分泌型IgAがどうなっているかは全く不明であり、再感染の危険性が懸念される。

 さらに、ウイルスは早く消えるが、耐性(変異)ウイルスが10〜20%出現し、6日目頃にウイルスが再増殖し、全体的に回復が遅れる。回復中央値は、耐性なし43時間に対して、耐性ありの場合は80時間であった。

さらなる懸念

 ゾフルーザの標的酵素CENは、ウイルス特有と言われるが、ヒトの似た酵素の有無は現在不明。毒性試験では、肝臓や血液凝固系(PTやAPTT)に影響が出ているので、肝障害の可能性もある。無毒性量がヒト用量のせいぜい2〜3倍ということも気になる。

 ゾフルーザはCYP3A(個人差大)で代謝されるので、代謝の遅い人では毒性が強く現れる。相互作用も多く、重大な害が起これば救えない可能性がある。

実地診療では

 自然に治癒する感染症インフルエンザには不要な薬剤である。不明な点が多く、薬価に見合う価値はない。使用すべきではない。


参考資料
1) 薬のチェックTIP、2018:18(80):132-133
2) Hayden FG et al N Engl J Med. 2018;379(10):913-923. 
3) Hama R. Infect Dis. 2016;48(9):651-60の引用文献参照

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