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第103 回 ロミタピドは発がん物質

第103 回 ロミタピドは発がん物質

 ホモ接合体家族性高コレステロール血症(以下、HoFH)を適応症としてロミタピド(商品名ジャクスタピッド)の販売が2016年12月開始された。

 従来、HoFHに対する、スタチン剤などによる薬物治療やアフェレーシスは、総死亡への影響を比較したプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)は実施されていない。

 しかも、HoFHで心筋梗塞や死亡率が高いのは高LDL-コレステロール(LDL-C)のためでなく、高LDL-Cと易凝固性、易炎症性、エネルギー利用の欠陥などが遺伝的に交絡しているためである。従って、HoFHに対するコレステロール低下療法は長寿に繋がらず、害があるだけと考えられる。

 薬のチェックTIP誌78号(2018年7月)でロミタピドについて検討した。その概略を紹介する。

ロミタピドはC型肝炎ウイルスに似た毒物

 小腸上皮細胞内と肝細胞内で、トリグリセリド(TG)がMTP(microsomal triglyceride transfer protein:ミクロソーム・トリグリセリド輸送タンパク)によって運ばれてカイロミクロンや超低比重リポタンパク(VLDL)が形成される。

 ロミタピドは、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝細胞内でMTPを阻害しVLDL生成を阻害し、LDL-Cを低下させるのと同じ機序でLDL-Cを低下させる。さらにロミタピドは、小腸上皮細胞内でもMTPを阻害し、カイロミクロンの生成を阻害する。

 この一連の作用のため、肝臓や小腸上皮細胞内にTGが蓄積し、動物実験ではヒト用量の3分の1で肝細胞壊死と肝がん、さらに、極めてまれな小腸がんをも生じる。小腸における脂質吸収の低下で下痢を起こし、脂溶性ビタミン(特にビタミンK)の吸収低下で出血しやくなる。

ヒトでも小腸がんの報告

 ロミタピドは1173人のHoFHに使われて、小腸(回腸)がんが1人(63歳)報告された。一般人口における小腸腺がんの年間発症率(欧米諸国10万人あたり0.4人)と比較して213倍起こりやすいと推定される(p<0.006)。

主要臨床試験の結果

 承認の根拠になった主な臨床試験では、29人のHoFHを対象に1日5mgから始めて漸増し(最高60 mgまで)、26週間使用後にLDL-コレステロールの低下を確認し、26週以降78週までは安全性評価を多めに設けて継続した。ロミタピド用量の中央値は1日40mgであった。

 LDL-コレステロールは開始前に比較して26週で50%、56週で44%、78週で38%低下した。

 26週までに6人が脱落。脱落理由は4人が有害事象のため、うち3人は胃腸障害であった。26週までで27人(93%)が消化器症状を訴えていた。

 肝臓内の脂肪量は、開始時の1.0%が26週で8.6%に増加し、極端に高くなる人が増えていた。

冠動脈疾患や総死亡への影響は対照群を持たない試験のため、評価不能である。

結論

 ロミタピドは、HCVと同じ機序で小腸と肝臓を壊死させ発がん性がある毒物でしかない。HoFHの人にも何ら利益はなく、害があるだけである。使ってはいけない。

参考文献:1) ロミタピド、薬のチェックTIP、2018: 18(78):82-83 

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