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糖尿病性腎症の重症化予防を考える

糖尿病性腎症の重症化予防を考える
糖尿病性腎症の重症化予防を考える

近年、少子高齢化による医療費増大の観点から、生活習慣病の発症・重症化予防対策の必要性が叫ばれている。特に糖尿病は、厚労省の2016年国民健康・栄養調査で推計成人患者が1000万人に達し、調査開始以来の最高値を記録。腎症を合併し、透析導入に至るケースも後を絶たない。このような中、日本介護事業連合会は4月18日、「いつまでも活き活きと働き続けるために〜糖尿病性腎症の重症化予防と透析医療から見た糖尿病対策〜」と銘打ったセミナーを都内で開いた。

 最初に登壇した群馬大学大学院医学系研究科医療の質・安全学講座の小松康宏教授(前聖路加国際病院副院長・腎臓内科部長)は「現在、日本の人工透析患者は約33万人。人口当たりの透析患者数は世界第1位で、その原因の多くが糖尿病である」と説明した。透析では血液透析で使用するダイアライザーの価格引き下げや関連薬剤の包括払い導入などが行われながらも、患者1人当たり年間医療費は約500万円。かつ血液透析の場合、患者は週3回、1回あたり4時間の透析を通院で受けなければならない。

 透析患者の平均余命は男女とも同年代の日本人の平均余命の約半分と言われる。小松教授は「腎機能低下はある一定の水準を超えると加速度的に進む上に、糖尿病患者の腎機能低下速度は非糖尿病者と比べ約5〜10倍も早い」と言及。早期に血糖値・血圧値のコントロールに着手、腎症を予防することが社会的課題との認識を示し、「医師、看護師、薬剤師などによる多職種の連携による予防努力が必要」と述べた。

 厚生労働省も地方自治体での糖尿病性腎症予防対策を支援。2016年に「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し、日本医師会、日本糖尿病性対策推進会議と連携協定も締結している。同セミナーでは糖尿病重症化予防事業を実施しているベネフィットワン・ヘルスケアの團野友香氏がその取り組みについて講演した。

 同社は平成29年度に糖尿病の受診勧奨事業を21団体、重症化予防事業を55団体で実施し、面談対象者数約1700人の実績を有する。

 重症化予防事業は自治体・健保組合などの契約団体を通じ、同意を得た団体加盟の糖尿病患者が対象。初回面談の対象者からの聴取内容を基に支援プランを作成、2〜5カ月目までは毎月、糖尿病関連のニュースレター送付と電話による服薬・食事・運動などの支援を実施する。開始6カ月後の面談で対象者の食・運動習慣、ヘルスリテラシー、検査値の変化を評価している。

 團野氏は同事業の特徴として「プラン作成時は初回面談を行った担当専門職と経験豊富な専門職も交えたプラン・ミーティングを開催、より適切なプラン作成に努めている」と述べた。また、契約自治体での事業実例を紹介。初回面談者13人の84.6%に当たる11人が6カ月の支援を完遂、実施前の11人の平均値はBMIが26.9、HbA1cが7.7%だったが、支援終了時にはBMIが26.3 、HbA1cが6.9%に改善したと説明した。

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