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健保組合で増加懸念される「解散の予備軍」

健保組合で増加懸念される「解散の予備軍」
協会けんぽへの移行で公費負担が増加

大企業の会社員らが入る健康保険組合の平均保険料率の上昇が止まらない。2018年度は9・215%と過去最高を記録し、11年連続で伸び続けている状況だ。4月23日に公表した健康保険組合連合会(健保連)は、約23%の313組合は中小企業向けの協会けんぽの保険料率(平均10%)を上回り、「解散の予備軍」に陥っていると指摘している。

 健保連が全国1389組合のうち、1372組合分を集計し、速報値として公表した。172組合が料率を引き上げ、前年度と比べて0・051ポイント増えた。組合員が納める保険料の総額は、前年度比2・07%増の8兆1010億円。

 保険料率が上昇するのは、高齢者の医療費を健保組合の拠出金で支える仕組みがあるためで、おおむね半分は組合員や家族が医療機関などを受診した際に窓口負担を超える部分として支払われるが、約4割は高齢者の医療費を現役世代が負担する分に充てられている。

 団塊世代が75歳以上になるなど、さらなる高齢化が進めば、高齢者医療への負担分が5割を超える可能性がある。既に283組合では、組合に加入している人の医療費よりも、高齢者医療への拠出金の割合が多い状況だ。

 健保連幹部は「このままでは制度が持たなくなる。抜本的な改革に向けて手を打たないといけない」と危機感を募らせている。

 こうした危機感を裏付けているのは、健保組合数の推移である。07年に1518あった健保組合は、18年には1389に減少している。減少している理由は、健保組合同士の合併の他、上昇する保険料率に耐えかねて協会けんぽに移行しているためだ。

 これは、協会けんぽの保険料率を超えた場合、健保組合を解散して協会けんぽに移行した方が、保険料率が下がるのが影響している。

 ただ、人間ドックや特定健診に対する助成は健保組合の方が手厚いケースが多く、協会けんぽへの移行は加入者側にもデメリットになる可能性がある。

 今年4月以降は、約50万人の加入者を抱える人材派遣健保や、約16万人が加入する日生協健保が今年度内の解散を検討していることが取り沙汰されている。両健保は解散して協会けんぽに移行する検討をしているが、協会けんぽには健保組合にはない国の補助金が投入されているため、約200億円の公費負担が追加される見込みだ。

 25年度には380組合が協会けんぽを上回る保険料率になると健保連は予測している。

 厚生労働省は今後、健保組合を解散して協会けんぽに移行する際に、適正な手続きが採られているかを確認するためのガイドラインを作成する方針だ。

 厚労省幹部は「協会けんぽの保険料率が低いから移行するという『ただ乗り』のような状況が多発するのは好ましくない。防止はできないが、適正な手続きで移行されているかのチェックはしていきたい」と話す。

 政府は、2040年の持続的な社会保障制度の在り方を考える「ポスト一体改革」の検討に入っている。具体的な検討内容はこれからになるが、医療保険を巡る健保組合などの在り方の見直しも議題に上りそうだ。

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