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未来の会

社会の求めに応える大学病院を目指して~高度医療・教育・研究に取り組むための支援を~

社会の求めに応える大学病院を目指して~高度医療・教育・研究に取り組むための支援を~
山本修一(やまもと・しゅういち)1957年東京都生まれ。83年千葉大学医学部卒業。同大医学部附属病院眼科研修医。89年同大大学院医学研究科修了。90年富山医科薬科大学眼科講師。91年米コロンビア大学眼研究所研究員。94年富山医科薬科大眼科助教授。97年東邦大学佐倉病院眼科助教授。2001年同病院眼科教授。03年千葉大大学院医学研究院眼科学教授。07年千葉大病院副病院長(併任)。14年千葉大病院長・千葉大副学長。18年日本病院団体協議会議長。国立大学附属病院長会議常置委員長、全国医学部長病院長会議「大学病院の医療に関する委員会」委員長、中央社会保険医療協議会DPC評価分科会分科会長なども務める。

変わりゆく日本の医療の中で、大学病院はどのように変化し、どのような役割を担っていくことになるのだろうか。千葉大学医学部附属病院長で、この4月に日本病院団体協議会(日病協)議長に就任した山本修一氏に、改革に取り組んだことで新しい風が吹き始めている千葉大学医学部附属病院(千葉大病院)の例を紹介してもらいながら、これからの大学病院の医療について語っていただいた。また、日病協の今後の取り組みについても話を聞いた。

——日病協の新議長として、診療報酬の改定をどう評価していますか。

山本 2018年度の改定に向けて、日病協は昨年7項目から成る要望書を出していました。その要望がどうなったかを○△×で評価してみると、○と△が多かったな、という結果になっています。現在の医療全体を考えると、医療から介護へのスムーズな移行に向けての体制構築が急がれていますから、どうしてもそこが中心になります。そのため、急性期病院としては不満もあるのですが、全体のパイが限られている中で、最大限考慮していただいた結果なのかな、とは思っています。

——特に評価が高いのは?

山本 ○を付けたのは、「重症度、医療・看護必要度」の部分ですね。我々が以前から言ってきたのは、配置する看護師の人数だけで入院基本料を変えるのはおかしい、本当に必要なケアや機能を基に評価してほしい、ということでした。今回は、それをかなり取り入れていただけたと思います。もう一つは、「地域包括ケア病棟における在宅からの受け入れ機能の評価」ですね。地域包括ケア病棟の本来の機能は、ポストアキュート(急性期経過後に引き続き入院医療を要する状態)ではなく、在宅へのスムーズな移行であると主張してきましたが、今回の改定ではそれがしっかり評価されています。ここにも○が付いています。

——×は入院基本料の引き上げですね。

山本 入院基本料に関しては、全体的に上げてほしいという要望でしたが、これに関しては全くご配慮いただけませんでした。

費用対効果や消費税問題に取り組む

——日病協議長として今後どのようなことに取り組んでいきますか。

山本 診療報酬の問題で言うと、今年度の改定では、医療技術の費用対効果評価の問題がペンディングとなっています。先延ばしになったとはいえ、重要な問題ですから、次の改定に向けてどのように議論が展開していくのか、注意深く見守っていく必要があると思っています。もう一つは、働き方改革に関する問題です。病院関係者にとって非常に関心の高いテーマで、皆さん強い危機感を持っています。それから控除対象外消費税の問題です。来年10月に予定通り税率が10%に上がるとしたら、現在の体制をどう変えていくのか、しっかり考えておく必要があります。現在、急性期病院ほど診療報酬による補填不足が生じているのですが、これをどう是正するのか注視していく必要があります。対応については、日病協の各加盟団体の考えを聞き、合意が見つかった点について主張していくことになります。

——各団体の考えはかなり違いますか

山本 消費税率が5%から8%に上がった時に、日病協として消費税の補填状況の調査を行っていますが、病院の機能によって、また病院団体によって、補填状況が異なるという結果が出ています。例えば、国立大学病院は6割程度しか補填されておらず、膨大な補填不足が生じています。我々の試算では、42の国立大学病院を合わせると、3年間で514億円になります。千葉大病院の場合、3年間で17億円です。これだけ補填不足があると、どんなに経営努力をしても苦しいですね。

——消費税問題はどう解決すべきでしょうか。

山本 診療報酬で解決しようというのは、やはり難しいのではないかと思います。どうやっても不均衡が生じます。国立大学病院では3年間で514億円の補填不足といっても、各病院によって大きな差があります。病院を建築したり、高額な医療機器を購入したりしたところは当然、多額の消費税を払っています。どんなにうまい仕組みを作っても、それを診療報酬で解決しようとすれば、不平等が生じてしまうのは当たり前です。

——意見をまとめるのはご苦労だと思いますが、日病協の会員団体は増えているのですね

山本 日本リハビリテーション病院・施設協会が昨年9月に新たに加わり、加入団体は15団体になりました。病院機能に対応した団体ができている以上、それを専門にやっている方達に加わってもらい、ご意見をいただくというのは重要なことだと思っています。日病協としての議論を深めていくためにも大切です。

リクエストに見合った支援を

——国立大学附属病院長会議常置委員長や全国医学部長病院長会議「大学病院の医療に関する委員会」委員長など責任あるポストに就いていますね。

山本 多くの役職を兼ねることになりましたが、国立大学附属病院長は任期が割と短いことが多いので、そういうことも関係しているかもしれません。千葉大病院の病院長は、1期が3年で2期までとなっていますが、1期が2年で、2期4年までという大学が多いようです。現在、私は2期の途中で5年目に入ったところですが、国立大学の病院長の中では長い方なのです。

——どのようなことに取り組んできたのですか。

山本 国立大学附属病院長会議常置委員長としてずっと訴えてきたのは、大学病院として求められることに見合った支援をいただきたい、ということです。千葉大病院の場合、収入の約92%は診療報酬に依存していて、補助金その他は約8%にすぎません。補助金がもっと多いと思われていますが、これが現実です。そういった中で、大学病院として高度な医療が求められるのはもちろんですし、教育もやれ、研究もやれと、リクエストは非常に多い。それだけ社会的に大きな使命を担っているということは自覚していますが、それに見合った社会からの支援を受けているかというと、そうなってはいません。社会の期待に応えていくためにも、支援していただきたいと主張してきました。特に国立大学附属病院長会議としては、国からの十分な支援をお願いしているところです。


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