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未来の会

医師の働き方も変える「医療のICT化」

医師の働き方も変える「医療のICT化」
オンライン診療以外にも種々の項目が算定対象に

2018年4月の診療報酬改定は、6年ぶりの介護報酬との同時改定となり、団塊の世代が後期高齢者入りする2025年に向けて、大きな節目の改定となった。超高齢時代を迎えて、国家の財源が逼迫する中で、評価の適正化を通じた地域包括ケアシステムの確立などが、大きな目標に据えられた。また、各都道府県が策定する地域医療構想や病床機能報告が出そろうため、それをいかに診療報酬に反映させていくかについても、より議論が深められた。

 改定率は、診療報酬本体はプラス0.55%のプラス改定だが、薬価はマイナス1.65%、材料価格はマイナス0.09%で、これらのマイナス分を加味すると、全体ではマイナス1.19%の改定となった。本体部分の0.55%は、国費ベースでは約600億円に相当する。

 情報通信技術(ICT)に注目すると、目玉は、オンライン診療で、「オンライン診療料」(1カ月につき70点)、「オンライン医学管理料」及び「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」(共に1カ月につき100点)が新設されたことだ。対面診療とパソコンやスマートフォンなどのICTを組み合わせた診療に算定されることになる。これについては、厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定中である。

 さらに、ICT化の流れは必定で、オンライン診療以外にも、いくつか新たな算定項目が加えられている。まず、病理診断へのICT活用では、その精度を担保したデジタル病理画像を用いた場合、「病理診断料」「病理診断管理加算」が算定できるようになる。

 これまでにも、病理組織標本・電子顕微鏡病理組織標本・免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本・術中迅速病理組織標本で作製された組織標本に基づく診断が認められていた。今改定では、これに加えて、組織標本のデジタル病理画像のみを用いた場合でも、診断の別または回数にかかわらず、月1回に限り算定できるようになる。

 また、他の医療機関の病理専門医にデジタル病理画像を送信し、診断結果を受信する遠隔病理診断も評価される。このために、新たに設けられた算定要件では、病理診断を専ら担当する常勤の医師が、当該保険医療機関において週24時間以上勤務実態がある場合、自宅などの当該保険医療機関以外の場所で、デジタル病理画像の観察及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた上で観察を行うことを求めている。さらに、その結果を文書により当該患者の診療を担当する医師に報告した場合も算定できる。

医師の「柔軟な勤務」の実現を目指す

 なお、デジタル病理画像に基づく病理診断に当たっては、関係学会による指針を参考とすること、当該医師の勤務状況を適切に把握していることも必要になる。

 施設基準として、病理診断管理加算または口腔病理診断管理加算に関する届け出を行っている施設であること、デジタル病理画像の管理を行うための十分な体制を整備していることが定められている。

 また、画像診断、画像診断管理加算、病理診断料、病理診断管理加算は、自宅など医療機関以外の場所でICTを活用して読影した場合も算定できるようになる。医師の働き方改革が唱えられている時代にあって、柔軟な勤務を叶えられることを目指したものだ。

 2017年9月に厚労省医政局から出された通知を受けて、ICTを用いた遠隔死亡診断も認められるようになった。在宅患者訪問診療料の死亡診断加算について、ICTを利用した場合にも算定できるようにするため、算定要件が定められた。

 死亡診断加算は、在宅での療養を行っている患者が在宅で死亡した場合であって、死亡日に往診または訪問診療を行い、死亡診断を行った場合に算定できるようになった。厚労省の「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」に基づき、ICTを利用した看護師との連携による死亡診断を行い、死亡診断加算を算定する場合は、以下の要件を満たしていることが必要になる。

 すなわち、①定期的・計画的な訪問診療を行っている②正当な理由のために医師が直接対面での死亡診断などを行うまでに12時間以上を要することが見込まれる状況である③離島地域などに居住している患者であって、連携する他の保険医療機関において在宅患者訪問看護・指導料の在宅ターミナルケア加算、または連携する訪問看護ステーションにおいて訪問看護ターミナルケア療養費を算定している──の3点である。

離島・へき地だけでなく都市部でも利点

 また、ICT導入によるカンファレンスも認められるようになった。対面でのカンファレンスなどを求めている評価項目について、各項目が定めている内容や地理的条件などを考慮し、一定の条件の下でICTを用いたカンファレンスなどを組み合わせて開催できるように要件が見直された。

 対象となる診療報酬は、退院時共同指導料、在宅患者緊急時等カンファレンス料、在宅患者緊急時等カンファレンス加算(訪問看護療養費)、在宅患者訪問褥瘡管理指導料、精神科在宅患者支援管理料、精神科重症患者支援管理連携加算(訪問看護療養費)などである。

 在宅患者緊急時等カンファレンス料では、カンファレンスは、関係者全員が患家に赴いて実施することを原則としつつも、やむを得ない事情などにより参加できない場合は、リアルタイムでのコミュニケーションが可能な機器(ビデオ通話)を用いて参加した場合にも、算定可能である。なお、当該カンファレンスにおいて患者の個人情報を画面上で共有する際は、患者の同意を得ていなくてはならない。また、電子カルテなどを含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末を用いてカンファレンスを行う場合は、厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応していなくてはならない。

 共同カンファレンス実施者には、歯科医師、保険薬剤師、訪問看護ステーションの保健師、助産師、看護師、理学療法士、作業療法士もしくは言語聴覚士、介護支援専門員または相談支援専門員が追加された。

 さらに、遠隔モニタリングについては、在宅酸素療法指導管理料、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)指導管理料について、共に1カ月につき150点の加算が新設された。また、心臓ペースメーカー指導管理料の遠隔モニタリング加算は、従来の60点から、320点に増点された。

 ICTを活用した遠隔医療となれば、離島やへき地の患者のものだと考えがちだが。都市部においても、多様な患者ニーズに応え、医師の働き方を支えるためにも、無視できない施策となっている。施策の流れを注視したい。

 

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