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将来の日本を見通しながら 診療報酬改定を評価する

将来の日本を見通しながら 診療報酬改定を評価する
高橋 泰(たかはし・たい)1959年石川県生まれ。86年金沢大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院研修医。東京大学大学院医学系研究科(医学博士)。米スタンフォード大学アジア太平洋研究所客員研究員、米ハーバード大学公衆衛生大学院武見国際保健プログラム武見フェローを経て、97年国際医療福祉大学教授。2009年同大大学院教授。専門は、二次医療圏データベースを利用した日本の医療提携体制の再構築、データを活用した病院経営管理、高齢者の機能衰退に応じた提供体制整備。

2018年度の診療・介護報酬同時改定は、働く人が減って高齢者が増えていくという人口構造の変化に対応した種々の改革との整合性が求められる、非常に難しい改定だった。その状況下、多方面に配慮した「良くできた改定」だったと高橋氏は評価。今後の医療・介護は働き手不足をどう乗り切るかが大きな課題で、AI(人工知能)を含めたICT(情報通信技術)の活用が求められているという。

——今回の診療・介護報酬同時改定をどう評価しますか。

高橋 診療報酬や介護報酬の改定の評価には、二つの見方があります。一つは、現場の人が自分の施設にとってどうだったかという評価です。今回の改定で言えば、地域密着型の医療に取り組んでいる施設では「良い改定だった」と言うでしょうし、急性期医療をやっていて「7対1」から基準が大きく下がる施設からは、「とんでもない改定だった」という声が聞かれると思います。ただ、私自身は、そういった評価とは違う見方をしています。多くの進行中の医療関連の改革と整合性を持たせながら、限られた財源で、多くのニーズを満たす改定を行うのはなかなか困難です。それがうまくできているかどうか、作品の出来栄えを評価するように、診療・介護の報酬改定を評価しています。

——その見方では、どう評価されますか。

高橋 今回の改定は、財源が限られ、制約条件がたくさんある中で、いろいろなところに配慮した、良くできた改定だったと評価しています。

——制約条件とはどのようなものですか。

高橋 現在進行中の地域医療構想、地域包括ケア、働き方改革などとの整合性を持たせる必要があることが制約条件になりますが、それらの改革の根底に、人口構造が変化し、若年人口が大幅に減り、高齢者が増えていくということがあります。私は講演などでよく話すのですが、中国の大河は基本的に西から東に流れていきます。西にヒマラヤ山脈があり、東に海があるので、蛇行することはあっても、大きく見れば西から東へ流れるわけです。日本の診療報酬・介護報酬の改定も、いろいろな動きを見せつつ、大きな流れは変わっていません。中国の大河における大地の勾配に当たるのが、人口構造の変化なのです。働く年代の人口が減り、高齢者が増えることで、急性期病床の数を減らし、支え癒やす医療を増やしていく必要があります。地域ごとの人口推移や現状の病床の多寡に応じて病床転換が必要になってくる。この大きな流れは変わりません。

——診療報酬の改定は、病院経営にはどのような影響を及ぼすでしょうか。

高橋 かろうじて本体部分でプラス0・55%となっていますが、薬価が下がった影響が大きく現れてきそうです。薬価が下がった分だけ納入価格を下げてもらえるかという医薬品卸との交渉が、これから始まります。医薬品卸はものすごく利幅が薄いので、薬価が下がった分だけ下げることは難しいでしょう。すると、これまでより薬価差益が減り、結局、本体部分はプラスでも、薬価が下がったことで相殺されてしまうのではないか、と考えられます。もちろん、診療科などによっても、かなり違うと思いますが。

——入院基本料の見直しは?

高橋 入院基本料が経営に与える影響は大きく、「7対1」から「10対1」に落ちるのは、立ち上がれないほどのダメージになるわけです。今回はこの間に新しい段階を設けています。病院側から見れば、「7対1」から「10対1」にドーンと落ちてしまうよりも、3段階あればリカバリー可能なので、刻んでもらった方が安心できるということになります。医療提供サイドからも飲める話だったということだと思います。

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