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小さいからこそ出来る日帰り手術と予防医療

小さいからこそ出来る日帰り手術と予防医療
阿保義久(あぼ・よしひさ)1965年青森県生まれ。84年早稲田大学理工学部入学。87年東京大学理科3類合格。93年同大学医学部卒業。同年同大学医学部附属病院第一外科、虎ノ門病院麻酔科。94年三楽病院外科。97年東京大学医学部腫瘍外科、血管外科。2000年北青山Dクリニック開設。04年医療法人社団DAP開設。11年東京大学医学部腫瘍外科・血管外科非常勤講師。『日帰りレーザー根治下肢静脈瘤治療』『尊厳あるがん治療CDC6RNAi療法』など著書多数。

2000年に開業した時、小さい医療機関だからこそ出来る先進的な医療を提供したいと考えた。そこで始めたのが日帰り手術と予防医療だった。従来なら入院が必要となる手術を、麻酔を工夫し、侵襲の少ない術式で行うことにより、日帰りを可能にする。下肢静脈瘤や椎間板ヘルニアの手術で実績を残してきた。予防医療への取り組みはがん、心筋梗塞、脳卒中の発症予防と、早期発見のための人間ドックに力を入れている。

開業したきっかけは?

阿保 大学を卒業した後、東京大学医学部附属病院と関連病院で外科医として経験を積んでいたのですが、その頃は開業することは考えていませんでした。教授にも目にかけていただきましたし、留学とか、外に出て腕を磨くとか、いろいろな選択肢がありましたが、開業は選択肢に入っていませんでした。ただ、その頃、大学院構想が持ち上がり、外科も専門領域に分けられることになりました。私がいた東大病院の第一外科は、消化器を中心として、がんの治療を幅広く行っていましたし、血管病変も治療対象でした。心臓と呼吸器の手術は専門外ですが、非常に幅広い疾患を診る医局だったのです。大学院構想に従い、私も試験を受けて大学院に入りましたが、時代が変わったことで、閉塞感や違和感を覚えるようになっていました。それが一つの理由です。もう一つは、父が肺がんで死亡し、父が青森県で行っていた事業の整理が必要になったことです。そんなことが重なった時、急転直下、開業しようという考えに行き着きました。

クリニックで大学病院レベルの診療を目指す

どんなクリニックにしようと考えたのですか。

阿保 元々、外科医として技術を磨いてきましたし、年齢も30代半ばでしたから、手術はやりたいと思っていました。大学病院や大きな総合病院では出来ないことをやろう、小さな医療機関だからこそ出来るような新しい医療にチャレンジしていこう、という気持ちはありました。開院当初から専門的な治療を行ってきましたが、それは東京大学の同期の医師や後輩達が最初から手伝ってくれたからです。非常勤でしたが、開院した時から複数の専門医に勤務してもらうことが出来ました。小さなクリニックで、大学病院レベルの診療を行うというのが、このクリニックがスタートした時からのコンセプトです。それから、手術を日帰りで行うというのも、新しい医療を提供することになると考えていました。

日帰り手術は開院当初から行っていた?

阿保 入院施設を持たないクリニックでも、日帰り手術なら手術が行えます。日本の医療の常識を突破したいという気持ちもありました。「北青山Dクリニック」という施設名も、最初は「デイサージャリークリニック」にしたかったのですが、これは渋谷区の保健所で却下されてしまいました。診療内容を入れてはいけない。地名、ビル名、本人の名前などでないと駄目だ、というのです。最近はかなり融通が利くようになっているようですが、当時は厳しかったのです。苦肉の策で、北青山Dクリニックとしたら通ったので、「D」という文字にいろいろな意味を込めることにしました。日帰り手術を行うので「Day Surgery」の意味もあるし、予防医療にも取り組むので「Daily Health Care」のDでもある。さらに皮膚科も始めたので「Dermatology」のDでもあると言っています。

予防医療も重要な柱なのですね。

阿保 外科医としてがんの治療に携わってきましたが、実際には既に治せない状態になっている人がたくさんいます。そういったこともあって、予防医療を日帰り手術と並ぶ軸にしたいと思いました。病気を作らない1次予防にも積極的に取り組むし、病気を早期に発見する2次予防も行っています。早期胃がんは手術で完全に治せますが、進行してしまうと治せなくなります。外科の技量で対応出来ない部分に対して何が出来るかというと、やはり予防医療だと思います。

アンチエイジング医療を始めたのは?

阿保 予防医療をさらに進め、病気を予防するだけでなく、さらに若々しく健康であることを追い求めるアンチエイジングが、アメリカなどで話題になり始めていました。日本の医療では確かにそこが欠けているという認識に基づいて、その領域にも取り組むことにしました。内科的なアンチエイジングだけでなく、見た目のアンチエイジングもということで、皮膚科も始めたわけです。

麻酔の工夫が可能にした日帰り手術

どんな手術を日帰りで行っているのですか。

阿保 通常1週間くらいの入院が必要とされている手術が、麻酔を工夫したり、侵襲の出来るだけ少ない方法で行ったり、手術を丁寧に行ったりすることで、日帰りが可能になっています。下肢静脈瘤、鼠径ヘルニア、椎間板ヘルニア、内視鏡切除などが中心です。開院当初は乳がんの手術なども行っていました。いろいろな手術を行ってきた中で、患者さん側のニーズによって、下肢静脈瘤、鼠径ヘルニア、椎間板ヘルニアなど、いくつかの疾患に絞り込まれてきたということです。

どうして日帰りが可能なのでしょう?

阿保 例えば下肢静脈瘤の手術は、通常は全身麻酔か腰椎麻酔を行うので日帰りでは出来ません。そこで、局所麻酔に静脈麻酔を加え、患部の血管を引き抜く時だけ、ぐっと麻酔の深度を深めることにしました。すぐに切れる麻酔なので、手術後はすぐに歩くことが出来ます。それぞれの疾患で試行錯誤しながら、日帰り手術を可能にしていきました。現在はレーザーなども駆使出来るようになったことで、さらに低侵襲の手術が可能になりましたし、椎間板ヘルニアまで対象疾患が広がってきました。

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