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未来の会

第92回 トップが任期話を2回繰り返す思惑

第92回 トップが任期話を2回繰り返す思惑
虚妄の巨城
武田薬品工業の品行

 共同通信の1月29日付配信記事によると、武田薬品社長のクリストフ・ウェバーは、「2025年まで経営に関与したいとの意向を表明した」という。同記事によれば、ウェバーは「14年、同社初の外国人トップに就任して国際化を推し進めており、長期的に経営を主導することで、世界市場での競争力を高めたい考え」とされる。

 さらに、「製薬産業は長期サイクルだ。2年では(大きな)変化は起きず、時間が必要だ」と述べ、「新薬創出には長期の研究開発と巨額の費用が欠かせないため、腰を据えた経営が必要だとの認識を示した」と発言したとも報じられている。

 それにしても、一部上場企業の社長で、あと何年までと期間を明示して「経営に関与したい」などとわざわざ発言するのは珍しい部類ではないだろうか。しかも、ウェバーは昨年の『日本経済新聞』10月8日付の記事に登場した際にも、「2025年まで」について全く同じ趣旨の発言をしているのだ。ただでさえあまり例がない類いの任期話を2回も繰り返すのは、うがった見方をすれば何か特別の事情があるように思えてくる。

社内の「不信感」を払拭する狙い?

 社内では「遠くないうちにまたヘッドハンティングされ、メガファーマ(巨大製薬企業)に引き抜かれていなくなる」「武田をどこかのメガファーマに売却し、その手柄で別のメガファーマに引き抜かれる」といった、以前からくすぶり続けているというウェバーへの「不信感」が、おそらく依然強いのだろう。それが看過出来ないほどになってしまい、早期に払拭せねばならない必要性が生じ、二重の意味で異例の発言に繋がったと想像するのは、邪推が過ぎるだろうか。

 しかも、「製薬産業は長期サイクル」だから、経営トップが「腰を据えた経営が必要だ」などというのは、生き馬の目を抜くような激烈な国際競争が展開されているメガファーマの世界はともかく、日本では常識以前だ。それが、武田に入社して3年半以上もたった今になって、再び二度目の「決意」を強調せねばならないのはなぜだろう。憶測を呼んでも、仕方があるまい。

 武田は15年6月の定時株主総会開催直前に、当時最高財務責任者(CFO)だった、ウェバーと同じフランス人のフランソワ・ロジェが、在職わずか9カ月程で突如辞任。急遽、取締役選任リストから除外されるという、戦後の経営史上例がないような一大醜態を演じている。そのトラウマもあってか、同年に社長兼CEO(最高経営責任者)に就任したウェバーに対して、当初から前述のような疑念が社内にくすぶっていた。

 ならば、本当にウェバーが「腰を据えた経営が必要だ」と考えているのであるなら、そのように明言するべきは、まさにロジェの騒動があった直後のタイミングではなかったか。にもかかわらず、それから2年以上たって「あと7年程は頑張る」という旨の発言にわざわざ及んだのは、やはり奇怪と言うしかない。

 それとも、ウェバーは来日当初、武田を「腰掛け」程度に考えていたものの、途中で何かの心変わりがあって「2025年まで」と腹をくくったのだろうか。あるいは、10億4800万円(集計対象・16年4月期〜17年3月期)という破格の年収を得られるのは、結局武田だけだという計算に行き着いたためなのだろうか。

 だが、ウェバーが「腰を据えた経営が必要だ」などといくら今になって繰り返そうが、あと7年程度で「世界市場での競争力を高める」ことが出来るものなのか。武田の売り上げの世界ランキングでは、日本では1位でも18位(16年)に甘んじており、最初から米国のファイザー、スイスのノバルティス、ロシュといったメガファーマとは勝負にもならない。

 しかも、収益性を示す営業キャッシュフローを売上高で割った「営業キャッシュフローマージン」の3期平均(2014年、15年、16年)で見ると、武田は8・88%で、アステラス製薬の18・7%に遠く及ばない。有利子負債を営業キャッシュフローで割った「有利子負債キャッシュフロー倍率」では、同じく3期平均で見ると武田は5・8倍という数値だが、無借金のアステラス製薬の0倍と比較して大差が付いている。

 武田は08年まで総資産2・8兆円にうち、2兆円もの余剰資金を誇る飛び抜けた優良会社だったが、海外でのM&A(合併・買収)などに湯水のように資金を投じ続けた挙げ句、現在までに約1兆1450億円もの有利子負債を抱えるに至っている。これでは、少なくとも「日本市場」ですら「競争力」を誇れる状態ではない。にもかかわらず、ウェバーは今後どうやって「世界市場での競争力を高め」ていくのか。

外国人トップしか選択肢はなかったのか

 ポイントは、言うまでもなく新薬の開発にある。国内外の市場で、ひとえに「革新的な製品を出さないと意味がない」(ウェバー)が、容易ではない。既に新薬の成功確率は、実に「2万1167分の122」という絶望的な低さになっている。武田は20年以上かけて合計4兆〜5兆円という巨額の研究開発費を投じた挙げ句、自前の新薬開発に失敗。その後に走った企業買収にしても、成功確率は統計的に1割程度だ。ウェバーが「2025年まで」いかなる算段で臨むのか、依然見えてはこない。

 今になって本人は、M&Aよりも「企業や大学などとの提携を重視していく方針」(『朝日新聞』1月30日付)と言い出し、「提携先と共同開発する新薬の割合は全体の46%に高まった」という。しかし、この程度のことなら多かれ少なかれ競合他社もやっていることだ。

 こうなると結局、否応なく浮かんで来るのは、現「相談役」の長谷川閑史が独断で強引に進めた「青い目のトップ」という異例中の異例人事しか、外資でもないのに武田には選択肢がなかったのか——という素朴な疑問ではないのか。

 長谷川が強弁した「グローバル化への対応」にしても、確かに売上高比率から言えば武田は日本より海外の方が高いが、アステラス製薬や大日本住友製薬も同様だ。しかも、外国人役員は前者には皆無で、後者は11人の執行役員中、2人が就任しているにすぎない。わざわざトップが「あと○○年まで」などと繰り返さなければならない不自然さは、少なくとも武田にとってプラス要因になっていないというのは、衆目の一致するところだろう。 (敬称略)

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  1. 昔、NHKや他の局のアナウンサーでも、私情を交えずただ報道する~とか、当たり前だったのに今は酷い、新聞・エビデンスー・ね~よ!そんなもん・でしたっけ?この劣化ぶり。 しかも、在日支那韓・反日国反日教育している連中ですが、こいつらが潜り込んでしまっているので、始末が悪いというより本当に危険です。  一度全部解体思想チェック在日帰化支那韓他外国人は排除しないと絶対に偏向異常隠蔽報道は終わりません、変わりません。 ニュース女子も、面白い番組で人気も視聴率も有る番組なのに、都合の悪い連中の横やりで潰されるようですね・こうやって番組潰し、都合の悪い人間日本人潰しが行われてきた結果此処まで酷くなったんですよね。  社会主義国、共産国など、今回の支那観ていると簡単に公式に独裁者の出来上がり。   日本だって、どんな風にこそこそと、変えていくか判りませんから、本当に不安。  工作員、極左反日、拝金主義の売国奴が大勢いますから。 coupon

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