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第91回 決算から露わになった「業界盟主」の凋落

第91回 決算から露わになった「業界盟主」の凋落
虚妄の巨城
武田薬品工業の品行

 大手製薬会社の2018年3月期(17年度)第2四半期(4〜9月)決算が17年11月に発表されたが、武田薬品の国内の医療用医薬品売上は2520億円で、前年同月比で0・1%増とほぼ横ばいとなった。一方で、第一三共の国内の医療用医薬品売上は2576億円となり、武田は医薬品業界の「リーディングカンパニー」ながらも、第一三共の後塵を拝してこの分野では2位という結果に甘んじた。

国内他社との接戦を強いられる

 17年5月に発表された17年3月期決算でも、国内の医療用医薬品売上高で第一三共は武田を抜いているから、「日本でナンバーワンカンパニーになりたい」(眞鍋淳・社長兼COO)という同社の夢は、現実になったと言えるだろう。

 第一三共は同じ17年3月期決算発表時点で、開発中の新薬が48あり、武田の52とそれほど見劣りはしない。このうち、がん領域については、両社は同じ29だ。だが、第一三共はこの分野で25年度までに七つの大型新薬の発売を予定している。それによって同事業の売上高を現在の20倍、約3000億円にまでアップする大胆なプロジェクトを進行中だ。この勢いだと、結果次第では武田は将来も、第一三共の背を見ながら競争する可能性は否定出来ない。

 17年3月期の営業利益を見ると、トップはアステラス製薬で2608億円。武田は1558億円で、ここでも1位の座を失った。売上高でも、武田の1兆7320億円に対してアステラ製薬は1兆3116億円だから、今後、ここでも逆転劇が起きても驚きではあるまい。

 さらに、15年度の有価証券報告書によれば、売上高で業界4位の大塚ホールディングスを加えるなら、既に武田は利益率で4社中最下位となっている。ちなみに武田は、この10年あまりで利益率が劇的に悪化しており、07年と16年の3月期決算を比較すると、実に8割近くまで落ちている。しかもその間、総資産は増加しているが、自己資本率は減少が止まらない。これまで海外で相次いだ巨額M&A(企業の合併・買収)の負の遺産だろうが、いずれにせよ武田の国内の地盤沈下は、誰の目から見ても明らかだろう。

 既に武田は、「17年3月期通期に米国の医療用医薬品の売上高(5157億円)が初めて日本の売上高(5047億円)を上回って」おり、「日米の差は拡大傾向にあり、この4〜6月期にはその差は6%超に広がっている」という(『日本経済新聞』電子版17年8月8日付)。これも、武田の「グローバル経営」がもたらした結果なのかもしれないが、皮肉にも国内市場においては既に、業界の「盟主」として君臨する時代は過去のものになりつつある。

 今後、武田にとっては国内で他社との厳しい接戦を強いられることになるが、勝敗のポイントは新薬の開発にかかっている。当然、資金が必要となるが、武田が17年12月1日、東京都中央区の東京本社が入居している自社ビルと土地を高島屋に売却すると発表したのもそのためだろう、と業界内では囁かれた。

 予想される固定資産売却益は約390億円だが、武田は14年8月に、三井不動産と武田薬品不動産の3社で、同じ中央区の日本橋に高層ビルを建設し、18年秋までに東京本社が移る。新高層ビルの投資額は660億円とされるから、今回の売却でもペイは出来まい。「不動産をはじめとした資産売却で資金を確保し、がんの新薬開発など注力分野に振り向ける」(『日本経済新聞』電子版17年12月1日付)という話ではないのではないか。

 何しろ、武田が17年早々に買収した米製薬会社アリアド・ファーマシューティカルズは売上高で130億円程度の赤字企業だが、約6200億円も投じている。この額は武田の研究開発費の2倍にほぼ匹敵するが、固定資産の売却益どころではない。おそらく武田は、自前の「新薬開発」などさほど重視していないのだろう。

 事実、武田は17年2月、新薬の候補物質の製造法開発を担うファーマシューティカルサイエンス部門(旧・CMC研究センター)の一部の事業を、武州製薬に譲渡すると発表して、他社を驚かせている。これには、従業員200人の移籍も含む。同時に、製剤処方設計や試験法開発と言った業務の一部も移したというが、CMC(治験薬製造・製剤設計・品質管理)部門を切り離すというのは、実質的に自前の研究開発体制を縮小することを意味するだろう。

後発医薬品戦略も前途に暗雲

 その分、手っ取り早く海外のM&Aで有望企業を手に入れるのが「相談役」長谷川閑史が敷いた路線だが、武田は17年2月、国内臨床開発担当の部門をグローバル臨床開発委託機関(CRO)である米PRAヘルス・サイエンス社へ移管すると発表。製造分野でも、他社委託に踏み切った。後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及で業界各社の利益が脅かされている中、新商品の研究開発は至上課題だが、武田のように創薬や臨床開発等の機能を外部委託して、結果的にプラスと出るのか。その後発医薬品の戦略に関しても、武田の前途には暗雲が漂う。

 武田が、世界最大の後発医薬品メーカーのテバファーマスーティカル・インダストリーズ・リミテッドと組み、武田テバファーマ株式会社を設立したのが16年4月。だが、それから約1年近くしか経っていない17年5月、同社は35歳以上の早期退職制度を導入すると発表した。約2000人の社員の8割強が対象となるが、いくら武田の連結対象から外れているとは言え、設立1年少しでこれほどの惨状となるとは、よほど武田の見通しが甘かったのだろう。

 さらに、同社は子会社の武田テバ薬品と共に、18年3月まで103品目のジェネリック医薬品を販売中止にすると発表した。100品目以上のジェネリック医薬品の販売中止は前代未聞だが、理由は「安定供給が困難だから」とか。既に武田テバファーマは何度か商品の突然の供給停止で不評を買っており、最初から「安定供給」どころではなかったが、こんな調子では同社の前途以上に、武田の後発医薬品戦略も危うい。

 武田の国内での度重なる混迷は、社長のクリストフ・ウェバーの「選択と集中」路線の行き着く先なのか。これでは「グローバル経営」も泣く。長谷川が吹聴した「グローバル経営」も、この程度だったということなのだろう。  (敬称略)

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