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第2回 事務次官への道を歩む保険局長〝マツコ〟

第2回  事務次官への道を歩む保険局長〝マツコ〟

 年末の予算編成の目玉である2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定は、来夏の厚生労働省の幹部人事に大きく影響を及ぼしそうだ。その渦中にいるのが、鈴木俊彦保険局長(1983年、旧厚生省入省)だ。自民党厚生労働族や日本医師会が求める診療報酬のうち医師の技術料など「本体」がプラスになれば、事務次官の座が大きく近づく。

 近年の診療報酬改定は、高齢化の伸びに伴う自然増を5000億円に抑える政府方針により、財源捻出に向けて全体でのマイナス改定は既定路線となっている。16年度改定は全体で0・84%のマイナスだったが、薬や医療材料などの価格「薬価」を1・33%と大幅に引き下げ、その財源を振り替えて本体は0・49%のプラスを死守した。

 族議員や日医は今回も同様に本体のプラス改定を求めているが、財務省などは本体のマイナス改定を求めており、秋口から攻防が繰り広げられている。鈴木氏も衆院議員会館を回り、秋の衆院選で当選した族議員への挨拶回りを欠かさないなど、根回しに余念がない。

 今夏の幹部人事で年金局長から異動した鈴木氏だが、保険局での勤務年数など経歴だけで判断すれば、当初の本命は同期の武田俊彦医政局長だった。省内のみならず、官邸や永田町への根回し力に長ける鈴木氏は「猟官運動」を開始。年明けから同時改定を見据えてか、「今、考えていることは将来の社会保障制度をどうするかだ」と周囲に吹聴し、保険局長就任に意欲を燃やした。武田氏が人事権者だった塩崎恭久厚労相(当時)から疎まれていたのをよそに、鈴木氏は一定の評価を勝ち取り、見事にその座を射止めた。

 今年秋に発覚した約600億円に上る過去最大の年金加算金支給漏れ問題は、鈴木氏の省内の立場を象徴する出来事だ。厚労省は昨年から問題を把握していたが、発表を秋に遅らせた。省内では、「国会審議などで年金局長だった鈴木氏に傷を付けないため」と囁かれ、「将来の事務次官」(厚労省政務三役経験者)として育てられてきたことが分かる。

 ある厚労省関係者は「年金局長と保険局長を経験した幹部は、いずれも事務次官になっている」と話し、鈴木氏が次の事務次官の本命であることを示唆する。

 福岡県の名門・修猷館高校から東京大学法学部を卒業して入省した経歴は抜群だが、部下からの評価はいまいちだ。指示が細かく会議が長いのが不評で、タレントのマツコ・デラックスに風体が似ているため、中堅・若手から陰では「マツコ」と呼ばれている。本人もそれを気にしてか、糖質ダイエットに励む日々だという。

 ただ、社会・援護局長として社会福祉法改正、年金局長時代には年金改革関連法案の成立と、その分野での大改革を仕上げた。特にマクロ経済スライドを強化する年金改革関連法案は年金支給額の増減に直結するため、世論の反発が懸念されていた。そのため、大手マスコミ論説委員への行脚を重ね、記事が批判的な論調になるのを抑えた。厚労省幹部は「仕事面でいうと、同期では一番だ」と評価する。

 12月中に決着が付く同時改定で決まるのは、将来の医療や介護の提供体制のみではない模様だ。

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