SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

「全人歯科治療」で心身の病気を予防・治療

「全人歯科治療」で心身の病気を予防・治療
立36年の「良い歯の会」が東京啓発活

 「歯こそ心身の健康の源」である。そう主張し続けるのは、医療法人社団耕生会丸橋全人歯科(群馬県高崎市)の丸橋賢理事長が主宰する「良い歯の会」。発足から既に36年たつが、今もなお毎月、医師と患者による勉強会を開催している。

 同会の東京特別講演会が10月22日、東京・御茶ノ水で開かれた。まず、丸橋理事長による「日本の歯科の現状と全人歯科治療を比べてみる」と題した総論的な講演から始まった。

 丸橋理事長は、現在の歯科治療は「局部治療」であり、治療を受ければ受けるほど歯や身体のバランスが崩れていく。そのことが肉体的健康だけでなく、精神的健康さえも損ねてしまうと説く。

 一方、「良い歯の会」が唱える「全人歯科治療」では、患者を丸ごと診ていく。「歯だけではなく、心身のバランスとして歯を観察する。一部分だけを見ていてはいけないのです。全身を診て、その人の生活習慣、食事の在り方もチェックし、その中で症状を把握、治療すべきところは治療する。これは医学の祖・ヒポクラテスの教えでもあるのです」。

咬み合わせの悪さが様々な病気を招来

 続いて、丸橋全人歯科の歯科医師である丸橋裕子氏が登壇。「歪んだ咬み合わせを克服する矯正治療の力」について話した。

 歪んだ咬み合わせの矯正治療は、正しく行えば、素晴らしい効果を発揮する。そのための矯正治療は「審美」を中心とした矯正ではなく、背骨や顎などの「歪み」を正すものでなくはならないという。

 矯正治療とは、様々な装置を用いて歯や顎を生理的な範囲内で動かし、正しい咬み合わせにもっていくことである。

 不正咬合の例として、奥歯が咬み合っていても前歯が咬み合わない症状を紹介。人は不正咬合によって正しい顎の位置で咬めない時、正しい位置に修正して咬もうとする。歯を擦り減らしてでも正しい位置に合わせていく。そのため奥歯も擦り合わせるように咬むため、歯周病になりやすくなる。

 一方、顎の筋肉の弱い若者だと、顎を正しい位置に動かそうとしてもうまくいかず、上顎と下顎とがずれてしまうこともある(顎偏位)。その結果、肩凝り、首凝り、目の疲れ、顎関節の雑音なども引き起こされたりする。

 「正しい咬み合わせとは、歯列が左右対称となっていて、適正な高さで行われるもの。顔面も左右対称になります」

 特に幼少時の顎や歯の発達に目配りしておく必要がある。そのためには、不正咬合の原因を早期に取り除き、乳歯を虫歯にせず、咬んで食べる習慣を身に付けることなどが重要だという。

 「人の生命を支えるのは身体だけでなく、心身共にバランスの取れた健全さ。家族、友人、仕事、趣味も豊かにしていくべきです」

 3番目は、インプラントの専門家でもある辻本仁志・丸橋全人歯科院長が「『歯』の回復で体が蘇るわけ」というテーマで講演した。

 全人医療の4本柱として食事、心身、運動、休養のバランスを挙げる。それら全てに「歯」が関係していると述べる。

 虫歯の悪化や咬み合わせの悪さによって、喜怒哀楽の感情や意欲を司る前頭前野の血流が低下、その働きが鈍ってくる。認知症の進行にも、残った歯の数が関係しているという。

 「歯がない人の心身を立て直すことも、インプラント治療の役割だと思っています。少なくとも正しく取り付けられたインプラントは20〜30年はもちます」

 ただ、現在のインプラントは技術や素材の進歩で、埋め込んだ骨に着きやすくなっている。そのために2〜3mmの骨にまで着いてしまうことがあるという。骨が薄いと、後に腫れて膿が溜まることもある。だから、まず骨をしっかりと作ることが大切だと話す。

生活習慣の中で予防意識を高める

 最後に登壇した亀井琢正・丸橋全人歯科副理事長は「全人的診断の新しい咬み合わせ治療」について話した。

 「食べる」「喋る」という行為には適切な咬み合わせが大切である。ところが、その大事な咬み合わせについて、歯科大学ではほとんど教育が行われていないという。歯周病や虫歯の治療、歯を美しく並べることについては熱心であるが、どう咬ませたり機能させたりするかについて学ぶ機会は少ないのが現状のようだ。

 別の歯科医に歯列矯正を施された患者が亀井氏の元を訪れ、「まるで、猿ぐつわをはめられたようだ」と訴えたという。外見はきれいに見えるが、下顎が左にずれ、頭痛や肩凝りも起きていた。口の中を見ると、歯が全て内向きになっていた。

 咬み合わせとは、非常に繊細であり、敏感なものである。例えば、アルミ箔を咬んだ瞬間、不快感が起きる。歯には特殊なセンサーが備わっているのだ。だから、歯科医は精密に合わせなくてはならない。

 先の患者の場合、内向きになった歯をすぐに外向きには出来ない。そこで、マウスピースによって顎の位置を整え、咬み合わせを誘導する方法をとったという。

 「口の中の問題は生活習慣に原因があります。まず、日々の生活の中で予防意識を高めることと、治療をするなら徹底的に治すこと。これからの歯科治療はこの二つの方向で考えていかないといけないでしょう」

 当日は、会場ロビーで無料歯科相談や咬み合わせ体験コーナーも設けられ、多くの来場者が活用していた。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top