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癒やしと安らぎの環境賞2017

109回 揺らぐ安倍1強、官邸主導への批判相次ぐ

109回 揺らぐ安倍1強、官邸主導への批判相次ぐ

 野党の大混乱による「漁夫の利」で衆院選に圧勝し、吉田茂・元首相以来となる第4次政権を構えた安倍晋三首相だが、与党内に高揚感はなく、妙によそよそしい雰囲気が漂っている。自民党内では「ポスト安倍」を巡る思惑が複雑に絡み合い、安倍1強を変質させる化学変化が起き始めたとの見方もある。衆院選圧勝で来年秋の総裁3選を手中に収めたはずの安倍首相の足下に、不穏な空気が広がっている。

 「安倍首相はサービス過剰じゃないの。緊迫しているはずの北朝鮮の核・ミサイル問題を協議するのに何でゴルフなの。しかも、松山英樹プロまで同伴して。平和そのものじゃない、これ。緊張感が感じられない。世界に対するアピールもあるんだろうが、やり過ぎだよね。我々の世代からみれば軽薄そのものだ」

虚々実々、日米首脳ゴルフの裏側

 与党幹部は、訪日したばかりのドナルド・トランプ米大統領と霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)でプレーを楽しむ安倍首相をテレビで眺めながらため息をついた。

 松山プロが付きそう今回のゴルフ外交は、今年2月に安倍首相が訪米した際、フロリダのトランプ大統領の別荘で受けたゴルフ接待の返礼だ。当初、安倍首相は、中曽根康弘・元首相が日の出山荘にレーガン元大統領を招いた「ロン・ヤス会談」のように、自身の別荘での「おもてなし」を考えていた。それを、米国側から拒否されたため、東京五輪のゴルフ会場となる霞ヶ関カンツリーでの接待に変更したとされる。

 米国側が難色を示したのは、首脳間の個人的な関係と、国益を切り離して考えているためだという。「両首脳が個人的友情を深めるのは結構なのだが、2国間の問題はまた別だというホワイトハウスのビジネスライクな感覚がある。さらに言えば、内外に問題を抱えるトランプ大統領と、米国の国益は必ずしも同じではないというクールな思考も感じる」。外務省関係者はそう見ている。

 トランプ大統領を巡っては訪日直前に大きなニュースがあった。トランプ政権とロシア政府の関係を巡る一連の疑惑で、ロバート・S・モラー特別検察官のチームが10月末、トランプ大統領の選挙対策本部の幹部をつとめたポール・マナフォート氏と、ビジネスパートナーのリチャード・ゲーツ氏の2人をマネー・ロンダリング(資金洗浄)などの罪で起訴したのだ。

 起訴について、トランプ大統領はツイッターで「マナフォート氏が私の選挙戦に関わる前の、何年も前の話だ。(トランプ陣営とロシア政府の)共謀などない!」と疑惑を否定したが、政権内部は「モラー特別検察官は本気だ」とピリピリしているらしい。今回の起訴は、いわば大統領選挙へのロシアの関与という「本丸」に攻め入るための突破口ではないかと疑心暗鬼になっているのだ。大統領選という米国の聖域にロシアが干渉していたことが事実なら、トランプ大統領どころか、米国は屋台骨が揺らぐ事態になる。

 「今回の日米首脳会談は北朝鮮への対応が主要議題と言われているが、米国の最大の目的は日米自由貿易協定(FTA)の開始要求だろう。日本の牛肉市場の開放を狙って圧力を強めてくるのは間違いない。安倍首相はそれを少しでも緩和してもらうために、松山プロを担ぎ出したのだろうが、やらないよりはましという程度だろう。先々のことを考えれば、安倍首相があまりにもトランプ大統領一辺倒になるのは避けた方がいい。別荘招待を米国側が断ったのは、日本にとっても好都合だった」

 自民党幹部は日米首脳ゴルフに秘められた虚々実々をクールに分析してみせた。

自民党内に広がる長期政権への不満

 史上2人目の4次政権を成し遂げた安倍首相だが、党内基盤が強まったかと言えば、そうでもない。むしろ、選挙前よりも流動性は高まり、首相官邸が強い従来の「政高党低」から、党側が優位に立つ「党高政低」方向へと気圧配置が微妙に変化している。

 「あなたに1票入れるのは安倍首相の続投を支持するようで釈然としない、との話を選挙戦で聞いた。『安倍1強』に向き合い、バランスの取れた党内論議を確保する必要がある」

 踏み込んだ発言をしたのは、逢沢一郎・元衆院議院運営委員長だ。自民党内ではリベラルとされる宏池会の流れを汲む谷垣禎一・元総裁のグループの重鎮だ。発言の胆は「バランス」だ。何もかもが首相官邸主導で進んで来たことへの党内の不満が背景にある。

 実は、「安倍1強」への党内の反発は、衆院選直後から噴き出していた。最初は首相指名選挙を行う特別国会の会期を巡る軋轢だった。首相官邸は当初、実質審議なしの8日間の日程を主張した。第4次政権が冒頭から「モリ・カケ」では格好悪いためだ。野党の猛反発は当然だったが、これに与党が呼応、官邸方針を覆して39日間と決めた。

 特別国会で会期39日間は異例だが、党幹部からは「十分な審議時間がとれたのは良かった。選挙で政権への様々な意見を聞いたわけだから、逃げては行けない」(石原伸晃・前経済再生担当相)、「ここで国民の失望を買えば、その反動は計り知れない」(岸田文雄・政調会長)と賛成意見が相次いだ。石原氏も岸田氏も派閥のボスであり、「ポスト安倍」をにらんだ発言なのは言うまでもない。

 衆院の議席数に応じた与野党の質問時間配分見直しに関しても、菅義偉官房長官が「議席数に(時間配分も)応じるのは国民からすればもっともだ」と賛意を示したのに対し、自民党内からは「政府与党は事前に協議出来る。その分割り引かないとフェアではない。議席配分に見合った(時間配分)というのは議論として成り立たない」(石破茂・元幹事長)などの批判が噴出した。

 国会運営はそもそも首相官邸が決めることではなく、与野党が話し合って決めるものであり、一連の流れは理にかなったことだ。しかし、官邸の仕事とも言える政策分野でも首相主導への反発が顕在化している。安倍首相が「人生100年時代構想会議」で幼児教育無償化などの財源として産業界に3000億円負担するよう求めたことに、小泉進次郎・筆頭副幹事長が「党で全く議論していない。このままなら党は要らない」とかみついたのも、その一例だ。自身の看板政策「こども保険」に横やりを入れられたようでカチンと来たのだろうが、これも従来にはないことだった。

 「4次政権は偉業だが、1人が長く首相を務めているのだから、風当たりはきつくなって当然だろう。大叔父の佐藤栄作元首相のような人事の妙で党内をうまくコントロール出来るかどうか。今後の政権運営のカギはその辺にあるんじゃないか」。自民党長老はそう見ている。

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