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癒やしと安らぎの環境賞2017

「遠隔医療」が変える医療現場

「遠隔医療」が変える医療現場
2018年度診療報酬改定が普及を後押しする

2018 年度診療報酬改定までのカウントダウンが始まった。遠隔診療が評価されるとの見通しから、その普及が急速に進むと見られている。

 近年の医療現場における情報通信技術(ICT)の普及によって、患者が医療機関を直接訪問しなくても、診療、医師同士の意見交換などを行えるような技術が発展したことで、遠隔医療の市場は拡大を続けている。

 市場調査会社大手の矢野経済研究所が発表した遠隔医療市場に関する調査の概要によれば、2015年度の市場規模は122億6900万円だったが、2019年度には199億600万円に成長すると予測されている。診療報酬上ではなお課題もあるが、18年度の診療報酬改定がその拡大を後押しすると見られている。

 調査は、2017年4月から7月にかけ、国内で遠隔医療の製品やシステムを提供している企業などを対象に、面談などを通じて実施された。遠隔医療市場を、遠隔画像診断、遠隔病理診断、遠隔診療、遠隔健康管理の4市場に分類し、それらの合計で市場規模が算出された。

 当初、市場全体は、遠隔画像診断市場によって牽引されていたが、この分野は既に成長期を経て成熟期に移行しており、技術革新によって一層成長すると予測されている。

 また、遠隔病理診断市場は、「術中迅速病理診断の普及速度の向上や医療機関への遠隔病理診断用の機器、システムの導入数の増加により短期的には微増、中期的には増加傾向になる」と予測されている。

2015年の事務連絡で事実上の“解禁”

 日本における遠隔医療の簡単な歴史を振り返ってみると、遠隔医療の基本的な大原則について、厚生労働省はまず1997年に最初の通知を出している。

 それに先立つ1996年に、厚生労働科学研究・遠隔医療研究班(主任研究者=開原成允・東大名誉教授=当時)が立ち上がっており、それがこの通知につながった

 医師法第20条は、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」と定めている。

 厚労省通知では、医師法第20条などにおける「診察」について、「問診、視診、触診、聴診、その他手段(中略)疾病に対して一応の診断を下し得るもので、代替し得る程度の(中略)有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」と明言している。「無診察診療」には直ちに当たらないとする見解が示されたことで、次第に診療報酬の適用範囲が広がっていった。

 2015年の事務連絡は、前述の通知で示した遠隔診療の適用範囲を必要以上に狭く解釈しなくてよいことを強調する内容で、これが事実上の“解禁”と見られている。

 それ以前は、離島やへき地の患者を診察する場合など、対面診療が物理的に難しいケースを除いて「原則禁止」と捉える医療従事者が多かった。

 さらに、2017年7月には、「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」について)」と題する通知を発出。遠隔診療だけで完結する禁煙外来や、遠隔診療における電子メールやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用が可能であることが明確にされており、1997年の通知及び2015年の事務連絡を補足する内容となっている。

 遠隔医療には様々な形があるが、例えば、看護師が死亡確認を行い、死亡診断書を代筆することも可能になった。

 2017年9月、厚生労働省は「情報通信機器(ICT)を用いた死亡診断等の取扱いについて」を発出し、ガイドラインを公表した。看護師が医師の指示を受けながら、タブレット端末のテレビ電話などを通じて聴診したり、心電図を確認したりして医師に送信すれば、死亡診断書を代筆することが出来るようになった。

 これは、日本が世界に類を見ない超高齢化で多死社会を迎える中で、医療資源が枯渇している過疎地などにおいても迅速な診断を出来るようにする狙いがある。

 また、在宅医療が推進される中で、今後は都市部においても、医師が全ての在宅患者の死亡を直接対面で診断することが困難となることも予想されている。

 2016年には、政府の規制改革会議で、看護師による確認で、死後24時間経過後も医師が死後診察なしで死亡診断書を交付出来るようにする規制緩和が閣議決定されている。実施計画では、ICTを活用した死亡診断などを行うための要件も定められた。

医療の質や生産性の向上に繋がる評価

 さて、診療報酬における遠隔診療の評価としては、既に「放射線画像・病理画像の専門医のいる病院への転送」(医師対医師)や、「電話等による再診と心臓ペースメーカー指導管理料の遠隔モニタリング加算」(医師対患者)などがある。

 16年度の改定においても、医療ICTを活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進として、心臓ペースメーカーの遠隔モニタリングの評価や、画像情報・検査結果などの電子的な送受信に関する評価などが導入されている。

 次期改定では、こうした治療がさらに推進されるはずで、情報通信機器を用いた診察や、遠隔モニタリングなどによって、医療の質や生産性の向上を目的とした診療報酬上の評価が導入されることになる見通しだ。

 具体的には、オンライン診療を組み合わせた糖尿病などの生活習慣病患者への指導・管理、血圧・血糖などの遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防、さらに対面診療と遠隔診療の組み合わせなどがある。例えば、遠隔モニタリングの対象に睡眠時無呼吸症候群の持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が追加される見込みだ。

 今後は遠隔画像診断のように医師同士を繋ぐ「Doctor to Doctor(DtoD)」だけでなく、「Doctor to Patient(DtoP)」の領域での遠隔医療の活用が進むだろう。

 しかし、遠隔診療は、あくまで対面による診療行為を補完するものと位置付けるべきものだ。また、市場拡大とは、医療機関にとってはコストが膨らむことの裏返しであると心しておかなくてはならない。

 かつて電子カルテが導入された時と同様に、新たな設備投資や教育なども必要になってくる。施策の方向性をにらみつつ、コスト増を超えて効率化や増収に繋げられるような戦略を考えたい。

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