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未来の会

第93回 不眠に害はなく、睡眠剤に害

第93回 不眠に害はなく、睡眠剤に害

 不眠を訴える人に対して、睡眠剤がよく処方されるが、不眠とは「満足できる睡眠が得られない」という「訴え」、すなわち主観であり、睡眠時間が短い=睡眠不足(睡眠負債がある状態)とは異なる。睡眠を得るために処方される睡眠剤(睡眠導入剤)の効果と害に関しては、不眠の健康への影響と、睡眠剤の健康への影響の比較が必須である。薬のチェックTIP誌73号に総説記事を書いたので、その概要を紹介する。

不眠を覚える人が不眠を訴えない人より長生き

 女性では約半数、男性では約30%が、不眠を覚えることがあると答えている。しかし、月に1回程度は不眠を感じる人の方が、不眠を覚えない人に比べて、女性は19%、男性は13%死亡リスクが低く、月に10回以上不眠を感じる人でも、女性で13%、男性で10%低かった、つまり長生きであった。これは、米国で30歳以上の男女、100万人以上を約5年間追跡して、年齢や性別の他、喫煙や主要な病気(高血圧や糖尿病など)など30種類以上の危険因子で補正して得た結果である。

睡眠不足は加齢徴候を誘導、十分な睡眠で回復

 一方、強制的に睡眠不足にすると、耐糖能や甲状腺機能が悪化し、ストレスホルモンであるコルチゾルが増えた。これらの変化は、加齢に伴って起こる変化と類似しているので、睡眠不足は加齢に伴う様々な慢性疾患を引き起こすのではないかと考察されている。一方、人の最適睡眠時間は意外と長く、8.5〜9時間であった。そして、最適睡眠時間を確保すると、血糖値は低下し、甲状腺ホルモンが増え、コルチゾルが低下した。この結果は、睡眠不足にした結果と全く逆であり、ストレスの少ない、良い健康状態になることを示している。

睡眠不足だと不眠を覚えず、足りていると不眠

 普段睡眠不足だとすぐに眠れるが、ストレスによって加齢徴候が誘導される。睡眠が足りていると、時々は寝つきが悪くなり、それが「不眠」との「訴え」になる。しかし、寝不足ではないため、健康状態そのものは良好を保っているようである。

睡眠剤は、死亡危険度を2〜4割増す

 複数のコホート研究で、睡眠剤を常用する人は、使用しない人に比べて、死亡危険度が25%〜39%増しであった。承認の根拠となったランダム化比較試験(RCT)のメタ解析の結果、睡眠剤服用者はプラセボ群に比し、うつ病が2.4倍に、感染症は44%増加していた。また疫学調査で、がんは35%増加していた。この他、睡眠剤・安定剤の服用は交通事故や転倒、依存症、中断時の離脱症状などを起こす。これらが死亡危険増加の原因と考えられる。

睡眠剤は免疫抑制剤

 ベンゾジアゼピン剤など睡眠剤・安定剤は、ストレス時に必要な体内安定作用物質(GABA)の分泌とその受容体を減少させるため、不安やパニック障害、うつ病の原因になると考えられる。また、ベンゾジアゼピン剤には免疫抑制作用、染色体異常誘発作用がある。感染症やがんを増加するのは、これらの作用によると考えられる。

実地診療では

 不眠は健康を害さないが、睡眠剤は健康を害する。睡眠剤の処方と、新たな睡眠剤の評価にもこの点の考慮が必須である。

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