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第18回未来の会

日本サプリメント

日本サプリメント
ホ初示許取り消し事件
気に

 1991年に特定保健食品(トクホ)制度が始まって以来、初めてのトクホ表示許可取り消しである。トクホ商品に有効成分が不足していた食品通販会社「日本サプリメント」事件だ。

 昨年9月、同社のトクホ表示商品8品目に有効成分が不足していたことが判明すると、消費者庁はトクホ表示を取り消し、今年2月には景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を出し、さらに6月には同社の主力2商品を対象に5471万円の課徴金納付を命令した。

 有効成分不足が判明してから、トクホに義務付けられている届け出を2年以上にわたって怠っていた悪質さが問題にされたが、この不正の発覚により今や、全てのトクホ商品の信用度を失墜させ「トクホ制度」を揺るがす事態に発展している。

 消費者庁の消費者委員会の委員からも「トクホに値しない商品を相応な価格で販売し続けていたのは、もはや詐欺同然だ」「欠陥商品を販売したのに反省の色もない」という声すら上がった。この不祥事の詳細を見てみよう。

品質管理はいい加減、届け出は大幅遅れ

 日本サプリメントはテレビでもお馴染みの「ナットウキナーゼ&梅エキス」や「DHA+EPA860」「ノコギリヤシエキス」「青汁」「にんにく卵黄」など20種類ほどの健康食品を販売している。その中で次のトクホ8商品が詐欺同然と非難をされた。「ペプチド茶」「ペプチドストレート」「ペプチドスープEX」「ペプチドエースつぶタイプ」「同ハーフサイズ」「食前茶」「豆鼓エキスつぶタイプ」「同ハーフサイズ」だ。

 ところが、この主力商品で有効成分がことごとく届け出の量を下回っていた。日本サプリメントが自社検査で有効成分の不足をつかんだのは14年だったにもかかわらず、消費者庁に届け出たのは昨年9月。しかも、同社はそれまでトクホ商品の品質検査を行わず、たまたま14年に検査したら成分不足だった、ということも判明した。

 消費者庁はこの品質管理のいい加減さと届け出の遅れを問題視。「トクホとは健康に関与する成分(有効成分)の特定を前提にして安全性、機能性、品質管理を満たすことで認められている。日本サプリメントはトクホ商品に求められている品質管理を怠っていた」(表示対策課)と説明する。

 トクホでは、原料のロットごとに適宜の検査と届け出を義務付けているが、同社がその義務を怠ったことは消費者に成分不足の商品を騙して売っていたのも同然だと激怒したのである。

 しかし、怒りはそれに止まらなかった。日本サプリメントが検査で成分不足が判明した時に即、届け出なかったのには、もう一つ理由があった。

 ペプチドシリーズの商品では有効成分が規定量に足りなかったのだが、もう一つのトリスシリーズでは成分が足りなかっただけではなく、血糖値を下げる効果があるとしていた成分が、実は「トリスではなかった」という問題も出てきたのだ。

 同社は「血糖値を下げる効果があることは事実だが、有効成分を特定するため、届け出が遅れてしまった」と弁解する。だが、消費者庁は「何が健康に効果があるか分からないという商品は世の中にあるかもしれないが、そういう商品をトクホとして認めるわけにはいかない」とカンカンだ。

 加えて、トクホの取り消し直後、日本サプリメントは「有効成分が規定量に足りなかったとしても、商品にはナットウキナーゼなどが含まれている。トクホ表示の許可取得では成分を一つに絞ったが、トリスが少なくても健康への効果は変わらない」と語ったことも火に油を注ぐ結果になったようだ。

 5471万円もの課徴金納付命令も通販業界初のことだった。景品表示法に課徴金制度が導入され、昨年4月から施行された結果だが、同社への課徴金の多さも注目された。

 景品表示法では課徴金は売上の3%と決められているが、売上5000万円未満の場合は免除される。日本サプリメントのトクホ8商品中、対象になったのは販売額が大きかった2商品。昨年4月1日から販売停止までの販売額が10億2400万円だった「ペプチドエースつぶタイプ」には3073万円、同期間の販売額が約8億円だった「豆鼓エキスつぶタイプ」には2398万円の課徴金が課せられた。

 さらに、景品表示法の課徴金制度は事業者の違反抑止と共に、消費者の被害回復に寄与させる「返金制度」という目的を併せ持ち、返金額に応じて課徴金を減額することになっている。

 ただし、この減額には、事業者が新聞2紙以上に社告を出して返品を呼び掛けるとともに、消費者庁に「返金計画書」を提出し、認定を受けることが条件として要求される。

 しかし、日本サプリメントは返金計画書を提出しなかったため、規定通り満額の課徴金納付を命令されたのだ。

消費者をバカにした返金対応

 同社は返金計画書を提出しなかった理由を「2月の措置命令以後、商品と引き換えに返金していたが、消費者庁の認定が必要な計画書は返金条件が厳し過ぎた」と語った。

 同社の主張では、返金はあくまで商品と引き換えである。しかし、通販ではネットや電話で注文を受け付け、商品を宅配便で届けるため、購入者は全て把握している。返金しようと思えば、購入者リストに載っている全員に連絡、返金出来るはずなのだが、商品と引き換えでは既に服用してしまった人は対象にならない。ほんの一部の消費者だけに返金することになってしまう。これではトクホ商品だと信じて購入した消費者は、実はトクホではない商品を購入、服用したことになり、騙されたことになる。

 同社が返金の徹底を渋る理由には、「届け出ていた有効成分は規定量を下回っていたが、届け出た有効成分はいくつもの有効成分のうちの一つだけを代表として届け出たもので、原料のかつお節オリゴペプチドには血圧低下に関して効果があり、確認もしているから有効性が否定されたわけではない」という主張がある。

 要は届け出た成分は少なかったが、他の成分が入っていて、そっちに効果があるから問題はない、という言い分だ。

 トクホとして謳い、宣伝した成分が少なかったのに、他の成分があるから有効だ、というのは屁理屈ではなかろうか。「詐欺同然だ」と言われてしまうのも当然だ。

 確かに健康食品にはいかがわしいものが多い。例えば、乳酸菌やヒアルロン酸だ。

 ある整形外科医は「海外の有名な医学雑誌がどういうわけか、『高齢者の膝の軟骨減少にヒアルロン酸が効果的』という論文を載せてしまった。以来、この論文を見た健康食品会社がヒアルロン酸入りの機能性食品を販売し、ブームになってしまった。実際には口から摂取したヒアルロン酸はそのまま体外に排出されてしまうだけです」と苦々しげに言う。

 乳酸菌も口から摂取したものは、ほとんどが体外に排出されるという。飲まないよりはマシ、という程度だそうだ。日本サプリメントの主張はより悪質に感じられる。

親会社キューサイの「青汁」は大丈夫か?

 日本サプリメントは日本合成化学工業の機能食品事業が独立した会社である。文字通り、健康食品の会社だ。2006年、青汁で有名な「キューサイ」が買収。その4年後の10年にコカ・コーラウエスト(現コカ・コーラボトラーズジャパン)がキューサイを約360億円で買収したため、今ではキューサイの子会社で、コカ・コーラボトラ—ズの孫会社になる。

 親会社のキューサイは、菓子製造販売会社の創業者・長谷川常雄社長が青汁健康法を知り、キャベツの原種であるケールを搾って作った青汁を販売したのが始まり。長谷川氏自身が「鼻をつまんで飲めばいい」と語ったように、当初は決してうまいものではなかった。

 しかし、正直に「あ〜まずい、もう一杯!」というテレビCMが話題になり急成長した。

 ところが、99年に台風18号が熊本に上陸、甚大な農業被害を与えた。この時、原料のケールを供給していた栽培契約先の農事組合がケール不足を補うためにこっそりキャベツを混入。これが翌年発覚し、キューサイは公正取引委員会から不当表示として排除命令を受けた。キューサイは混入を知らなかったのだが、その言い分は通らなかった。逆に品質管理が出来ていなかったと判断されたのである。

 この事件で大幅な売上減に見舞われたキューサイは、扱う健康食品を増やすために日本サプリメントを買収したという経緯だ。騙しのDNAがある会社なのかもしれない。

 実は、日本サプリメントのトクホ取り消し事件はキューサイにも共同責任がある。キューサイは日本サプリメントのトクホ商品の製造元なのだ。

 日本サプリメントが2月に景品表示法違反とされた直後、キューサイ社内では藤野孝会長以外の全役員7人が引責辞任、さらに日本サプリメントの増田毅代表取締役の減給、役員2人の譴責処分を行った。

 キューサイは「消費者庁から弁明の機会を与えられず、トクホ取り消し処分になった。結果、10億円の特別損失が出るため」と能天気に語っている。

 日本サプリメントと製造元のキューサイの言い分は責任回避でしかなく、被害者は購入した消費者の方である。有効成分の特定があやふやである上、有効成分不足をそのままにして販売を続けていたのは、もはや詐欺に近い。取材に対して警視庁捜査2課幹部は「興味深くその後の推移を見ている。被害届次第だ」と話す。

 日本サプリメントだけでなく、親会社であるキューサイとの共同責任である。特にキャベツ混入事件で品質管理責任を問われ、当時、消費者に優良商品と誤認させたことを反省し、「今後、品質管理に力を入れる」と宣言したはずなのに、トクホでは同じことを起こしている。

 17年前の苦い経験は全く生きていなかった。事件をすっかり忘れたことが、今回の景品表示法違反事件に繋がっている。消費者のための消費者庁も随分と舐められたものだ。

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