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日米韓連携を揺るがしかねない 韓国「反日親北」政権の危うさ

日米韓連携を揺るがしかねない 韓国「反日親北」政権の危うさ
武藤正敏(むとう・まさとし)外交経済評論家、元駐韓国特命全権大使
1948年東京都生まれ。1972年横浜国立大学卒業、外務省入省。1975年から駐韓日本大使館に勤務。その後、国連日本政府代表部一等書記官、外務省北東アジア課長、駐オーストラリア日本大使館公使、駐米国ホノルル総領事、駐クウェート大使などを歴任。2010年駐韓大使。12年退任。現在、三菱重工業顧問。著書に『韓国人に生まれなくてよかった』『韓国の大誤算』『日韓対立の真相』など。

5月に韓国の新大統領に就任した氏は、就任前から「大統領に当選したら、ワシントンではなくて平壌に行く」と言っていたほど親北朝鮮の政治家。日韓慰安婦合意の見直しや、地上配備型ミサイル遊撃システム(THAAD)の配備延期などにも言及しており、日韓関係や米韓関係を揺るがしかねない。外交官として12年間を韓国で過ごした元駐韓大使の武藤正敏氏に話を聞いた。

——文大統領はどのような人物ですか。

武藤 在学中から学生運動に熱心だったようで、逮捕・投獄もされています。刑務所で司法試験の準備を進め、出所後に司法試験に合格したものの、検事や判事には採用されず、釜山で弁護士活動をしていました。そこで、人権弁護士として有名だった氏と出会い、合同法律事務所を設立しています。盧氏が政界入りして、大統領選挙に立候補するにあたって陣営入りし、当選後は最側近として青瓦台(大統領官邸)秘書室で勤務し、2007年には秘書室長となりました。しかし、盧元大統領は、退任後に親族や知人が贈賄で逮捕され、自身も事情聴取を受けました。その後、自宅裏山から投身自殺しました。文氏は盧元大統領の退任後は政界を離れていましたが、盧氏の国民葬を実質的に取り仕切った後、盧氏の遺志を継ぐために政治活動を再開します。12年の総選挙で釜山市から立候補し、国会議員に初当選しました。12年の大統領選では有力な革新系候補となったものの、セヌリ党の氏に惜敗しました。12年の大統領選で文氏は「親日清算」をしたいと繰り返し主張していました。また、真実と和解委員会を設置し、過去史の整理作業を締めくくるとも言っています。16年には竹島に上陸して1泊しています。

——文氏に会ったことはありますか。

武藤 私は駐韓大使として一度、大統領になる前の文氏に会ったことがありますが、北朝鮮のことしか頭にないのではないかという印象です。経済協力を含む日韓関係の重要性を説明したのですが、私に対する質問は「北朝鮮にどう臨むのか」「南北統一をどう考えているのか」だけでした。日本に対する関心や問題意識が低いのでしょう。

慰安婦問題再交渉を求めてくる可能性

——文大統領の登場で日韓関係はどうなりますか。

武藤 文大統領は就任後、安倍晋三首相との電話会談で「ツートラック」と言っています。日本についてのツートラック戦略とは、歴史問題は歴史問題として捉える一方、北東アジアの平和に向けて経済・安保・政治では日本と共同ビジョンを持っていこうという並行した2戦略のこと。歴史問題と未来志向ということです。しかし、文大統領は既に、歴史問題を重視する姿勢を出しています。例えば、外相と女性家族相の人事。韓国で女性外相は初めてで、氏は国連で人権問題を長く担当した人物です。新たな女性家族相の候補に指名されている氏は大学教授ですが、国会の人事聴聞会で、慰安婦問題を巡る日韓合意について「再協議出来る事案」と話しています。仮に、文大統領がツートラックで進めても、慰安婦問題で活動している挺隊協(韓国挺身隊問題対策協議会)は認めないでしょう。日本に少しでも譲歩したと見れば攻撃し始める。日韓合意は朴氏が攻撃されて転げ落ちていくきっかけの一つでした。よって、慰安婦問題は再交渉を要求してくる可能性が高いでしょう。

——選挙戦の時に厳しい発言をしていても、就任すれば変わると日本は期待しています。

武藤 日本に対して直接、厳しいことはまだ言ってきていません。しかし、米紙『ワシントン・ポスト』の単独インタビューに対して、「(慰安婦)問題解決のために重要なことは、日本が法的責任を負うことと公式の謝罪を行うことだ」と言っています。大統領選の時に、慰安婦問題の日韓合意について再交渉を要求すると訴えていましたが、就任後もその姿勢に変わりはないということです。日本に要求する前に米メディアにそういうことを言うのはおかしい。韓国外交部も日韓合意の過程を検証すると公表しており、慰安婦個人の請求権は消滅していないと言っています。韓国は、慰安婦問題は日韓だけではうまくいかないと思っているので、米国を巻き込んで圧力を掛けさせようとします。だから、朴前大統領の時は「告げ口外交」と揶揄されました。どんな大統領でも就任当初は日韓関係をうまくやろうとするものです。日本の対応が十分ではないと感じた時に、途端に関係が悪化します。日韓関係は浮き沈みが早くて、良くなる時も悪くなる時も早いのです。

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