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第89回 腱損傷-キノロン/スタチンなど

第89回 腱損傷-キノロン/スタチンなど

はじめに

 腱はコラーゲンを主とする弾力性のある結合組織であり、筋肉を骨と結び付けて、激しい運動に耐えられるようにしている。コラーゲンは腱細胞により作られる。その機能が低下して新たなコラーゲンが作られ難くなれば、腱の弾力性が低下して、損傷が起こりやすくなり、断裂することもある。高齢になり、コラーゲンの産生を阻害する薬剤が使用されると、腱の損傷を起こすことになる。特にこの腱損傷を起こしやすい薬剤がフルオロキノロン剤(本稿では、単にキノロン剤と略)である。スタチン剤や、ステロイド剤も腱損傷を起こし得る。

 薬のチェックTIP誌72号(2017年7月号)で「薬剤性腱障害」(プレスクリル誌)を元に、作用機序を含めて解説したので、その要約を紹介する。

腱の損傷について 

 痛みを伴う腱の障害を指す用語としてTendinitis(腱炎)がよく用いられるが、本態は変性で、炎症は軽度である。tendinosis(腱症)の方が適切だ。明らかな外傷が無くとも薬剤により腱の損傷が起こる。

 薬剤への初回暴露から数日以内、時には数か月以内に起こり、中止後に生じることもある。一方治癒には時間がかかり、原因薬剤を中止後、通常数週間から数か月かかる。障害が持続することもある。

 危険因子は、高齢であること、リウマチ性疾患、スポーツ活動、原因となり得る薬剤を複数使用した場合などである。

キノロン剤は1回でも危険

 代表的な症例-対照研究では、キノロン剤使用中(中止30日以内を含む)の腱損傷の危険度は全年齢で1.9倍、高齢者では3.2倍、ステロイド剤併用で6.2倍であった。アキレス腱断裂に関しては、高齢者では特に危険で、キノロン剤単独で7.1倍であった。

 キノロン剤への初回暴露からわずか48時間後に発症することがある一方、中止後にも発症し得る。両側性にも発症し、どの腱も損傷し得る。動物実験で、用量依存的に腱のコラーゲン組織の損傷が起こることが証明されている。そのため、網膜剥離や大動脈解離などコラーゲンの損傷が関係する他の組織にも重大な反応を生じ得る。

スタチン剤及びステロイド剤

 スタチン剤では、臨床用量で腱に損傷から腱断裂を生じたり、いきなり腱断裂を生じたりする。臨床相当量を動物に投与し、腱の形態学的変化やコラーゲン組織の形成阻害が確認されている。

 ステロイド剤でも腱損傷が腱断裂を含めて報告されている。内服や関節内使用のほか、点鼻や吸入などでも報告されている。Ⅰ型コラーゲンは、腱幹細胞では作られず、腱細胞になって作られる。ステロイド剤は腱幹細胞から腱細胞への分化を抑制し、腱細胞のアポトーシスを促進し、腱組織を脆弱化させる。

その他

 日本では未承認で、個人輸入に警告が発せられているニキビ用剤のイソトレチノインなど経口レチノイド、重症の乾癬用剤エトレチナート(チガソン)、閉経後乳がんに用いられているアナストロゾールなどアロマターゼ阻害剤、免疫抑制剤のレフルノミド、フィブラート製剤でなどでも報告されている。


参考文献
1)  薬のチェックTIP、2017、17(72):87-90.
2) Prescrire International 2016: 25(174):212-213.

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