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加計学園問題で安倍官邸への「霞ヶ関の不満」が表面化

加計学園問題で安倍官邸への「霞ヶ関の不満」が表面化
同じムジナか

校法人加計学園(岡山市)の岡山理科大学獣医学部新設計画(愛媛県今治市)を巡る議論が盛り上がっている。「官邸の最高レベルが言っている」とする内容の〝怪文書〟を巡り、文部科学省では前川喜平・前事務次官だけでなく、官邸に反乱を起こす職員が続出。一方で、例年7月頃に行われる省庁の幹部人事では文科省に何らか分〟が下るのではないかとの噂 も。「安倍一強」時代の驕りが生んだ加計学園問題は、官邸と霞ヶ関との関係を変える一穴となるか。

 まずは一連の問題を振り返ろう。国会で加計学園問題が積極的に取り上げられるようになったのは5月頃、森友学園を巡る与野党の攻防が一段落した時期だった。

 「以前から森友より加計の方がヤバい、という噂はあった。森友弾が不発に終わったが、加計弾は朝日新聞が内部文書を入手して大きく伝えたことで、一気に火が付いた印象だ。共謀罪をはじめ、与党ペースで進む後半国会の目玉となった」

 疑惑の構図は森友学園も加計学園も似ている。安倍晋三首相に近い場所にいる人物が関わる両学園が、自分達に有利になるように恣意的に行政を曲げたというものだ。森友学園の場合、通常では考えられない金額で国有地の払い下げを受けた。加計学園の場合は、50年余も新設されていなかった獣医学部が設置出来るよう規制緩和をさせたというものだ。

朝日へのリーク者を読売が潰す構図

 どちらの学園の例も一見して不可思議な事案ではあるが、外形的事実だけでは、そこに「総理の意向」があったのかを判断することは難しい。攻めあぐねていた野党が手にした新たな武器が、朝日新聞が5月17日付朝刊でスクープした「新学部『総理の意向』 文科省に記録文書」の記事だった。記事の内容はこうだ。加計学園の獣医学部設置計画を巡り、国家戦略特区を担当する内閣府が文科省に「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などと伝えたということが記録された文科省の文書がある、というものだ。記事には文書の写真も示されていたが、菅義偉官房長官は会見でこれを〝怪文書〟と切って捨てた。

 さらに、国内最多の発行部数を誇る読売新聞は5月22日に突然、「前川前次官 出会い系バー通い」との見出しの記事を朝刊社会面に大きく掲載したのだ。記事の内容は、文科省の天下り斡旋問題の責任を取って事務次官を辞任した前川氏が、次官時代に売春の温床とされる出会い系バーに何度も通っていたというもの。前川氏は、文書を朝日新聞にリークした張本人との噂があった。「全国紙の社会面に堂々と載せるには、あまりにもレベルの低い異質な記事だった。安倍政権に近いとされる読売の報道だから当然、官邸の意向を受けて行われたのだろう。朝日新聞や民進党に文書を流したのは前川氏だと踏んだ官邸が、前川を封じようとしたのだと思う」(全国紙記者)。

 ところが、前川氏は止まらない。朝日新聞や週刊誌の取材に、「文書は本物だ」と証言すると、会見まで開いて「在職中に文書を見たことがある」などと証言。出会い系バーに通っていたこともあっさり認め、「出会い系バー攻撃がちっとも効いていない」ことを示した。思った効果が出なかったことに焦ったのか、読売新聞は6月3日付で「次官時代の不適切な行動 報道すべき公共の関心事」とする社会部長名の記事を掲載したが、今度はこの記事が物議を醸すことになった。

 さらに、かねてから前川氏の応援団が文科省にいると囁かれていた通り、文科省の複数の現役職員が、報道機関の取材に対し、文書の存在について「確かに省内で共有されていた文書だ」と証言。官邸や内閣府に対する霞ヶ関の反乱かと騒がれた。

 全国紙記者からはこんな声も聞こえてくる。「会見で最低限の取材が出来たとは言え、報道機関であれば前川氏に直接インタビューしたいと考えるのが普通だ。しかし、前川氏のインタビューは安倍政権に近いとされる読売や産経新聞には掲載されていない。前川氏が〝親安倍〟メディアの取材を受けていないようだ」。前川氏がメディアを選別し、野党と共闘しながら最大限の効果を狙っているというのだ。官僚トップの事務次官まで務めた人物であれば、そのくらいのことは朝飯前だろう。

 それに対して、怪文書と決め付けたり前川氏を貶めようとしたりと、菅官房長官のお粗末な対応ぶりもあり、安倍政権の支持率は低下。慌てた官邸は文科省に文書の存在について再調査を命じた。政治部記者は「遅きに失した感はあったが、正直あの文書だけで政権が潰れることはないだろう。それよりも、今回の一件で、霞ヶ関官僚の官邸への不満が表面化したことが大きい」と語る。

 スクープを続発して「文春砲」と言われる週刊文春になぞらえ、「前川砲」と呼ばれる前川氏の乱。前川氏の息子は厚生労働省の官僚と噂され、官僚の反乱が他省庁に広がることも懸念されたが、現状では追随する動きは無い。

 「森友問題で被弾した財務省は思うところはあるだろうが、今のところ静観している。経済産業省に至っては、当初から安倍政権と心中覚悟だ」と解説するのは、内閣府にいたこともある中堅官僚だ。ある厚労省職員は「当初から政権との距離が噂された厚労省では、事務次官を始め上層部が政権に擦り寄ろうとしている。政権に牙を剥くほどの〝義士〟は見当たらない」と明かす。

人事異動では官邸側の意趣返しも

 担当記者によると、天下り問題でもクローズアップされた通り、文科省は他省庁に比べて元々「ファミリー」意識が強いという。時代に逆行する組織ぐるみの天下りが綿々と続いていたことが、その証左だ。「官邸に対する文科官僚の反乱といえば聞こえは良いが、文科省は50年も岩盤規制を守り続けていた役所だ」と担当記者。一方で、前川氏に「獣医学部新設をよろしく」と圧力を掛けたとされる文科省OBで当時内閣官房参与だった木曽功氏は加計学園理事・千葉科学大学学長に就任。同じく文科省OBで、天下り斡旋の調整役だった公益財団法人「文教協会」常務理事の豊田三郎氏も加計学園理事だった。

 前川氏も天下り斡旋が発覚して停職相当の懲戒処分が下った身。「ズブズブの関係を疑うなら、文科省も安倍首相に負けない」と担当記者は天下りシステムを守り続けてきた前川氏も同罪だと容赦ない。結局、前川氏の乱は国会閉幕とともに、文科省の一部だけで終わりそうだ。

 もっとも、その後には省庁人事が待っている。霞ヶ関では「文科省の人事に官邸が何らかの意図を込めてくる可能性がある」との噂が駆け巡る。政権に従順な官僚を幹部に取り立てる人事が行われれば、職員の士気は落ちる一方だし、政権への批判も高まる。

 今年の「官僚たちの夏」は、例年に比べて暑くなるか、それとも背筋が凍るほどの寒さとなるか……。

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