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医師こそ必要な「働き方改革」

医師こそ必要な「働き方改革」
職種別60時間以上労働者の割がト

手広告代理店社員の過労自殺や運輸会社の残業費未払い問題などが報道を賑わせたが、医師の過剰労働はそれ以上に深刻であり、医師こそ「働き方改革」が必要とする声は根強い。

 総務省の調査(2012年)によれば、職種別で週60時間以上の労働者の割合は、医師が38.1%で、自動車運転手(35.3%)を抑えて最も高い。また、医師の自殺率は一般の人より高く、過労による病死を含めると、毎年100人を超える医師が命を落としているとされる。

 5月末には、16年1月に新潟市民病院で過労により自殺した女性研修医について、労働基準監督署が労災を認定し、病院に対して長時間労働の改善などを求める是正勧告をした。実は労基署からの是正勧告は09年にもあり、それを機に、医師数を2割増やし、医師の事務を代行する医療秘書も5倍以上に増員されていた。しかし、外来患者が増え続け、救急外来の過半数が軽症患者という状況下において、医師の過重労働は常態化していた。今回の労災認定後、同院は「緊急対応宣言」を発表し、紹介状のない一般外来患者の受け入れ停止や、治療が済んだ患者を近隣病院へ回す対策を強化した。

 6月から、聖路加国際病院(東京都中央区)では、土曜日の外来診療の大幅な縮小に踏み切った。16年6月に労基署の立ち入り調査が行われ、医師の長時間労働について指導を受けたためだ。同院の医師は、午後9時など遅い時間でも患者家族に治療方針を説明するなどしてきたが、医師の院内滞在時間を大幅に短縮せざるを得なくなったのだ。夜間に救急患者などに対応する医師数は、1年前は17〜19人だったが、17年2月には12〜14人に減員。従来は、外科の手技を身につけるためシミュレーターなどの訓練は自己研鑚とされたが、これも労基署から労働時間と認定された。

 4月に厚生労働省の専門家会議がまとめた「医師・看護師等の働き方ビジョン」には、「自己犠牲によって自らの生活や将来を失ったりしてはならない」という一節が盛り込まれている。

 6月、全日本病院協会新会長になった猪口雄二氏(医療法人寿康会理事長)は、就任に当たり、18年度の診療報酬と介護報酬の同期改定、地域医療構想などと共に、医師の働き方改革を課題として挙げた。

医療機関は「非効率の温床」

 医療機関は、知識集約型の代表的な職場であり、有資格の専門職者の集まりである。

 一方で、非効率の温床になっているという側面も否定出来ない。中でも、交代制になっている看護師などと違い、医師は過剰労働に陥りがちだ。

 これには、医師法19条の「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」という「応招義務」の存在も大きい。この点では、医療は、究極のサービス業とも言えるが、医療関係者の間には、長時間労働も「正当な事由」に含まれるとの見方もある。

 さらに、女性医師が増えたり、医療内容が高度化したりしていることも、長時間労働に拍車を掛けている。

 16年には、政府の「働き方改革実現会議」がスタートした。一億総活躍社会の実現を掲げる安倍政権の構造改革の柱と位置付けられる施策だ。日本型のサービス産業は、過剰なサービスへの要求が就業者に過大な負荷を掛けるという構造が常態化しており、労働環境の劣悪化にも直結しているとされた。

 政府が17年3月に公表した「働き方改革実行計画」では、「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」を柱としており、医師も時間外労働規制の対象であると明記された。

 しかし、「応召義務」などを理由に、適用は改正法施行日の5年後と猶予期間が設けられた。医療界の参加の下で検討の場を設け、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策などについて検討し結論を得ることになっている。

 とはいえ、現場の改革は待ったなしだと言える。新潟市民病院の例では、自殺した医師は、うつ病発症1カ月前には、「過労死ライン(80時間超)」の2倍に当たる160時間超の残業をしていた。このように労使協定を無視して医療者の長時間労働を放置すると、患者の安全に悪影響を及ぼし、結果的に医療機関が不利益を被りかねない。

病院独自の取り組みも不可欠

 厚生労働省が、全国8489病院で2年以上勤務し、当直・夜勤を行っているフルタイムの正職員医師1449人を対象に実施した調査(有効回答数1411)では、16年6月の時間外労働時間は、20時間以上が約半数を占め、80時間超も6.8%に達した。

 また、約7割は宿直明けに通常勤務をしていた。月80時間以上の時間外労働をしている医師の割合は、病床規模別では「400床以上」(10.3%)が最も多かった。年代別では、20代(10.6%)、30代(8.9%)、40代(7.1%)と、若年層ほど高かった。

 一方、日本外科学会の会員を対象にした調査(13年)では、医療事故やヒヤリ・ハットの8割超は、その理由に「過労・多忙」があった。

 地域遍在の是正などには国の抜本的な改革も必要だが、病院独自の取り組みも欠かせない。例を見よう。

 仙台市の仙台厚生病院(409床)は、診療科を心臓、呼吸器、消化器の3センターに集約し、病状の改善に伴い他院や開業医に積極的に紹介するようにした。加えて、検査結果の入力などを行う医師事務補助者も約40人配置した。これらにより、医師の残業時間は月30時間以内に抑えられたという。

 また、南多摩病院(東京都八王子市、170床)は、14年に当直を労働時間としたが、残業が増え過ぎるのを抑えるため、当直は勤務医でなく、都内の大学病院に委託した上で、タブレット端末で、院外でも検査データなどを参照出来るようにした。

 労働時間を圧縮し、それまでと同様のパフォーマンスを得ようとすれば、効率化を図っていくしかない。とりわけ、医療現場における効率化の必要性はより高まっている。そこでは、医師や看護師でなくても出来るような補助的仕事は、アウトソーシングするような方針を検討しなくてはならないだろう。

 18年度の診療報酬と介護報酬の同時改定の内容には、医療機関の収入減になる厳しい内容が予想される中でも、過労対策への気配りは急務である。

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