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病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

クオール

クオール
調剤薬の自殺行為」と
「付え請事件

 「調剤薬局の自殺行為だ」という声が上がっている。全国に約700店舗を有する大手調剤薬局チェーン「クオール」の「付け替え請求」事件だ。同社の東北事業部のブロック長の指示で、社員家族の処方箋を秋田市内の調剤薬局に付け替えて、20点の調剤基本料を41点にかさ上げして不当な金儲けを図っていたのだ。この数年、調剤薬局業界では薬歴未記載、無資格調剤、C型肝炎治療薬「ハーボニー」偽造品事件と問題が絶えないが、その中でも最悪の詐欺的行為である。

組織的で計画的な

 事件の舞台は、秋田市内の精神科病院前の門前薬局「クオール薬局秋田飯島店」である。秋田飯島店が受ける処方箋のほぼ100%が精神科病院からのもので、病院とは俗に言う「マンツーマンの関係」だった。当然、調剤基本料は「調剤基本料3」に該当し、20点。そこで同社は社員の家族が医療機関で受診した際、周辺のクオール薬局で受けた処方箋を秋田飯島店に集め、処方箋の集中率を95%以下に引き下げて「基本料1」に該当させ、倍の調剤基本料41点を詐取しようと図った。

 指示したのはクオールの幹部である東北事業部のブロック長だから、明らかに組織的犯行である。

 周知のように、医療費抑制が声高に叫ばれている最中に、大手調剤薬局チェーンの創業者達が億単位の高額報酬を取っていることが明るみに出て、世間から儲け過ぎと批判され、中央社会保険医療協議会(中医協)でも問題になった。

 その結果、病院の門前に薬局を構え、特定の医療機関の処方箋だけで大儲けしている調剤薬局チェーンをターゲットに、2016年度から調剤基本料の仕組みが改定された。通常の調剤基本料は処方箋1回につき41点だが、処方箋集中率が高い場合は基本料2(25点)または基本料3(20点)とする区分を設けた。

 特に「調剤基本料3」と認定されたのは、「処方箋が月に4万校を超える」調剤薬局チェーンに属し、かつ同一医療機関からの「処方箋集中率が95%超」、または「特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係がある」薬局だ。

 当然、大手チェーン調剤薬局は打撃を受けた。クオールも昨年9月中間決算で「売り上げは新規出店と買収、子会社化で微増したが、薬価改定の影響で営業利益は13・7%減、経常利益も8・3%減」と発表している。

 そんな状況から利益を生み出そうと編み出したのが、処方箋付け替えだ。だが、それだけでは検査の際に発覚するため、書類上、医薬品を秋田飯島店に移動し、実際に調剤したように装った。まさに計画的な〝犯行〟である。

 実際には、それでも処方箋の枚数が足りず、41点は実現出来なかったが、調剤料には国民の健康保険料と税金という公的な財源が充てられており、そこから掠め取ろうとした行為は未遂とはいえ、詐欺と言っておかしくない。

 当然、批判の嵐が巻き起こっている。日本薬剤師会の山本信夫会長が「健康保険の健全な運営を著しく損なうだけでなく、調剤実態の無い薬局から保険請求を行うという、薬剤師倫理にももとる許しがたい行為」と怒りを爆発させ、日本医師会の横倉義武会長も「医療保険の下で医療人はルールを守るのが基本であるのに、そのルールから逸脱した行為だ」と指弾。日本チェーンドラッグストア協会などの団体からも批判の声が上がった。

 参議院厚生労働委員会でも、厚生労働省の鈴木康裕保険局長が「事実関係が確認されたら厳正に処分する」と答弁し、東北厚生局が立入監査に入った。

弁解と沈黙に終始した会長社長父子

 当初、クオールは沈黙したままだったが、批判の嵐の中で分が悪いと思ったのか、ようやく5月下旬の17年3月期決算説明会で中村勝会長が不正を認めた。だが、「現場の管理職の誤った解釈により、今回の事例が発生した」と弁解。「現場の管理職」とは、ブロック長を指すらしい。

 しかし、内部からは「ブロック長の上の東北第3事業部長も関係しているし、その上の北海道東北事業本部も黙認していたようだ」という声もある。

 第一、中村会長は調剤薬局チェーンの団体である日本保険薬局協会の会長(事件発覚後、辞任)だった。「ハーボニ—」の偽造品を患者に渡した事件で、奈良県から業務改善命令を受けた会員の関西メディコについて、中村会長は協会トップとして「再発防止の手が下せていない段階で、排除してしまうという考えはない」と弁護した。まるで自身のクオールで「処方箋付け替え」を知っていたから、かばったようにも聞こえる。

 中村会長は決算説明会後、沈黙し、長男の中村敬社長も釈明しようともしない。調剤薬局で問題が起こった時、責任を問われるのは薬局開設者と管理薬剤師である。クオールの代表者である中村社長は開設者に当たるはずだ。事件の説明をしようともしないのは、責任を取らされることを恐れているからとしか思えない。

 クオールは1992年に創業した調剤薬局である。北海道出身のアインファーマシーズが同業社と合併して調剤薬局トップになったのに倣って、調剤薬局を次々と買収して事業を拡大。さらに、JR西日本と提携して「駅ナカ薬局」をつくったり、ローソンと提携して「共同店舗」を開設したりして調剤薬局数を増やし、2012年には東証第一部に上場した。

 前述の通り、中村勝会長は日本保険薬局協会会長にも就任。医薬品を安く仕入れるため薬局チェーンに声を掛け、共同仕入れ機構を作り、保険薬局協会でも発言力を増していった。

 経営スタイルは徹底した利益追求型だ。例えば、ローソンとの提携である。

 コンビニとの提携による共同店舗を最初に実行したのはマツモトキヨシとローソンで、鳴り物入りで2店舗を開いた。マツキヨはコンビニの弁当仕入れを勉強したい、ローソンは医薬品を並べて客を増やしたい、という思惑による構想だった。

 しかし、共同店舗とは名ばかりで、店内では別々のレジ。一つ屋根の下にコンビニとドラッグストアが別々にある、という姿で、マツキヨ・ローソンの共同店舗は失敗した。理由はローソンがフランチャイズ方式のため、マツキヨにフランチャイジーになるように迫ったことで、マツキヨ側が拒否した結果だった。

 ところが、クオールはそのローソンと提携し、「ナチュラルローソンクオール薬局」を三十数店舗開設している。

 クオールはローソンのフランチャイジーになることを受け入れたのである。クオールは「フランチャイジーになってどこがいけないのか。きちんと利益が上がっている」と息巻く。マツキヨはドラッグストアとしてのプライドを持つが、クオールにはそういう矜持は無かった。処方箋しか扱わないということもあるが、コンビニのフランチャイジーになり、売り上げが増えることこそベストだという発想である。

病院との癒着窺わせる「マンツーマン経営」

 本業の調剤薬局でも同様だ。ほとんどの調剤薬局は医療機関の門前に店舗を作り、処方箋を集めることで成り立ってきた。それも患者が来やすい場所に薬局を開きさえすれば、処方箋がより集まり、保険制度の下で安定的に利益が上がる。この素朴ともいえる方法を推し進めたのがクオールだ。

 同社では堂々と「マンツーマン薬局」と呼び、「処方医療機関とクオール薬局が1対1の関係になれる薬局づくりを基本」としている。しかも、マンツーマン薬局こそ「常に〝患者さまのため〟を最優先した事業」であり、「医療とは関係のない支出を最小限に抑えて、その分を患者さまのためのサービスに投資する」と謳う。

 見ようによっては、「医療機関との癒着」を窺わせる。かつて製薬メーカーの医療機関への接待攻勢による癒着から医薬分業が始まったが、この医薬分業による公的保険制度下でのメリットを最大限に享受し、利益を上げていたといえる。

 もっとも、調剤薬局チェーンの儲けぶりから、調剤薬局の有り様が問われるようになると、「かかりつけ薬局」「健康サポート薬局」機能などを打ち出さざるを得なくなってくる。

 しかし、医療機関で外来の診察が終ると、夕方6時に閉店する門前の調剤薬局チェーンに、かかりつけ薬局、健康サポート薬局機能を求めること自体が無理だ。街中で深夜まで営業しているドラッグストアの方がまだマシだ。

 それでもクオールは、マンツーマン薬局の展開を基本に「連結売上高3000億円、1000店舗体制」を中長期的事業構想として掲げている。薬局数が5割増、売り上げ倍増計画である。この構想を実現する手っ取り早い方法が今回、内部告発で明らかになった処方箋付け替えだろう。

 クオールは決算説明会で「全店舗のうち、調剤基本料が20点の基本料3は27・2%を占めていたが、16年度に8店舗が基本料1(41点)に算定された」と語っている。

 アナリストの間では「基本料1に昇格したのは処方箋付け替えの結果ではないのか」とも囁かれている。

 処方箋付け替えなら、投資をすることもなく、確実に売り上げを伸ばせる。しかも、金の出所は公的保険だから、「患者さま」には直接、痛痒は無い。医療人としての良心も矜持も無ければ、この大風呂敷を広げたような構想を実現するための頭の良い方法だろう。

 中村会長は「国民皆保険制度は善意と良識で成り立つ制度でなければならない。やっていいこととやってはいけないことがある、と社員に言い続けてきた。秋田飯島店は経営状態が悪化したが、他に薬局がなく閉鎖するわけにもいかない、と現場が考えて、つい付け替え請求をしてしまった」と弁解する。

 今夏から来年度調剤報酬改定の議論が始まるが、中村会長は意に介さないようで、「付け替えは周辺の6店舗で11枚」であり、「健康被害は無い」と言う。

 健康被害は無くとも、健康保険制度を食い物にしようとした悪質行為だ。これこそがクオールの本性なのだろう。

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