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病院をきちんと経営出来る診療報酬に

病院をきちんと経営出来る診療報酬に

原澤 茂(はらさわ・しげる)1942年新潟県生まれ。68年新潟大学医学部卒業。75年東海大学医学部内科助手。79年同講師。87年同助教授。99年同教授(非常勤)、済生会川口総合病院病院長。2017年同病院名誉院長、済生会川口医療福祉センター総長。日本消化器内視鏡学会評議員、日本消化器病学会功労会員、埼玉県公的病院協議会会長、全国公私病院連盟常務理事、日本病院団体協議会議長。15年瑞寶小綬章。


2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向け、日本病院団体協議会(日病協)は政府に対する要望について議論してきた。4月下旬の代表者会議で最終決定し、5月の連休明けに厚生労働省に提出する。この改定が、2025年問題を見据えた体制作りのスタート地点であると位置付け、8項目の要望にまとめる。何を求めていくのか、今春、日病協の議長に就任した原澤茂氏に話を聞いた。

~18年度診療報酬・介護報酬改定に向けた要望~

——日本の医療の現状について、どのようにお考えですか。

原澤 日本人は世界でもトップレベルの長寿を誇っているわけですが、これだけ平均寿命が延び、健康でいられるのには、病院医療が大きく寄与していると考えています。いろいろな機能を持った病院が存在するわけですが、そういった病院の総合力が、日本の医療を支えてきたことは間違いありません。そして、こうした日本の病院医療が、勤務医や多くのメディカルスタッフの犠牲の上に成り立っている、ということも忘れてはいけないでしょう。待遇や報酬が必ずしも十分ではない状態で、病院医療が行われているのは事実です。

——犠牲というのは、具体的には?

原澤 例えば夜勤や当直などは、ほとんどの場合、見合わない賃金で働いているわけです。しかし、それによって日本の医療は成り立っているのだという現実があります。実際、時間外手当を全て支払うとすると、多くの病院が潰れてしまうでしょう。病院というのは、人件費を経費の45〜47%に抑えることによって、ようやく利益を確保することが出来ます。人件費が50%を越えたり、60%になったりしたら、きちんと病院を経営していくことは出来ないと思います。

——診療報酬がこのままでは、今後もずっと犠牲を強いることになるのですね。

原澤 その通りです。日本が世界に冠たる長寿国であると言うのであれば、それに見合った手厚い報酬を求めたい。まさにそれが本音です。

2カ月前倒しで要望書を提出予定

——2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定をどのように位置付けていますか。

原澤 同時改定は18年度と24年度にありますが、2025年問題に向けての体制作りは、今度の18年度改定から始まります。ここでスタートし、段階を踏んでいって、直前の24年度改定で完成形になるということでしょう。直前になって急にというのは無理ですからね。厚労省はそう考えていると思います。当然、日病協でも18年度の同時改定は非常に重要視しています。

——改定の際、要望書を出していますね。

原澤 3月の日病協の診療報酬実務者会議で議論があり、そこで要望する内容について検討しました。3月までは私が診療報酬実務者会議の委員長をやっていました。全13団体がまとまり、今回は総論的な要望書を出そうということで、内容を詰めてきました。この後、4月下旬の代表者会議で話し合い、場合によっては文言を整え、5月の連休明けには厚労省に提出するというスケジュールになっています。これが第1弾の要望書です。前回の16年度改定のときは、7月と12月に要望書を出しています。それに比べると、5月ですから2カ月間前倒しということです。

——早めた理由は?

原澤 前回改定時の代表者会議の中で、次回は早めに出そうということになったのです。同時改定だし、2025年問題を考えた場合、そこに向けてスタートする重要な改定となります。厚労省も重要と位置付け早めに検討に入るようなので、日病協もそれに合わせた方がいいだろう、ということになったのです。

——第2回の要望書も出すのですか。

原澤 その予定です。2回目は議論が白熱してくる10月頃に出すことになると思います。1回目は総論的な内容ですが、2回目の要望書は、ある程度具体的な内容になるはずです。

——1回目の要望書の内容を教えてください。

原澤 八つの要望にまとめたのですが、その前置きとして、病院が健全に経営していける診療報酬にしてほしい、という内容が入っています。控除対象外消費税、いわゆる損税の問題は深刻で、病院の経営は悪くなっています。実態調査からも明らかです。また、医師や看護師を始めとする医療職が人手不足で、人件費が高騰しています。少ない人を奪い合うので、当然高くなってしまうのです。こうした人件費の問題も経営を圧迫しています。このように、昨今病院は厳しい状況に置かれているので、その病院がしっかり経営していけるような診療報酬の改定を行ってほしい、というのが前置きです。それを実現するための八つの要望としました。

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