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第21回【ロシア】ウラジオストクの医療

第21回【ロシア】ウラジオストクの医療

ロシアの概要

 ロシアはご存知のように世界一の面積(1707万5200km2)を持つ連邦国家で、人口も世界9位(2013年:1億4350万人)、国内総生産(GDP)は世界8位(2013年:2兆968億ドル)の大国である。全土を九つに分けた連邦管区の一つである「極東連邦管区」は、ロシア極東部を含む東シベリアを範囲とする。

 同管区の本部は、今回訪問したウラジオストクではなく、ハバロフスク地方の中心都市・ハバロフスクに置かれている。同管区の人口は約619万5000人(2016年)と、ロシア全体の約4%。同管区の人口は1991年のソビエト連邦崩壊後、急速に減少しており、2002年の約669万3000人と比べ、14年間で約49万8000人減少している。

 同管区の面積は約622km2で、ロシア全体の面積の約3分の1を占める。同管区は世界でも有数の人口密度の低い地域となっており、人口の75%が都市圏に集中している。

 今回訪問したウラジオストクは、ロシア海軍の太平洋艦隊の基地が置かれる軍港都市である。成田空港から週に3便の直行便があり、成田から2時間半で行ける。

 丘陵上の市街に囲まれるようにして金角湾が半島に切れ込んでおり、天然の良港になっている。街の中心部は金角湾の奥にある。南には東ボスポラス海峡を挟んで軍用地や保養所などのあるルースキー島がある。

 この島では、アジア太平洋地域の政治や実業界の代表が参加する第2回「東方経済フォーラム」が2016年に開かれ、安倍晋三首相も出席した。ウラジオストクはハバロフスクをしのぐ勢いで経済発展しているエリアである。

極東連邦大学医療センター(写真)

 同管区最高の高度医療設備を備えた医療センターとして2013年に開設された。同センターはルースキー島にあり、ウラジオストクの中心部からは離れている。

 病床数は220床と少ないが、電子カルテや、同管区内で1台という手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入している。

 平均在院日数は6日で、オペ室が9室、デイサージェリー(局所麻酔で短時間、少人数により施行可能な手術)の部屋が30室と、欧米の標準的な施設レベルには達している。

 その他、リハビリ用のベッドをホテルとして200室用意している。場所が場所だけに、救急医療はしていない。CTは持たずに(街で検査をするので不要とのこと)、PET-CTが1台、3TのMRIを1台所有している。

 ロシアでは20床を1単位として、看護師を最低3人配置するのが基準となっている。スタッフは600人、うち医師が200人、看護師が300人である。VIPルームの室料は4500ルーブル(1.5円として6750円)、1人部屋は3500ルーブル、2人部屋では2500ルーブルという。

 ロシアでは公立医療施設の医療費は無料で、病院が手術を一定数行うまでは国が負担し、それ以上の手術に関しては、病院の持ち出しになる予算制である。

 ちなみに、ダヴィンチを自費で受けた場合、胆嚢手術は7日間入院で3000ドル(韓国、シンガポールでは1万ドル)、前立腺がんは8日間入院で5000ドル(韓国、シンガポールでは2万ドル)と廉価だという。

 外国人の患者も来院するが、基本は英語対応で、その他の外国語の通訳はいない。

 また、同センターは自由診療を中心に行うリハビリが特徴的で、放水治療CO2風呂、電気風呂、塩の部屋、泥治療など日本ではスパで行われているのに近い施術が多かった。

北斗画像診断センター

 北斗画像診断センターは、北海道帯広市にある社会医療法人「北斗」が2013年にウラジオストクで開業した。

 事業の目的として、「脳ドックや心臓ドックを中心とした第二次予防医療の当地での展開」「日本の医療技術の海外移転及び当地での医療技術者の育成」「日本の医療機器の海外普及」の三つを掲げている。

 同センターは、建築関連の職員の保養所だった施設の一部を借りて開業し、内科、神経内科、眼科、循環器、整形外科、放射線科といった診療科をそろえている。

 放射線科では、難しい診断は遠隔医療で日本からのアドバイスを受ける体制になっている。人間ドックと画像センターが主であり、日本製の64列CT、1.5TのMRI、高機能のエコーを備えている。

 ハード面のみならず、ソフト面でもホルター心電図(胸に電極を貼り付け、携帯型の脈波記録装置で24時間計測し続ける心電図)の解析を日本で行ったり、画像編集ソフトが日本製であったり、電子カルテも導入したりして、ハード・ソフト面ともに日本の英知を集めて作られている。

 なお、ロシアでは医療データは患者自らが管理するということで、画像などのデータは袋に入れて患者に返すシステムになっている。

 ちなみに、ロシアではソ連崩壊後の1993年に、日本同様の国民皆保険制度が導入された。制度導入に伴い、2011年以降は全国共通の保険証が発行され、民間医療施設も申請すれば保険証での受診が可能となった(同センターもその方向で検討中)。

 なお、ウラジオストクでは、日本資本のみならず、オランダ資本の医療機関(ファルク・メディカルセンター、15床)など、外国資本や民間立の医療機関が増えたり、医療特区設立の動きが出てきたりしている。

最後に

 ロシア、特に極東区域の医療はまだまだ遅れている。日本に医療を求めに来る医療ツーリズムも盛んであるが、今回の視察でその理由が分かった。

 日露間では平和条約も未だ締結されていないが、日本とロシア極東部とは距離が近いので、北斗画像診断センターのように、医療を含めた経済などの協力の進展を望んで、この項を終わりとしたい。

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