SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

病院の未来像を描く「地域医療構想」

超高齢を迎える本の医療と介護を考える

 2018年度にスタートする第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画を見据え、病院医療はどうあるべきかを考える勉強会が開催された。主催は日本医療機能評価機構で、産業医科大学公衆衛生学教室教授の松田晋哉氏が講演した。福岡県の地域医療構想の策定に関わった経験を踏まえ、日本の医療と介護の在り方について考えるという内容だった。

 各都道府県で地域医療構想の策定が進められてきたわけだが、この作業について松田氏は次のように語っている。

 「地域医療構想を策定するために、データが公開されるようになりました。今までなら都道府県の医療計画を作る担当者しか見ることの出来なかった資料が、公開されるようになったわけです。規制する側と規制される側が、同じデータに基づいて議論できるようになったのですから、大きな変化だといえます。出てきたデータを元に、各医療機関が自分の問題として医療を考える必要性が生じたことになります。地域の医療機関がどのような機能を持っているのか、自施設がどのような機能を持つべきなのか、といったことを考えなければいけなくなったのです。これが地域医療構想で最も重要だと考えています」

 地域医療構想は、自施設の未来像を描くための絶好の機会と捉えるべきなのかもしれない。

慢性期医療に対するイメージを変える

 地域医療構想では医療機能別の必要病床数推計値が出されているが、この推計に最も大きく影響を及ぼしているのは人口構成だという。日本はこれから10年余りで、非常に大きな人口構成の変化に見舞われるが、それに伴って起きる変化を具体的に考えてみる必要がある。

 ここでは、慢性期とは、療養病床入院と介護施設と在宅の三つを合わせたものとなっている。どのような割合になるかは、地域によって大きな違いがある。地域医療構想のための調整会議では、それぞれの医療圏における慢性期の在り方を考えることになる。

 「慢性期に関しては、これから増えることが明らかなのに、対策は進んでいません。まずイメージを変えていく必要があるでしょう。多くの人が、急性期が最も偉くて、回復期がその次で、慢性期に向かうにつれて医療の格が落ちるようなイメージを持っています。そもそも医学部の教育が急性期中心で、慢性期の教育が十分に行われていないという問題もあります。しかし、超高齢多死社会となる日本で、慢性期の重要性が増していることは明らかです。慢性期に対する意識を変えていくことを真剣に考える必要があります」

 地域医療構想で大切なのは、データを元にきちんと予測し、その上で団塊の世代が75歳以上になる2025年の、それぞれの地域の医療の在り方を考えることである。そうして地域医療構想が策定され、そこから第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画が作られる。地域医療構想というと、病床削減ありきと考えられがちだが、そうではないと松田氏は言う。「間違ってはいけないのは、病床削減が地域医療構想の目的ではないということ。そうではなくて、地域の医療ニーズに対応するため、どのような医療提供体制が望ましいのかを考えることが第一の目標なのです」

 地域医療構想の策定に向け、福岡県ではどのようなことを考えたのか、県内の13医療圏の一つである京築医療圏(2市5町、人口約18万4000人)の例が紹介された。まず現状分析が行われ、それに基づいた将来の施策が考えられた。将来の施策としては、「回復期病床の確保のため、二つの基幹病院以外の病院には、回復期を担う病院への転換を考えてもらう」ことや、「慢性期については療養病床の削減が必要とされているので、その受け皿となる介護サービスを確保する」ことなどが盛り込まれている。

人口減少が医療機関に及ぼす影響

 なぜこうしたことが必要になるのかといえば、最も影響が大きいのは人口が減ることである。かつては地域から人が出ていくことで人口の減少が起きたが、これからは人がたくさん死亡することで人口が減っていく。こういった社会で何が起こるのかを具体的にイメージ出来ることが非常に重要である、と松田氏は言う。

 「京築医療圏でも75歳以上の後期高齢者が増えるのですが、その大半を占めるのは女性です。そこで、病院の患者さんの半分を、75歳以上の女性が占めるようになったらどうなるか、どういう医療が必要になるかを予想してほしいのです」

 こうした時代は外来患者が減少する。特に女性の外来受療率が低下するという。なぜなら、この世代の女性の運転免許の取得率は、男性の半分しかないからだ。自分を車で運んでいた夫が亡くなったり、運転出来なくなったりすると、“交通弱者”になってしまう。大都市と異なり、地方では車で通えなくなると、外来の受療率は途端に落ちてしまう。75歳以上の女性が半数を占めるようになると、傷病別の入院数も変化する。減少するのは分娩。増加するのは、肺炎、骨折、慢性心不全、脳血管障害の四つだ。

 「全国的に見ると、DPC病院に入院している肺炎患者の約4割は誤嚥性肺炎です。京築医療圏の基幹病院では、誤嚥性肺炎が半分を占めています。誤嚥性肺炎を起こすのは要支援や要介護の人で、認知症を持っていることもあり、多くは介護施設から送られてきています」

 急性期病院に誤嚥性肺炎の患者があふれてしまう状況を回避するためには、在宅関連医療の供給体制の包括的な整備が必要で、特に連携体制を改善していく必要があるという。

 もう一つ考えなければならないのが医療職の確保である。京築医療圏の病院と有床診療所の看護師の年齢を調べてみると、若い人もそれなりにいるが、高齢化が進んでいて、3〜4割を準看が占めていることが分かる。このまま10年、20年が経過したとき、現在の人数を確保するのは難しいと考えなければならない。

 「将来、患者の半数を75歳以上の女性が占めるようになった京築医療圏に、『この地域で看護の仕事をやりたい』と言って、大都市から来てくれる若い人がいるだろうか。いないのです。それならば、将来の医療・介護のためには、現在そこに住んでいる小学生、中学生、高校生の中から、そこに残って看護師や介護士になる人材が育ってくる必要があります。今から人材育成について考える必要があるのです」

 このように、地域医療構想の検討に当たって提供されている資料を丁寧に見ていくことにより、自施設が存在する地域の現状と将来の課題が明らかになってくる。その中で自施設がどのような方向に進むべきかを、具体的に考えることが出来るだろう。それこそが、地域医療構想の一番の意義だと松田氏は強調する。

 「データに基づいて未来像がしっかりと描けている地域と、それが出来ていない地域では、これから大きな差が付いてくるでしょう。各病院にもデータを分析し、活用する力が求められます」

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