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「認知症ケア」の院内体制を整える

基礎疾患とての認知が   者への

 日本では65歳以上の高齢者で認知症の人は、2012年時点で既に約462万人。団塊の世代が後期高齢者入りする2025年には700万人を超えると推計されている(厚生労働省研究班の調査)。実に高齢者の5人に1 人が認知症に該当することになる。

 こうした認知症高齢者の増加に伴って、急性期病院においても、認知症の患者が身体疾患で救急搬送されるなどして、一般病床で受け入れる例が増加している。あらゆる医療機関において、基礎疾患として認知症が併存している高齢者が増えている中で、認知症ケアと真剣に向き合うことは避けられない状況となっている。

「認知症ケア加算」は追い風

 こうした状況に鑑み、2016 年度の診療報酬改定では、「認知症ケア加算」が新設され、1年が経過した。この加算は、身体疾患のために入院した認知症患者を医療機関が適切に受け入れ、病棟における対応力とケアの質を向上させることを目的としている。認知症の悪化予防や円滑な身体疾患治療に向けた環境調整などに関する計画を立て、多職種チームによる認知症患者への適切な介入を評価しようというものだ。

 加算には、2段階あり、「認知症ケア加算1」は、認知症ケアチームを設置してチームと病棟スタッフが連携するなどの要件を満たす場合、1日に150 点(14 日まで、15日以降は1日30点)と評価が高い。一方の「認知症ケア加算2」は、病棟スタッフのみでケアを実施する場合に30 点(同、15日以降は1日10点)であり、5倍の差が付いている。

 「加算1」算定のためには、施設基準として「600時間以上の研修を修了した専任の常勤看護師」が必要で、専門看護師・認定看護師などで充足しなくてはならない。

 これに対して、「加算2」 は「9 時間以上の研修を受けた看護師を複数名配置」とされ、要件が緩い。

 なお、いわゆる「身体拘束減算」があり、身体的拘束を実施した日は、所定点数の100 分の60 に相当する点数になる。

 また、認知症と診断される患者の場合には、病棟の退院支援専従の看護師が退院困難な要因を把握して、家族や退院後のケアを行う介護関係者などと連携して退院支援計画を策定し、多職種共同で支援を行うことで、退院時に「退院支援加算1(一般病棟等)」600点を算定出来る。

 療養病床を要する慢性期病院など、従来から手間のかかる認知症患者の病棟でのケアに熱心に取り組んできた医療機関にとっては、「認知症ケア加算1」のような評価は大きな前進と受け止められている。「加算2」については、算定を目指す医療機関も多く、看護師に積極的に認知症ケア専門士の資格取得を進めてきている医療機関もある。

 ケアの充実のためには、まず何より認知症患者の尊厳を重視することが重要だ。

 また、認知症患者は、入院して環境が変わるだけで、認知症が悪化しやすい。ケアの鍵となる看護師が認知症ケアに対する知識や技術を確実に身に着けることは課題だが、日本看護協会の調査では、認知症認定看護師の配置などが、算定のハードルになっている状況が浮かび上がっている。

 同協会では、全国の病院の看護部長を対象に、「2016年病院看護実態調査」を実施し、4月にその速報値を発表した。同調査には、2016年度診療報酬改定後の病院の対応なども含まれており、「認知症ケア加算」についても調べている。

 それによると、有効回収数3549施設のうち、24.4%に当たる866施設で「認知症ケア加算」を算定していた。うち「加算1」が185施設(加算算定病院の21.4%)、「加算2」が681施設(同78.6%)となっている。

 加算を算定しない理由としては、「算定要件を満たしていない」が 73.0% に上った。 また、認知症ケア加算の算定要件を満たしていない理由(複数回答)では、「認知症ケアに関する手順書を整備していない」(36.2%)が最も多く、「認知症看護認定看護師等の配置が難しい」(26.5%)が、これに続く。

 その他に、「地域で看護師の研修受講機会が少ない」(21.6%)、「看護師以外の専門職の勤務体制確保が難しい」(20.8%)、「全病棟への看護師の配置が難しい」(19.9%)、「看護師に外部の研修を受講させる余裕がない 」という病院も10.1%あった。また、6.1%は、「算定要件を満たす入院患者がいない」と回答している。

看護師のスキルアップで早期発見

 もちろん、加算を第1の目的とするのではなく、社会的な要請として、ケアの充実こそが求められている。

 看護師がスキルアップすれば、軽度認知障害(MCI)の人を早期に発見することも出来る。認知症は早期に発見し、早期治療することで進行を遅らせることが出来ると期待されている。

 そこで病院経営者は、スタッフの教育にかかる費用の手当や、院内の体制づくりなどにも配慮していかなくてはならない、看護師が、認知症を抱える患者に手厚いケアを行うためには、看護に専念するための看護補助者を活用することも検討していかなくてはならない。

 2016 年度改定では、介護老人保健施設(老健)における「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」も新設されている。

 認知症がある患者の場合、従来はリハビリテーションの指示が通らないために算定要件にはならないとされていた。

 リハビリテーションを強化している病院ほど、認知症対応を遠ざけざるを得ず、例えば大腿骨頸部骨折を起こしながら認知症であるとして病院から断られたような高齢者などは、老健が受け入れ先となっていた。

 今回は、認知症ケアに力を入れてきた老健にも評価が加えられたのである。

 さて、「認知症ケア加算」は精神病棟では算定出来ないが、回復期リハビリテーション病棟も含めた病棟で算定出来るようになっている。道半ばとはいえ、厚労省では、認知症の急増に伴って、全病棟で「加算1」の算定を期待しているほど、並々ならぬ力の入れようである。

 認知症ケア加算は、診療報酬改定では、「重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点」に位置付けられている。

 厚労省は、2015年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定している。その大きな流れの中で、自院で認知症ケアを確立することは、医療機関を利するだけでなく、社会をも利することになるだろう。社会的使命といってよい。

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