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第13回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第13回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

2017年4月26日(水)17:00~18:30、衆議院第一議員会館国際会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第13回勉強会を開催いたしました。

詳細は、月刊誌『集中』2017年6月号にて、事後報告記事を掲載いたします。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。「本日のテーマは、病院経営、資金調達です。医療法人の資金調達は、株式会社の資金調達と異なり、ずいぶん難しい仕事になっています。私たちも、金融機関から資金を借り入れるときに、担保となるものがなかなかないとか、そういったことで苦労することがあります。医療機関ではどうなのか、専門家のお話をうかがいたいと思います」

続いて、当会国会議員団代表の原田義昭・衆議院議員にご挨拶いただきました。
「私はもともと経済産業省の出身で、中小企業庁の課長までやりました。企業にとって経営は重要ですが、医療機関にとっても同じだろうと思います。やはり事業として、しっかり推進していく必要があるということです。ただ、普通の企業経営とは違い、医療機関の経営には、特別な難しさや大変さがあろうかと思います。そのあたりについてしっかり勉強していただけたら、と思っています」

今回の講演は、日本経営グループの平井昌俊氏(代表取締役社長)と横井将之氏(ヘルスケア事業部部長)による「医療機関の経営、資金調達の最新動向~民間病院を中心として~」と題するものでした。
以下はその要約です。

病院経営をめぐる問題点(平井氏)
日本の人口は減少傾向にあります。
2025年に病床が不足するのは、関東の1都3県、大阪府、沖縄県だけで、それ以外では病床は過剰になります。
そこで、医療圏ごとに、病床の機能や数を計画し、各医療機関がどのような役割を担うのかを検討する地域医療構想が始まっています。
2015年現在、病院の経常利益率は、一般病院が1.5%、療養病院が6.3%、精神病院が3.5%です。ほぼプラスマイナス0の診療報酬改定が続いたことで、このような状況になっています。現在は超低金利ですが、今後金利が上がるようになると、利益はまたたく間に消えてしまうでしょう。そのような状況だと考えています。

病院の収入源は、7~8割が入院、2~3割が外来です。入院診療単価は、7対1看護など、マンパワーを手厚くすることで引き上げられてきました。ただ、7対1病床が増えすぎたため、その抑制に政策が変わってきています。マンパワーを配置していても、マッチする患者の受け入れができていなければ、収入は下がっていきます。

今後、高齢者が増えることで、入院期間を短縮し、病床の回転率を上げることが求められています。一般病院では、2010年に18.2日だった平均入院期間が、2015年には16.5日に短縮しています。それに伴い、病床利用率が低下し、ベッドの空きが増えています。患者数が同じで、入院期間が短縮すれば、ベッドの空きが増えます。新たな患者を受け入れなければ病床利用率は上がりません。大病院を中心に患者の受け入れが増えていますが、中小病院では新規患者の獲得が難しくなっています。

医業費用には、材料費(医薬品・診療材料)、人件費、委託費(医療機器・給食・寝具など)、保守委託費(電子カルテ・エレベーター・自動ドアなど)があります。医療機関にとって難しいのは、委託契約や保守委託契約を結ぶとき、他の病院がいくらでその契約を結んでいるのかという情報がないことです。

また、材料費、委託費、保守委託費などは、担当部署が交渉に当たりますが、この方々はプロではありません。そのため、過去の慣習に則った形での契約が行われていることが多いようです。消費税も大きな問題になっています。診療報酬は非課税ですから、材料費、人件費、委託費、保守委託費にかかる消費税は医療機関の負担となっています。

病院にとって最も大きな投資は建て替えですが、消費税は非常に大きな額になります。経営がうまくいっていない医療機関は、建て替えのときの投資金額に問題があるケースが多いのです。消費税のことも含め、慎重に検討していく必要があります。

資金調達手段の多様化(横井)
現在、医療機関向け貸出金が増えている背景には、病院が建て替えの時期を迎えていることがあります。ところが建築単価は年々上昇しており、2011年に1㎡あたり17万5000円だった建築単価が、2015年には27万1000円になっています。坪あたり89万4000円です。

2017年の現在は、坪100万円を超える状況になっています。これだけ建築単価が上がると、1床あたりの延べ床面積は狭くなります。坪あたり100万円を超える現在、1床あたりの延べ床面積が60㎡を切らないと、事業計画が成り立ちません。
資金調達の方法には、いくつかの段階があります。

経営が健全な医療機関は、利益の積み上げによる「内部留保」で資金を調達します。
借り入れが必要な場合には、「福祉医療機構」と「民間の金融機関」から借ります。
医療機器などはリースを活用したり、内部留保で購入したりします。
これが民間の医療機関の通常の資金調達の方法です。最初で信用が足りない場合には、「信用保証協会付きの融資」で金融機関から借り入れます。
次の手段としては、「金融機関以外のリース会社」などからの借り入れとなります。

この場合、3~4%程度の金利がかかります。その他に、理事長の個人資産を運転資金に入れる、関連会社から資金を補填する、という方法もあります。
資金繰りが苦しくなると、「信用取引」という方法も使います。卸の業者と売掛期間や買掛期間を調整し、資金を捻出するという方法です。
それでも苦しい場合には、金融機関と相談し、「返済スケジュールの見直し」をしてもらう、という形をとることになります。
「シンジケートローン」という方法もあります。規模が大きく、金融機関が1行だけでは難しい場合に、複数の銀行が集まって融資します。手数料が高いのが問題で、財務制限条項が厳しいので、計画がうまくいかなくなった場合には自由度が低くなり、高い違約金を払って解約というケースもあります。

「診療報酬債権の流動化」は、2ヵ月後に入ってくる診療報酬をすぐに現金化する方法です。一度始めると、なかなか戻れないという問題があります。
「不動産の流動化」は、土地に含み益があり、病院が債務超過で、資金調達が困難なケースでよく行われます。土地の含み益を顕在化することで債務超過を回避できるので、銀行は貸せるようになります。
「劣後ローン」は、メイン銀行が全額を貸せないようなときに利用できます。期日一括返済ですから、7年くらいが多いのですが、その間は金利だけ支払えばよくなります。ただ、金利が8%くらいになるので、金利負担が非常に重くなります。

資金調達の最新動向
国土交通省が進めている「ヘルスケアリート」があります。不動産を活用し、幅広く投資家からお金を集め、資金調達をより多様化していこうというものです。制度はできましたが、現在は金利が下がっているので、あまり意味がなくなっています。
「医療法人債」は2004年にスタートしています。現在、ほとんどは金融機関が一括で受け入れるケースです。借金が残っているけれども、建て替えをする必要があるという場合に有効です。
劣後ローンと違い、金利は少し高くなる程度です。
2017年4月から、「地域医療連携推進法人」というものができ、新たに4法人が認定されています。
医療法人の上にホールディングの法人を作るというものです。現在は、医療法人が別の医療法人に貸し付けや出資をすることはできませんが、地域医療連携推進法人に貸して、そこから貸すということはできる可能性があります。
また、地域医療連携推進法人が資金を調達し、それを医療法人に貸すこともできます。これからは、地域医療連携推進法人を活用した資金調達が行われるようになると考えられます。

講演後には質疑応答があり、次のような発言がありました。

尾尻
「2007年から持ち分のない医療法人ができましたが、医療法人にとってそれはメリットがあるのでしょうか、それともデメリットがあるのでしょうか」

横井
「医療法の改正で、持ち分のない医療法人が出てきた件ですね。新たに医療法人を作る場合は、持ち分なしにしなくてはいけない、ということです。既存の病院、約80%は持ち分ありの医療法人です。メリットもデメリットもありません。ただ、オーナーとしては、今までは持ち分が自分だから個人保障に入っていたけれど、持ち分がなくても、リスクが個人なのはどうしてなのか、と言いたくなるところでしょう。持ち分のない医療法人や社会医療法人の理事長は、連帯保証を外していく流れになっています」

真野俊樹(多摩大学医療・介護ソリューション研究所所長・教授)
「個人債務保障をなくせという話がありますが、実態としてそれはあるのですか。新規の病院ではつけているところが多いと思いますが」

横井
「実際に保障が外れていっているのは、経営のよかった医療機関です。そういうところのオーナーの連帯保証を外す方向でお願いすると、かつての銀行の答えはノーでしたが、ここ1~2年は、外す方向になっています。それは実感しています。ただ、新規開業の場合にはつきますね」

荏原太(医療法人すこやか高田中央病院院長)
「私が院長で、弟が理事長をしている小さな病院です。父親が亡くなりましたので、相続の面も考え、私は持ち分なしできたのですが、理事長は持ち分ありを選びました。個人病院で持ち分あり、持ち分なしについては、どうするケースが多いのでしょうか」

横井
「メリット、デメリットを考えますと、持ち分なしにすると、将来、相続税がかかりません。その代り、贈与税がかかります。その贈与税をいかに小さくするかを考える必要があります。認定医療法人という制度ができました。まだ確定ではありませんが、認定医療法人になると贈与税はかからない、という形になるだろうと考えられています。そうすると、持ち分なしにしたほうが、圧倒的にいいのです」

楠岡英雄(独立行政法人国立病院機構理事長)
「その件についてですが、認定医療法人になるのに、今までは非常に条件が厳しかったのです。地域医療計画等に病院名が記載されていないといけないなど、厳しい条件がありました。それが今回、かなり緩和されました。税金の話がありますが、財務省のほうでも話はついています。その話がついているので、厚生労働省も今回の医療法改正にそれを入れているのです。厚生労働省の医療部会でも、そのような説明を受けています」

大嶋耐之(金城学院大学薬学部教授)
「土地を貸して敷地内薬局を作るという方法と、地域医療連携推進法人による薬局の子会社化という方法が考えられます。どちらがいいとお考えですか」

横井
「地域医療連携推進法人が薬局を作っても、せいぜい20~30店舗でしょう。その規模での経営が、他の調剤薬局に比べてどうなのかと考えると、ちょっと弱いのではないか、と個人的には考えています」

平井
「薬剤師が患者宅を訪問することが地域の中で必要だと考え、その目的で地域医療連携推進法人の中に薬局が必要だ、と構想している経営者はいらっしゃいます」

篠原裕希(医療法人篠原湘南クリニックグループ)
「地域医療構想で、神奈川県には回復期病床が1万床足りないことになっています。西の方では余っていることもあり、進出が始まっています。特に回復期リハ病床は利益率がいいということで、ビジネスモデルとなって、セットで進出してきます。神奈川県のいくつかの病院が買収されています。これについて、どうお考えですか。もう1つ、医療・介護分野は人手不足なので人材派遣会社が介入し、そこに莫大な金額を支払っています。これについては、どうお考えですか」

横井
「回復期は利益が出ているので、ビジネスモデルとして、回復期リハ病床、通所リハ、訪問リハとつなげるパッケージになっています。古い病院をM&Aして、回復期リハ病院になるというのが、1つのモデルとして出来上がっています。地方ではどんどん人口が減っているので、地方から都市部へという流れが顕著になっています。人材派遣会社の件は、莫大な金額を払っているのは事実で大きな問題です。ただ、7対1病床が絞り込みによって減ってきたため、紹介会社に頼らず採用できる病院が増えているのではないかと実感しています」

大川伸一(独立行政法人神奈川県立がんセンター院長)
「それは看護師の話だと思いますが、我々も苦労しまして、派遣会社を使うということもしていました。ただ、去年くらいから、少し採用しやすくなってきた感じはあります。それが今後も続くかどうかはわかりませんが」

尾尻
「医業未収金がかなり大きくなっています。この問題について、先生方はどのようにお考えですか」

楠岡
「国立病院機構では回収業者も利用しています。回収した額の何%と、けっこうな額を取られますが、ゼロよりはましということです。それから、事務の職員が少額訴訟について勉強して対応しています。患者さんのほうは、病院から言われるより、弁護士から言われるほうが、払わなければという気になるようなので、弁護士にもお願いしています。また、かつては高額療養費の対象が入院だけでしたが、外来も対象となったので、外来の抗がん剤治療などで高額になるケースでも、高額療養費制度を利用するようになり、未収金は減ってきています。ただ、救急医療はいまだに未収金が多く、最近では外国人患者の支払いトラブルが増えていて、問題となっています」


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