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第12回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第12回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

2017年3月22日(水)17:00~18:30、衆議院第一議員会館の国際会議室で「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第12回勉強会を開催いたしました。
詳細は月刊誌『集中』2017年5月号にて、事後報告記事を掲載いたします。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。
「本日は、講師として厚生労働省医政局総務課医療国際展開推進室の三宅邦明室長をお招きしました。日本の医薬品、医療機器の海外展開によって、世界の人々の健康増進に貢献するとともに、外貨を獲得することができます。そうした取り組みの現状、可能性について考えたいと思います」

続いて、当会国会議員団会長の原田義昭衆議院議員にご挨拶をいただきました。
「20年近く前ですが、私は厚生省(当時)の政務次官を務めた時期があります。そのころ驚いたのは、これだけ技術が発展した日本が非常に多くの医薬品、機器を輸入していることです。その後、厚労省と経産省の交流促進などにより一定の成果が生まれていますが、まだまだやれることは多いと思っています」

今回の講演は、三宅邦明(厚生労働省医政局総務課医療国際展開推進室室長)による『医薬品・医療機器・医療産業の海外展開の方向性』と題するものでした。
以下は、その要約です。

厚労省で医薬品や医療機器について、産業の国際展開という観点で仕事をしている者はほとんどいません。しかし、アベノミクスの流れの中で、産業としての医療を海外展開しようという方向性が示され、3年ほど前に医療国際展開推進室が設置されました。
日本の医薬品市場は9.6兆円ほどの規模があり、OTCがその1割弱を占めています。
世界的にも成長を続けており、最大市場は米国、2位が中国、3位が日本です。
一方、供給側の企業はどうか。本社所在地別の国別売上高シェアを見ると米国が4割超、次いでスイス、英国、日本の順になります。
日本の製薬企業は、世界全体の7%を占めています(2015年)。

ただ、医薬品の主戦場は変わりつつあります。世界の大型医薬品50品目に占める低分子医薬品の比率は、2000年代後半には7割を超えていました。
しかし、徐々に低下して2015年には約半分に減っています。代わりに伸びたのがバイオ医薬品です。50品目に占めるバイオ医薬品の比率は2000年代に3割に達していませんでしたが、2015年には50%弱まで伸長しています。
バイオ医薬品の分野で、日本の製薬産業は出遅れたといわざるをえません。

貿易統計を見ると、医薬品の輸入と輸出は大きな差が生じています。2000年以降、輸入額は一貫して伸び続けていますが、輸出額はほぼ横ばいです。
2015年には輸入2.9兆円に対して、輸出は4600億円余り。
輸出入の差は2.6兆円以上に達しています。

医薬品についての輸入超過をどのようにとらえるべきでしょうか。
日本の製薬企業の中には製造拠点を海外に移し、生産した医薬品をそのまま海外で販売するケースもあるので、輸入超過だけを見て「日本企業の力が弱い」というのは一方的だと思います。

医薬品というモノではなく、パテントなどの技術移転に着目すると、受取額から支払額を差し引いた技術貿易収支は3400億円以上のプラスとなっています。
日本の製薬産業の技術力を考えると、世界で勝つための要素は持っているといえるのではないでしょうか。
ただし、欧米のグローバルな製薬企業との体力的な差をいかに埋めるか、バイオ創薬にいかにシフトするかといった課題に対する取り組みは、今後とも必要だと思います。

次に、医療機器産業です。
日本の市場規模はここ十数年、着実に拡大しています。世界市場を見ても同様。
2016年に約3400億ドルだった世界の医療機器市場は、2020年には4300億ドル超に成長するとの予測があります。
世界の医療機器企業の中で、日本メーカーは20位くらいにようやく名前が登場する程度です。この点については、医薬品産業と大きな違いはありません。

医療機器の輸出入状況については、診断系機器では輸出が輸入を上回っていますが、治療系機器は逆に輸入のほうが非常に多い。
分野別で見ると、心臓ペースメーカーなどの生体機能補助・代行機器、治療用または手術用機器、鋼製器具、眼科用品及び関連製品といった分野で輸入品が強く、国内市場に対する輸入の割合が7割前後を占めています。

もう少し具体的に見ると、人に対する侵襲性が高い冠動脈狭窄開通用ステント、人工関節などは輸入依存。これに対して、X線CT装置や内視鏡などの診断系機器は、国内市場に占める輸入額の割合が相対的に低いといえます。
近年は治療系機器の国内市場が拡大していることから、輸入超過の改善に向けた治療系機器の国内開発の推進が必要です。
医療機器における貿易収支は、輸入が輸出を上回る状況が続いています。
近年、輸出は5000億円程度で推移。一方の輸入は2000年前後に1兆円ほどでしたが、2014年には1兆3000億円以上に達しています。

「日本再興戦略 2016」において、医療は成長戦略の担い手の1つと位置付けられています。医療におけるイノベーションを推進するとともに、グローバル市場の獲得及び国際貢献を積極的に進める。
こうした政策的な方向性の中で、厚生労働省に設置された医療国際展開推進室は大きな役割を与えられています。

冒頭、医療国際展開推進室が厚生労働省の中でやや特異な存在であると述べましたが、そこには2つの意味があります。第1に、医療を産業としてとらえ、その育成を目指していること。第2に、どちらかというと国内に目を向けることの多い厚生労働省の中で、海外に目を向ける仕事であること。国際的な活動というと、WHOなどマルチの場での活動が多かったのですが、医療国際展開推進室はバイの国際関係の中で日本の役割を重視しています。

医療の国際展開に向け、私たちは様々な事業に取り組んでいます。新興国などでの医療分野のプロジェクトについての現地調査、海外の医療従事者の育成支援など。専門家の派遣、あるいは研修生の受け入れを通じて、公的医療保険制度や病院管理ノウハウ、医療機器操作技術、医療情報システムなどの知見を提供しています。

講演後に、冨岡勉衆議院議員と山口和之参議院議員からご挨拶をいただきました。
冨岡氏は「医薬品や医療機器の海外輸出に積極的に取り組んでいきたい」、山口氏は「現場の声を聞きながら、日本発の技術やノウハウが世界に展開できるよう努力したい」と語りました。

続いて質疑応答が行われ、次のような発言がありました。

原田
「それぞれの国は独自の薬事規制を持っています。したがって、欧州や米国の製薬企業、医療機器企業も輸出には苦労していると思います。この点では日本企業と同じ条件だと思いますが、どうやら欧米企業はかなり先行しているようです。その理由はどのあたりにあるのでしょうか」

三宅
「おっしゃる通りだと思います。日本企業がグローバル展開にやや遅れたこともありますが、米国のFDA、欧州のCEマークなど、欧米は国際標準づくりの点でも先行しています。また、言語の壁も大きいのではないかと感じます」

近藤達也(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構理事長)
「医療機器についていえば、国家認証は日米のみです。
CEマークは第三者認証ですから、いわば民間車検のようなもの。
CEマークを取得したとしても、保険会社が認めなければなかなか医療機関では使えません。
日本の国家認証は信頼性が高いということで、メキシコなどでは日本で認証されたものであれば手続きだけで迅速に承認されます。日本の医薬品と医療機器に対する国際的な評価は高まっており、今後、世界に対してより大きな貢献ができると思っています」

荏原太(医療法人すこやか高田中央病院院長)
「医療機器や医薬品の値付けについて、そのプロセスの透明性についてはどのように考えていますか」

三宅
「日本の医療機器、医薬品の値段のつけかたについては、世界的に透明性が高いと評価されていると思います。かつては大きな課題だった内外価格差についても、海外のものと比較することなどにより、大きく改善されました。ただ、プロセスが見えにくいというご意見はあるかもしれません。より透明性を高めるための努力は必要だと考えています」

ナビ シーラーズィ(在日イラン・イスラム共和国大使館経済部公使参事官)
「日本とイランの間では様々な協力分野があり、医療は重要な柱の1つです。日本の医療における海外展開を考えたとき、イランの人々のニーズと日本の技術をいかにマッチングさせるかが重要。たとえば、イランではがんの早期発見が難しく、見つかったときには末期がんになっているケースが多い。こうした課題やニーズに対して、日本の高い技術力を生かしたCTやMRIなどは非常に有効だと思います。日本の医療ノウハウの海外展開、イランへの展開に対して大いに期待しています。その際、単に完成品を輸出するだけでなく、病院の運営ノウハウをはじめとするソフト面でのサポートも重要だと思います」

三ツ林裕巳(衆議院議員)
「医療機器を求めている国々は多い。様々な手段を通じて、こうした地域への積極的な展開を図るべきだと考えています」




井手口直子(帝京平成大学薬学部教授)
「私は、サイバーダインの研究開発プロジェクトに参画しています。介護や医療用のロボットが国内医療機関等でさらに普及させたいと考えていますが、現状では課題も多い。政府には、診療報酬を含めたサポート体制の強化を求めたいと思います」



瀬戸晥一(一般財団法人脳神経疾患研究所 附属総合南東北病院)

「先端医療機器の輸出を伸ばそうと考えたとき、それをメーカーの頑張りだけに期待するのは現実的ではないと思います。“病院丸ごと輸出”を考える必要がありますが、実際にはほとんど行われていない。医療人だけの発想では限界があります。企業や政府の支援が必須だと思いますが、これが極めて得にくいのが日本の現状だと思います。このあたりに風穴を開けていく必要があるのではないでしょうか」

土屋了介(地方独立行政法人神奈川県立病院機構)
「GEはインドネシアのCT市場を席捲しています。GEをはじめとする海外勢は、ローカルの事情にマッチしたものを売るのがうまい。日本の医療機器企業は非常に優れた技術を持っています。研究開発も重要ですが、商社と組むなど工夫しながら、いかに売るかというところにも目を向けていただきたいと思います」

 

本謙一(NPO法人海外医療機器技術協力会)
「イランはすでに2回訪問しています。イランの保健省と海外医療機器技術協力会(OMETA)との間では、医療機器情報センターをつくろうという覚書を締結しました。イランでは10万ベッドが不足しているといわれ、医療機関の拡充が求められています。そこには、大きな需要があります。こうした取り組みを進めるためには、医療情報やメンテンンスノウハウの提供が欠かせません」

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