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制吐剤で突然死-疫学調査でも

はじめに
 ドンペリドンとメトクロプラミドは、神経遮断剤系の制吐剤で、神経遮断剤に共通するQT延長作用があり、心室頻拍から致死性不整脈であるTorsades de pointesを生じ得る。

 欧州では、両剤とも、有効性が乏しいことや、深刻な害作用が明らかになり、使用に制限が設けられるようになってきた。ドンペリドンは心毒性のために使用が制限され、メトクロプラミドについても2013年にレビューされ、使用制限がなされている1)

 一方日本では、ドンペリドンは錐体外路症状の少ない制吐剤として小児にも承認されている。しかし、注射剤は心毒性による突然死のために中止となった。メトクロプラミドは日本では1965年から使用されており、ジストニア(筋緊張異常反応)やアカシジア(静座不能症)、パーキンソン症状、悪性症候群など錐体外路症状が多い。

 ドンペリドンの過量で突然死が生じ得ることは添付文書に記載があり、一応認識されてはいるが、常用量でも生じ得ること、CYP3A4阻害剤との併用による危険性の増大に関する記載はない。また、メトクロプラミドでも突然死が生じ得るが、添付文書には記載がなく、あまり知られていない。

 最近、台湾2)と英国3)から、両剤と致死性不整脈および突然死との関連を示す大規模な調査結果が報告された。そこで、薬のチェックTIP69号(2017年3月)4)で取り上げたので、概略を紹介する。

台湾研究
 台湾研究は、不整脈25,356人、うち突然死6,152人を対象に、症例-クロスオーバー法により実施された。不整脈を発症した91〜120日前の期間(コントロール期間)に比較して、発症直前の30日間(症例期間)におけるドンペリドン服用オッズ比を求めたものである。両時期とも服用した人や両時期とも非服用であった人は除き、症例期か、対照期のいずれかだけで使用した人の服用データを比較した。

 その結果、心室性不整脈の調整オッズ比は、ドンペリドンの常用量(1日30mg以下)で1.51(95%CI: 1.36-1.67)、常用量超では1.98(1.50-2.63)であった。突然死は、常用量で1.71(1.36-2.14)、常用量超は2.24(1.16-4.33)であった。メトクロプラミドはドンペリドンと差はなかった。

 ドンペリドンの不整脈リスクは、CYP3A4阻害剤との同時併用だけでなく、CYP3A4阻害剤の中止後7日以内まで影響があった。 

英国研究
 英国研究は、70万人のコホートを用い、病院外心臓突然死3,239人を症例とし、コホート内でマッチさせた対照例12,572人と比較したnested case-control(コホート内症例-対照研究)である。

 ドンペリドンは突然死の15日以内の服用に限ると調整オッズ比が4.06(1.55-10.64)、メトクロプラミドは4.31(2.33-7.98)であった。

 感度分析として実施された症例-クロスオーバー法でも同様の結果を得た。

実地診療では
 ドンペリドン及びメトクロプラミドとも、嘔気や嘔吐に対する効力に比し、害が大きい。日常診療では用いるべきでない。


参考文献
1)  Prescrire International 2016: 25(175): 238-40
2) Chen HL et al. Pharmacoepid Drug Saf 2015; 24(8): 841-8.
3) Arana A et al. Drug Saf 2015; 38(12): 1187-99
4) 薬のチェックTIP.2017:17(2):39-41

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