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第106回 共謀罪

第106回 共謀罪

 「地主の屋敷に忍び込んでよぉ、……金庫の在りかを知っているんだ」

 居酒屋で居合わせた隣の客に憂さ晴らしに冗談でこんなことを話しただけで、永井藤作は犯罪者と見なされ逮捕され、拷問に掛けられる。映画「橋のない川」の一シーンだ。

 犯罪を空想しただけで犯罪。

 戦前の恐ろしい法律だ。

 恐ろしいのは空想していないのに、空想したことにされる事態だ。

 権力者にとって不都合な存在、気に入らない輩は罪を被せられ、どんどん取っ捕まる。

 ならば、小説やドラマの作者も片っ端から取っ捕まる。

 何も言えない。何も出来ない。誰とも話が出来ない。誰も信用出来ない——。そんな世の中になる。

 だが一番心配なのは、この共謀罪を共謀して法案として国会に提出して賛成した国会議員の皆様だ。

 共謀罪は社会を崩壊させる悪い法律なのだから、法案が成立した時点で立案、そして議場で賛成票を投じた国会議員はみな「共謀罪」で逮捕されることになる。

 悪い法律を作ったのだから、悪いことを企んだのだから悪い奴なので、自分達が作った法律で罰せられる、という何とも皮肉というか、喜劇が展開するのである。

 漢籍を尋ねれば、秦の商鞅がある。自ら作った法律で、憤死の運命を辿った。

 さて、共謀罪は戦前のレトロな法律の復刻なのだから当然、「拷問付き」だろう。水責め、逆さ吊り、爪はがし。

 そして、居住地周辺住民からは「非国民」呼ばわりされ、村八分だ。

 東京オリンピックで利権独占を企んでいる輩もお縄になることを期待する。

 ゲス議員どもは軒並み逮捕されることになることを国民は期待する。

 この嫌疑に合理的に反論することは出来まい。

 これは大変に気の毒だ。

 それにしても、辺りを見回すと、国会議員以外に悪いことを企んでいる奴等もいっぱいいそうだ。

 ある友人は、

 「共謀罪に問われるのは新専門医制度を画策している奴等じゃないか」

 理由を聞くと、

 「医療現場を骨抜きにしょうとしている役人と共謀して、自分達は学会(学術会議)の利権を拡大しようとする実に利己的な計画で、医療現場で患者を毎日診ている医者のことなんか見向きもせずに、患者を一切診ないで自分は偉いと思い込んでいる奴等が勝手に非現実的な制度を現場に押し付けようとしているんだよ!」

 事実なら、一網打尽に共謀罪で逮捕されるべきだ。

 大学に人殺しの研究をさせて防衛予算をばらまき、キック・バックをせしめようとしている悪巧みも「共謀罪」でお縄にしてほしい。

 どうせ大した研究成果など期待していないくせに、金だけはかけよう、公益法人を二つ三つ増設しよう、と企んでいるに違いない、と想像するからだ。

 権力に盲従し、何も考えず、ただ目の前の日常に没頭する。そんな生き方が望まれているのだろう。

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