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「医療ファクタリング」のメリット・デメリット

用のトは額」

 医療機関では、医療費の患者負担分は療の都度に徴収出来るものの、保険負担分が手元に来るのは翌々月になってからとなる。しかしこの間に、一時的に〜、あるいは急に〜といった要件が発生して、すぐにまとまった資金が必要になった場合の調達法の一つが、診療報酬債権を“担保”として現金を得る診療報酬債権ファクタリング(以下、医療ファクタリング)だ。

 その仕組みは、ファクタリング事業者(多くがノンバンク)という存在を介するもので、事業者が医療機関から診療報酬債権を購入して、手数料や利率などを差し引いた現金を医療機関に提供する。ただし、ファクタリングを利用する医療機関側にも条件がある。税金や社会保険料を滞納していないことだ。

 診療報酬債権を購入した事業者は、国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金に対し、支払先が自社に変わったことを通知する。

 医療ファクタリングに詳しい富山綜合法務事務所(東京・港区)の特定行政書士、富山洋一氏は「都道府県によっては、『これはどういうことですか』という反応があることもありますが、どの組織が診療報酬を受け取るかは診療側の自由ですので、『医療機関の口座ではないから払えない』ということはありません」と債券の優良性を強調する。

使用目的は問われない

 富山氏のところには医療機関側からファクタリングに関する問い合わせが多く寄せられるという。

 「理由は聞いていませんが、年2回のボーナス支給時は特に増えますね。あとは移転のために急な資金が必要というケースもあります。よく事情を聞いて、銀行への融資の相談がいいのか、ファクタリング会社を紹介するのがいいのかを判断して助言します」と言う。

 一方で、「他のファクタリング会社を使っているが、金利が高いので乗り換えたい」という相談もあるという。

 利用する医療機関側のメリットをまとめると、短期間でまとまった資金が手に入ること、診療報酬のみが債権であること、使用用途を問われないことなどだ。

 さらに、仮に債務超過であっても資金を得られることも大きい。銀行相手の場合そのようなケースでは融資は望めない。「ファクタリングに頼る時期には土地などは既に金融機関他の担保になっているケースがほとんどです」と富山氏。

 医療法人は一般企業と比べ財務面の情報開示が遅れている上、経営主体によって会計基準が異なるため、財務諸表だけでは金融機関が必要とする情報を把握しづらい。

 ある病院関係者は「医療法人を金融機関が融資しづらい制度にしてしまった国の責任もある」と批判する。

 一方、ファクタリングにはデメリットもある。金利が高い点だ。

 「銀行からお金を借りる時は金利が10%近くになるということはないでしょう。しかし、ファクタリングは通常7〜8%です。日常的に取引のあるリース会社がファクタリング業務を行った場合なら5%ほどとなるでしょうが、それでも高いですよね。しかし、どうにか資金を手当てしたい、ファクタリングを頼りにしたいという切実な医療機関経営者もいるのです」(富山氏)。

 どのような医療機関がファクタリングを利用しようとするのか。

 「キーワードは資金調達のスピードと金額です。大病院は取引銀行や大学などの母体から資金調達を受けられるので、ファクタリングは利用しません。それが出来ない診療所の経営者や、病院でも100〜150床レベルの施設で利用が増えています。この規模は収支的には一番厳しいラインに立っているからです。調達できる金額は、病院の収入の3.5カ月分から4カ月分が可能でしょう」(前同)

 また、ファクタリングを利用するのは、歯科診療所と介護事業者に多いという。特に介護事業者は、金融機関との取引が難しいためだ。倒産リスクが高いので、ファクタリングでも金利が8〜9%になってしまう。歯科診療所も倒産が多いので、「自転車操業に近い印象のところもある」と富山氏は言う。

レセプト債事件は異例なケース

 そのような中、最近明るみに出たのが、ファンド運営会社、オプティファクターの破産と関係者の逮捕劇だ。

 オプティファクターは診療報酬債券を金融商品にした「レセプト債」を、「安全性の高い商品」などとして一般個人向けに販売したことが問題となった。投資家には魅力的に映ったが、同社の運用実態が明るみに出てからは数千人の顧客が償還を受けられない可能性があるとされる。

 富山氏は「あれは極めて稀な事例」と言う。「ほとんどのファクタリング会社の成り立ちは、企業が自社の内部留保を運用するためにノンバンク子会社などを設立するといった形式です。銀行が親会社になっていることもあります」と述べ、オプティファクターのような他者資金型と、自前資金型の違いを強調する。

 さらに、「事件でファクタリングが下火になるかと思ったら大間違いで、『新しく融資してくれる業者を探したい』という医療機関が続々と出てきたり、既存の業者が『これを機に取引先を広げたい』と医療機関に営業攻勢をかけたりといった流れになっています」と、ファクタリングの潜在的な需要と供給の多さを指摘した。

 医療機関の資金調達に関して、「ファクタリングが何よりもいいとは思いません。利用する際のポイントは、必要なタイミングと必要な金額です。例えば、『10日後に欲しい』という状況では銀行から融資を受けることは無理ですが、ファクタリング会社ならば対応が可能なこともあります」と話す。

 医療ファクタリングを利用している医療機関に対しては、「ファクタリングはある意味“禁断の手法”です。そこに足を踏み入れるか、あるいは医院を売却してしまおうか、というレベルの選択肢になることもあります。そして、いったんファクタリングを止めると、2〜3月分の診療報酬がゼロになってしまいます。そこで自転車操業的に続けざるを得なくなるケースも見られるのです。1回手を出すと抜けられない、止めるに止められないといった面もあります」。

 また、医療ファクタリングは個別の医療機関の資金調達手段としてだけではなく、医療機関の統合・再編にも関わるってくると言う。

 「今後は、資金的に余裕のある医療機関が中小医療機関に対して診療報酬債権を材料に傘下に収めていくことも増えてくるでしょう。結局、資金力のあるところがお金を肩代わりして強くなっていくのです」と富山氏。

 自由になるまとまった資金が短期間で手に入るファクタリングだが、以後の計画も考えておかないと、逆に自院の存続を危くするリスクも抱えることになる。

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