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第101回 「森友学園」疑惑で国会の雰囲気が一変

第101回 「森友学園」疑惑で国会の雰囲気が一変

 トランプ米大統領就任のドタバタが少し落ち着いたと思ったら、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害されるなど国際社会は今年も騒がしい。安定感を誇る安倍晋三政権も大阪市の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)の小学校開設を巡る疑惑が夫人や元閣僚に飛び火し、国会がざわついている。焦眉の東京都議選まで3カ月余り、与野党の攻防が激しくなってきた。

与党幹部「変な所から弾が飛んできた」

 「変な所から弾が飛んでくるもんだよ。大阪ローカルの話があれよあれよという間に国会論戦の主要テーマに躍り出た。国会審議は乗り切れるだろうが、安倍首相の昭恵夫人、鴻池・元防災担当相と出てきてしまったから、国民のイメージは悪いよな」

 自民党幹部は国会の雰囲気が変わってきたとぼやく。年初、国会審議は順風とみられていた。しかし、すぐさま文部科学省の天下り問題が浮上し、何とか予算成立にめどを付けたところに国有地の売却を巡る疑惑が持ち上がった。

 問題は、国土交通省大阪航空局が所有していた大阪府豊中市の国有地(評価額9億5600万円)を同学園に1億3400万円(坪約5万円)で売却したというもの。

 地中のごみ撤去にかかる費用を差し引いたとはいえ、国民の資産である国有地を8億2200万円も値引きしたのだから、疑問をもたれて当然だが、野党の矛先は安倍首相に向いていた。昭恵夫人が開設予定の小学校の名誉校長になっていたからだ。売却を原則とする国有地の取引で、異例の借地契約が結ばれていたことなど不自然な事案も次々に明らかになり、政治介入による裏取引との疑念が広がった。

 政府・与党を攻めあぐねていた野党にとっては千載一遇の好機で、現地に調査チームを派遣し、国会で安倍首相らを激しく問い詰めた。安倍首相は夫人を含めて「一切の政治的な働き掛けはない」「立証責任は追及する側(野党)にある」と抗弁したが、森友学園が経営する幼稚園で、園児らが教育勅語をそらんじ、安倍首相や安全保障関連法制を礼賛するなど戦時中のような光景が放映され、「(教育の現場として)好ましくはない」としぶしぶ認めざるを得なくなった。

 籠池氏は草の根右派組織「日本会議」の主要メンバーだった。国家主義的な思想の持ち主で、安倍政権の確信的な支持者だが、どうも「首相の威」を借りて、事業をうまく進めようとしていた節がある。講演を頼まれれば、昭恵夫人も無碍には断れない存在だったのだ。

 さらには、籠池氏が鴻池氏とその事務所に陳情を繰り返していたことが、共産党が入手した内部文書で発覚。不穏を察知した鴻池氏が緊急記者会見で関与を否定する事態になった。

 この会見で、鴻池氏が発したある言葉が話題になった。「コンニャク」である。政界で100万円を意味する隠語だが、さっそくワイドショーネタにされ、心配性の自民党若手からはこんな声も漏れた。

 「差し出された封筒を突き返したとだけ言えばいいのに、『コンニャクであったかも……』は余分だ。隠語を知らない世代には、コンニャクは裏金とか闇金と一緒。自民党はやっぱり金権なんだと逆に勘ぐられてしまう」

 攻め手の野党側は意気軒昂だ。選挙協力を巡る思惑の違いから、ぎくしゃくしてきた民進党、共産党は疑惑追及で足並みをそろえ、野党全体に勢いが生まれてきた。鴻池氏の次の獲物を虎視眈々と狙っている。

 国会やメディアの追及を受け、籠池理事長は辞任を表明し、の土地は政府が買い戻すことになったが、与党幹部の表情は冴えない。

 「土地取引が無くなったとしても、国民の胸にはもやもやしたものが残る。だって、950円のものを130円で売ったら、裏に何かあるんじゃないかと思うだろ。『李下に冠を正さず』なんだよ。何だか怪しいと国民に思われたら、じわじわとダメージを受ける。これは怖い」

「小池新党」躍進で民進党は壊滅?

 豊中の問題と時をほぼ同じくして、首都・東京も豊洲新市場を巡るごみの問題で、元知事と現知事が角を突き合わせた。地方自治法百条に基づく委員会に召喚された石原慎太郎元知事が「座して死を待つ」のは嫌だと、日本記者クラブで記者会見を開いたのだ。

 核心が聞けるのではないかと多くのジャーナリストが集まったが、ふたを開ければ「私一人ではなく行政全体の責任だ」などの逃げ口上と、「やるべきことをやらずに放ったらかしにして、補償にべらぼうなカネがかかっている。混迷の責任は今の知事にある」との責任転嫁、老人のあいまいな記憶の開陳ばかり。失望した記者から、「事実をつまびらかにする責任があるのでは。なぜ、当時の副知事らに問い正さないのか」など厳しい質問が浴びせられた。

 一方の小池百合子知事は余裕たっぷり。石原会見に対抗して報道陣のぶら下がりインタビューを用意して待ち構え、「中身はよく分からなかった」とばっさり切り捨て、「人の責任というのは簡単だが、こういう状況を作ってきたことについて、もう少し客観的にご自身も見つめて頂きたい」とにこやかに応じた。

 勝敗は明らかだった。

 「老醜だよ。何で記者会見なんかしたんだろう。あの、よぼよぼした姿を自民党と重ねられると困るんだよな〜。石原さんは小池さんにいじめられてかわいそうだとか、都民が同情してくれないかな。無理だろうな」

 都議選の行方に気をもむ自民党中堅は溜め息を漏らした。

 都議選の台風の目となる「小池新党」は着々と進んでいる。自民党の苦戦はもはや避けられないだろう。ただ、永田町では「中長期的に見れば、小池新党で最も打撃を受けるのは民進党」との見方が多い。大阪に前例があるからだ。

 自民党選対関係者が語る。

 「2015年統一地方選挙の大阪府議選がモデルケース。『維新旋風』が吹き荒れた11年統一選で自民党は13議席、民主党は10議席に後退した。でも、15年は自民党が21議席に回復したのに旧民主党はたったの1議席だ。マイナス効果は野党に顕著に出る。小池新党が国政に出てくれば民進党は壊滅じゃないの」

 自由党の小沢一郎代表ら野党幹部も「都議選で野党が選挙協力しなければ共産党以外は生き残れない」との危機感を抱くが、野党第一党の民進党と共産党との連携強化は遅々として進まない。

 「森友学園追及の勢いを都議選につなげたい」——。野党幹部は一様にそう思っているのだが、都議選での勝利につながる道筋は、まだ描けていない。

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