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病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

多様化する「資金調達手法」

タリ ど審査無しぐに金化

 医療機関を巡る経営環境が激変する中で、医療・福祉分野における資金調達手法が多様化している。

 従来、施設改修や新築などに伴う設備投資と言えば、独立行政法人福祉医療機構の貸付制度や民間の金融機関からの借入金、あるいは補助金が主体だった。

 近年は、大規模施設においては、民間資金を活用した社会資本整備であるPFI(Private Finance Initiative)方式や、不動産投資信託であるヘルスケアリート(REIT:Real Estate In-vestment Trust)方式を活用する事例も少なからず見受けられるようになった。

 それらに先立ち、1990年代から診療報酬債権の流動化という手法も導入されている。通常の借り入れによる資金調達は、不動産(土地・建物)や医療機器を担保として、理事長などが保証人となり、事業計画書による信用を得た上で融資が実行されることになる。医療機関の経営が好調であれば、こうした方法は融資が認められる可能性が高い。

 しかし、既に土地・建物の担保評価の限度ギリギリまで融資を受けていたり、業績が悪化していると、新規の融資は受けづらい。そこで登場してきたのが、診療報酬債権の流動化、という手法である。

 調剤薬局を含む医療機関は、レセプトに基づいて社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険団体連合会に対して診療報酬を請求するが、受け取りまでには2カ月余り待たなくてはいけない。一般に請求は月末で締めるが、事務処理に時間を要するために翌々月の20日頃の支払いとなり、入金まで最大で80日間待たなくてはならない。

経営不振でも担保不要

 そこで、レセプトによる診療報酬の請求権を、将来(約2カ月後)入金がなされる資産と見なして証券化し、資産運用会社が医療機関に債権として売買し、前払いしてもらう。これが診療報酬債権の流動化によるファクタリング(売掛債権の買い取り契約)で、言い換えれば、貸借対照表(バランスシート)上の資産を切り売りして、現金化することに他ならない。

 医療機関側は、仮に経営不振であっても担保を必要とされることなく、診療報酬請求から受け取りまでの2カ月という期間を待たずに資金を調達、キャッシュフローを改善させることが可能な点が大きなメリットとなる。ファクタリングの場合、赤字や債務超過に陥っていたとしても、状況を聞き取り、財務内容などを確認した上で利用可能な場合もあるという。

 資金使途は限定されないこともメリットで、設備投資のみならず、賞与資金、新規事業など多様な用途に活用することが出来る。

 具体的な手続きは、以下のような手順で行われる。

 まず、医療機関は、診療報酬債権の譲渡契約を資産運用会社との間で締結する。次に、第三者対抗要件を具備するために、医療機関と資産運用会社は連名で債権譲渡通知書を国保・社保に送付。そして、資産運用会社は債権譲渡を受けた診療報酬債権(国保・社保への)請求金額の約8割程度から手数料を控除し、医療機関に買い取り代金を前払いする(一次支払い)。

 さらに、資産運用会社は、医療機関が支払基金(国保・社保)に請求した診療報酬の支払いを受けた後には、譲渡を受けた診療報酬債権の差額(約2割)を二次支払いとして医療機関へ支払う。

 診療報酬債権化には、医療機関側のデメリットも付きまとう。まず、手数料である。多くの場合、診療報酬の1カ月分の買い取りに対して0.5〜1%程度の手数料が必要となる。借入金だと考えれば1カ月0.5〜1%の金利に相当し、年間では6〜12%にも上る高利になる。さらに事務手数料として、買い取り額の1.0%(初回のみ)といった負担が加わる場合もある。

 ファクタリングはもともと、一般企業に対しての売掛債権の買い取り契約サービスである。一般企業がファクタリングを利用する場合と、医療機関では少し異なる面もある。

 一般企業の場合、財務状況や経営が必ずしも悪化していなくても、大型案件を受注して、それにかかるキャッシュを得るために、債権の流動化を試みるケースがあり得る。

 これに対し、医療機関は健全な経営を続けていれば、毎月安定して診療報酬が入ってくるはずで、そう前倒しして受け取る必要はないと考えられる。資金繰りの逼迫が常態化してしまい、ファクタリングで回す自転車操業のようなことになってはならない。手数料を継続的に払い続けなくてはならないのは痛手となる。

 もちろん、取引先の金融機関や患者へ情報が漏れないよう、信用面への配慮も必要になってくる。

安易なファクタリング利用は要注意

 診療報酬は信頼の高い債権であるため、ほとんど審査無しですぐに現金化出来るという利点もある。ただし、安易なファクタリングが、その後の資金繰り悪化の加速化につながりかねないということは、肝に銘じておきたい。

 2015〜16年には、医療機関の診療報酬請求権を買い取って、「レセプト債」と呼ばれる債券を発行し、投資家から資金を集めていたファンド会社や運営会社が破産。2017年になって、投資家から約3億円をだまし取ったなどとして、債券販売窓口だった証券会社(破産)の元役員が詐欺と金融商品取引法違反(偽計)の疑いで再逮捕された。

 そういう意味でも、ファクタリングにはネガティブなイメージも付きまとっている。

 しかし、医療機関のサバイバル時代にあって、勝ち残りを目指して、診療科やスタッフの拡充、先進医療機器の導入、病棟の増改築といった戦略に打って出る病院も少なからずある。そして、実際にこの手法でしか資金調達が出来ない医療機関も少なくないと言える。経営改善の方法を考える、次の一手のための時間稼ぎが出来ればいい。

 例えば、ある医療機関が当月末締めの請求によって80日後に入金予定の10億円の診療報酬債権を持っているとする。それを診療報酬債権の流動化事業を手掛ける資産運用会社に8億円で買い取ってもらい、最新の画像診断機器の調達に充て、いち早く機器の運用を開始するといった活用法もある。

 もし、一時的に入手出来た資金を次なる成長のための投資に使うことが出来、それが経営改善につながった場合には債権を買い戻すことも出来るはずだ。先を見据えて、有効な手立てを考えたい。

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