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OECD主要国の中で際立つ日本の「貧富の格差」

OECD主要国の中で際立つ日本の「貧富の格差」
拡大が経済成幅に

 他人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」防止策を巡り、政官界が右往左往している。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて飲食店を禁煙とする厚生労働省案に対し、店の経営への打撃を懸念する自民党議員らが猛反発しているためだ。政府は当初、受動喫煙防止策を盛り込んだ健康増進法改正案を3月中に閣議決定する方針だったが、先送りも視野に入れざるを得なくなっている。

 厚労省が3月1日に公表した案は、飲食店を含む各種施設内を原則全面禁煙としながらも、小規模なバーやスナックは例外としていることが特徴だ。

 しかし、自民党などの一部議員は収まらない。翌2日の参院予算委員会でさっそく厚労省案をやり玉に挙げた同党の小鑓隆史氏は「小さな焼き鳥屋さんのような店は(喫煙者が来なくなり)廃業に追い込まれる」と指摘し、「禁煙の有無を個々の経営者の判断に任せるべきだ」と政府に迫った。塩崎恭久厚労相は「妊婦、子供、がん患者らの健康が喫煙の自由よりも後回しにされる現状は看過出来ない」と反論したものの、小鑓氏は納得しなかった。

日本の防止策は「世界最低レベル」

 厚労省は昨年まとめた「たばこ白書」で、受動喫煙が肺がんや脳卒中などの原因になっていると明記した。同省の研究班は、国内で年間約1万5000人が受動喫煙で死亡していると推計している。施設の全面禁煙は世界的潮流で、現在、50前後の国が公共の場を全面禁煙にしている。

 これに対し、日本の受動喫煙防止対策は努力義務にとどまる。「世界最低のレベル」というのが、日本の対策に関する世界保健機関(WHO)の評価だ。

 国際オリンピック委員会とWHOは、10年に「たばこの無い五輪」で合意している。「現状のままではまずい」(厚労省幹部)として、遅まきながら日本も罰則付きの対策づくりに乗り出した。19年のラグビー・ワールドカップまでの施行に間に合わせるべく、厚労省は昨年10月にたたき台を示し、3月に入って具体案を公表した。

 ①医療機関や小中高校は敷地、建物とも全面禁煙とし、喫煙室の設置も認めない②官公庁や大学、運動施設は屋内を禁煙とし、屋内への喫煙室設置も不可③飲食店や劇場、オフィスなどは禁煙とするが、屋内への喫煙室設置は可——が厚労省案の概要だ。

 この他、バス、タクシーは車内禁煙とする。注意を聞かない悪質な喫煙者は30万円以下、対策を守らない施設経営者は50万円以下の過料、との罰則規定がある。ただし、設置済みの喫煙室は法施行後5年間の使用を認める。

 この案では、自民党などが配慮を求めていた居酒屋や焼き鳥屋なども禁煙対象に区分される。ただ、飲食店でも、主に酒類を提供する小規模なバーやスナックは規制対象外とした。厚労省は「面積が30平方㍍以下」の店舗を例外とし、屋内での喫煙を認める意向だ。昨年のたたき台では例外を認めていなかったとあって、たばこの害を指摘する規制推進派は「後退した」と批判している。

 一方、居酒屋などは喫煙室を設置すれば客もたばこを吸えるとはいえ、費用がかかる上、小さな店には喫煙室のスペースなど無いというのが、規制慎重派の言い分。「『みんなやめちゃえ』は知恵のある人の言うことではない」(石破茂元幹事長)と反論するなど、「飲食店への打撃」を理由に強く反発している。

 「経営が成り立たないというお店の意向を無視するのか」「規制の強化によってよからぬ勢力が地下に潜る」「30平方㍍という数字に根拠はあるのか」

 2月15日の自民党厚労部会は、大荒れとなった。厚労省案が早い段階で漏れ伝わり、内容を知った規制慎重派の議員が押しかけたからだ。中心はたばこ業界の発展を掲げる「党たばこ議員連盟」の面々。自民党議員の多くはたばこ業界から献金を受けている他、葉たばこ農家の支援を受ける議員もいる。同議連会長の野田毅・元自治相は「禁煙より分煙の推進」を訴え、「厚労相がいくら(受動喫煙防止を)言っても、そうそう通る自民党ではない」と規制推進派を牽制した。

 「もう、どうにもなりませんよ」

 規制慎重派の強硬姿勢に、同党の渡嘉敷奈緒美・厚労部会長は、上司にあたる茂木敏充・政調会長にそう訴え、協力を求めた。茂木氏はうなづき、2月24日に田村憲久・元厚労相や二川一男・厚労省事務次官らを自室に呼んだ。だが、省内の調整を求める茂木氏に対し、田村氏は「大臣(塩崎厚労相)が堅くて、厚労官僚が動けないんです」。結局、「3月中の法案閣議決定は難しいな」という思いを共有するに終わった。

塩崎厚労相は譲らない構え

 その塩崎氏は、「たばこ嫌い」で知られる。「おもてなし」を掲げる東京五輪・パラリンピックで、海外からの客を他人のたばこの煙にさらすことなどあり得ない──というのが持論だ。規制慎重派に屈することを是とせず、「世界的には全面禁煙の流れだ」と厚労官僚の尻を叩いている。

 塩崎氏を後押しするのが、医師や患者団体ら医療関係者。一部屋内への喫煙室設置を認め、小さなバーなどでは引き続きたばこを吸えるようにした厚労省案には否定的で、日本医師会は「喫煙室を設けても受動喫煙の被害は防げない」と全面禁煙を求めている。2月24日には関係の約150団体が塩崎氏に「例外なき禁煙」を求める要望書を手渡した。日本肺がん患者連絡会の長谷川一男代表は「(受動喫煙防止の)法律は、子供や孫にたばこの害が及ばない世界や未来を創るものだと考えてほしい」と呼び掛けている。

 日本禁煙学会のインターネットを通じた調査によると、全ての飲食店で例外なく屋内禁煙とする案に7割以上が賛成と答えた。飲食店が禁煙になったらどうするかを尋ねたところ、行く回数が「増える」と回答したのが42%だったのに対し、「減る」は13%にとどまった。また、国内外の複数の調査でも禁煙導入前と導入後の飲食店の売り上げには大差なく、増えた例もあるという。

 こうした中、自民党たばこ議連は3月7日、臨時総会を開き、「分煙」の徹底で受動喫煙を防ぐとした対案を打ち出した。「喫煙を愉しむことも、ともに国民の権利」とし、「欲せざる受動喫煙の防止」を基本理念に掲げる。病院なども含めた大半の施設への喫煙室設置を認め、飲食店は禁煙、分煙、喫煙の表示を義務化するという内容だ。これに対し、自民党の受動喫煙防止議連(会長=山東昭子・元科学技術庁長官)は「厚労省案と心は同じ」と確認しつつ、バーなどに限らず「小規模な飲食店」を全て規制対象外とする落とし所を探り始めた。ただ、まだ塩崎厚労相は譲る姿勢を示していない。

 同日夕、急きょ記者会見した厚労省の正林督章・健康局健康課長は、飲食店や客が禁煙か分煙か選べるようにすべきだというたばこ議連の対案について、「妊婦やがん患者ら弱い立場の人の選択肢が狭まる」と指摘、「緩い案」とバッサリ切り捨てた。

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