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第18回未来の会

第101回 「医科歯科連携研究会」の活動を通じて 医科・歯科間でWin-Winの関係を構築

第101回  「医科歯科連携研究会」の活動を通じて 医科・歯科間でWin-Winの関係を構築

地域包括ケアシステムの構築を目指し、医科・歯科の連携が求められている中、東京歯科保険医協会が音頭を取り、東京保険医協会、千葉県保険医協会と共に「医科歯科連携研究会」を開いている。中心となっている山本鐵雄氏に、研究会の活動状況と成果について話を聞いた。

先生の医科歯科連携の取り組みを教えてください。

山本 包括的に人々を診ていくべきという観点からすると、両領域の垣根は決して低くありません。2012年に睡眠時無呼吸症の連携が始まりました。東京歯科保険医協会と東京保険医協会が中心となって、地域の医科と歯科を結び付ける活動をしています。お互いに患者の健康管理を共有し、win-winの関係が構築出来ていると思います。睡眠時無呼吸症では、2004年に保険適用となった口腔内装置(OA)を用いた治療法があります。医科では循環器科、呼吸器科、耳鼻咽喉科などで扱われることが多い症状ですが、そこに歯科が関わることが増えました。私はアメリカンフットボールをしていたこともあり、スポーツマウスガードの製作を得意としていますが、その技術が応用出来るのではと思いました。それまでのOAは固くて装着感が悪く、寝ている間に痛くて目が覚めてしまうようなものだったので、軟性のマウスガードの樹脂材料を応用出来ないかと思って始めたら、好評でした。

医科歯科連携のメリットは何ですか。

山本 残念なことに医科にとって連携のメリットはないと言う方がとても多くいます。高血圧症や糖尿病などの患者の口腔管理を歯科で行うと医療管理料が請求出来るのですが、それには医科からの情報提供が必要です。医科にしてみれば、「何で知らない歯科医のために我々が面倒な文書を作らなければならないのか」という状態でした。信頼を深めていく必要を感じる中で、OAは分かりやすいツールでした。医科歯科にとってお互いの利益に繋がることからやってみよう、ということになりました。医科にとってのメリットは、歯科からの患者紹介が増えることです。歯科から患者の検査依頼が来ます。医科は検査料が算定出来、その結果が送られてきたら歯科も保険請求が出来るという関係です。検査結果によって、医科は持続陽圧呼吸療法(CPAP)で対応し、検査数値がそれほど悪くなければ、歯科はOAを作って患者に装着してもらいます。CPAPは寝る時に違和感が強いので、6割の患者さんが止めてしまうのですが、その段階で歯科のOAに変更することもあります。目に見える連携として、医科歯科が仲良くやっている一例です。

名簿の交換で紹介し合う関係を構築

具体的にどのような連携体制にありますか。

山本 当初は、OAの製作が出来る歯科医院も少ないことから、事務局が仲介に入って紹介していました。連携を開始して5年経ちましたが、東京歯科保険医協会ではOAの知識、製作のための講習会を毎年開催して、現在では300名近くの修了者を養成しました。そのような経緯から現在では医科、歯科お互いにリストを見て直接連携しています。医科と歯科の協会でリストを交換し、近隣の病院や歯科医院を紹介し合うことにより地域の連携を活性化させることが大切です。

◆生活習慣病での連携はいかがですか。

山本 お互いの認知度やエビデンスの不足から見て、連携の取りにくい領域です。医科から「歯の衛生指導と糖尿病がどう関係してるのか」「血糖値は下がるのか」と問われても、まだしっかりとしたエビデンスを示せない状況です。口腔ケアで発症や重症化のリスクを減らすことが出来るかには話が至っていません。予防的観点から何らかの保険点数が導入されていないことも医療として大きな問題だと思います。誤嚥性肺炎に関しては口腔内を清潔に保つことが予防につながりますが、保険対象外です。行政の予防措置に重点を置かない医療政策は、根本的な問題をないがしろにしているのではないでしょうか。

◆16年の研究会は睡眠時無呼吸症がテーマでしたね。

山本 医科歯科合わせて90人ほどの参加がありました。現在では医科にもOAはエビデンスとともに認知されています。5年前は懐疑的だったのに、逆に歯科受診を患者に勧めて頂けるようになりました。

体調不良を歯科にも相談できる社会に

◆地域包括ケアシステムの中の歯科医の役割は?

山本 歯科にかかる人は有病率が高い傾向があります。また、未病の人でも歯科医師が発見する機会は決して少なくありません。歯石を取ってほしいと来院する人の口腔内には、歯周病も多く見受けられます。初診では全身について問診して、内科受診を勧めることもあります。長年にわたり開業歯科医をしていると、患者さんの足腰が弱くなって階段を登れなくなったり、目が見えなくなったりする方も出てきます。自分の患者さんである以上、寝たきりになって顎提が退縮して入れ歯が落ちるようになったら、自宅まで行って診療しています。私の専門は補綴なので、物を噛んで痛くない入れ歯を入れることが責務です。高齢者は老人ホームに入所すると、きざみ食やゼリー食も提供されます。噛む要素がいらない患者さんがいるからです。舌でまとめて嚥下するのですが、舌の機能が低下すると横や上に動かしてまとめる力が無くなります。このようなケースでは舌摂食補助床といって入れ歯の口蓋部を厚めにして舌が届くようにしないと飲み込めません。特別養護老人ホームからの相談は結構あり、診療に行っています。

◆医科歯科連携の展望をお願いします。

山本 睡眠時無呼吸症に関する連携は着実に進んでいるのではないでしょうか。ただ、このような連携に関する活動は本来、都あるいは区単位で進めるべきだと思います。地域医療の中心となる医師会や歯科医師会にはもっと積極的に活動していただきたいと思っています。また、行政に関しては地域包括ケアを打ち出しておきながら、歯科の位置付けを中途半端なものにしていることは不満に思います。例えば、2016年度診療報酬改定で、新たに歯科では設備を備えて届けを要件とする、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)が導入されました。かかりつけ歯科医として在宅訪問や医科との連携を積極的に行っていても、AED(自動体外式除細動器)や口腔外バキュームなど高価な機器がなければ、か強診として認められないのはおかしいと思いませんか。かかりつけ本来の意味を理解せず、単に設備のあるなしで評価するのは間違っていると思います。将来的には、医師・歯科医師・薬剤師など皆で1人の患者の健康を管理するような社会を作るのが理想です。患者自身の健康について、医科、歯科、薬科どこからでも入っていけるような窓口があり、全ての医療機関が連携できるシステムこそ、地域包括ケアシステムではないでしょうか。

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