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第107回 働き方改革で「法案の整合性」に苦慮する厚労省

 安倍晋三政権の看板政策「働き方改革」を巡り、厚生労働省の官僚らが「法案の整合性」に苦心している。目玉の一つは残業時間の規制強化なのに、既に国会に提出済みの労働基準法改正案が「長時間労働を助長する」と批判されているためだ。

 「両法案は矛盾している」と批判を強める野党に、同省内からは「反論が難しい」との本音も漏れる。

 「長時間労働を増やそうというのか、無くそうとしているのか、全く不明で支離滅裂だ」

 1月23日の衆議院本会議で民進党の大串博志・政調会長はそう指摘し、政府の働き方改革を槍玉に挙げた。

 政府は「同一労働・同一賃金」と共に、長時間労働の是正を、働き方改革の中心に据えている。検討している法案は、月の平均残業時間の上限を60時間に制限した上で、違反した企業には罰則を科すという内容だ。

 しかし、同法案の前には障害が横たわる。昨年の臨時国会から継続審議となっている労働基準法改正案だ。働いた時間に関係無く、成果で賃金を決める「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設がその柱。年収1075万円以上で、専門性が高い職種の人は労働時間の規制を外し、「自分で働く時間の配分を決められるようにする」という。だが、「残業代ゼロで成果を出すまで無制限に働かされる」との批判も根強くある。

 安倍首相は同27日の衆院予算委員会で「(高プロの対象者は)非常に少ない。(労基法改正案と長時間労働是正の)両法案は整合性がある」と野党の追及をかわした。とはいえ、与党内にも「二つの法案は矛盾している」(労働問題に詳しい自民党議員)との声が出ている。

 2法案について、国会では「両方共必要」と強調した首相だが、自民党、官邸内にも「両法案を同時に通すのは無理」と見る議員は多い。自民党厚生族の幹部は「両方やりたいのは厚労省だけ。高プロは批判が強いし、働き方改革との整合性という問題もある。官邸も自民党も本音では積極的じゃない」と漏らす。

 「両方やりたい厚労省」内も、熱心なのは塩崎恭久厚労相くらい、との冷ややかな声もある。規制緩和策を軸とした経済成長を志向する塩崎氏にとって、高プロはぜひとも実現させたい政策だ。昨年は自民党国対を回り、審議入りを強く求めたほど。「高プロ、同一労働・同一賃金、長時間労働是正の三つはセットだ」。そうハッパをかける塩崎氏に対し、厚労官僚たちは内心、複雑という。

 もっとも、新たな労働法案を作る場合、与党だけでなく、労働政策審議会(労政審、厚労相の諮問機関)で労使の合意を得なければならない。政府は首相が議長を務める「働き方改革実現会議」で3月に具体案をまとめる意向だが、その後に始まる労政審での議論は数カ月かかる見通しだ。今国会の会期末が6月18日という事情も踏まえ、政府内には「秋の臨時国会に先送りだろう」(厚労省幹部)との見方が広がっている。

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