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医療現場でも「働き方改革」を

医療現場でも「働き方改革」を

き方」に注目が集まっている中、この1月末に「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」が発足した。いわゆる超党派の議連で、衆参両院から212人もの議員が入会、この問題への関心の高さを示している。今後、医療職を志す女性をますます増やすとともに、いったん仕事に就いた女性が出産や子育てでキャリアを中断した場合でも、再トレーニングなどを受けて復職できる仕組み作りなども充実させていくものと思われる。

 しかし、女性医療職にとって最も大切なのは、やはり労働環境の整備なのではないか。特に、医療職は過酷な現場で長時間の労働を強いられる場合がまだまだ多いといえる。また、一人一人にかかる責任も重く、受けるプレッシャーやストレスも半端ではない。

看護師自殺で遺族が労災認定求め訴訟

 先ごろ、札幌で始まった一つの裁判が大きく報道された。5年前、札幌市の病院に勤めていた23歳の女性看護師が自殺したのだが、その原因が病院での過酷な勤務だとして、遺族が国に労災認定を求める訴えを起こしたのだ。国側は争う構えを見せている。

 自殺した看護師は大学卒業後にその病院に勤務したのだが、勤務開始後1カ月後の2012年5月の時間外勤務は91時間に及んでいるという記録がある。

 母親によると、毎朝4時30分に起床し、午前6時のJRに乗り、定時の1時間前には出勤。夜は午前0時ごろ帰宅して、その後さらに勉強、という日々が続き、毎日の睡眠は2〜3時間だったという。

 一般的に「6カ月を平均して月45時間を超える時間外労働が行われた場合、健康障害と業務との関連性は強まっていく」とされている。もちろん、その関連性は労働時間が延びるほど高まり、残業月80時間が「過労死ライン」と言われている。亡くなった看護師の「月91時間」はこれを大きく超えていることになる。

 ところが、労災の認定基準はそれよりさらにハードルが高い。うつ病などの精神疾患の場合、労災と認定される可能性が高くなるのは、時間外労働が「発症の1カ月前に160時間」「発症前2カ月連続で120時間、3カ月連続で100時間」と言われている。言うまでもないが、これは月の総労働時間ではなく、あくまで時間外労働のみの時間だ。

 「月160時間」というと、例えば月曜から金曜まで毎日5時間(定時が18時なら23時まで)、さらに土・日曜も必ず6時間ずつは出勤、といった常軌を逸した働き方となる。そこまで働かないと、「そのうつ病は労災とはいえない」と言われてしまうのだ。

 この看護師は、時間外労働が月平均で60〜90時間だったため、うつ病になり自殺しても労働基準監督署はそれを労災と認めなかったので、遺族は提訴に踏み切ったのだ。

 札幌地方裁判所で開かれた口頭弁論で母親は、「大学を出たばかりの娘は重い患者の病棟を担当し、必死に格闘していた。同じ残業時間でもデスクワークの場合と、常にナースコールの対応に追われて走り回る看護師とでは全く違う」と、医療現場の労働の過酷さを訴えた。

女性医療職が活躍しやすい環境作りを

 どうだろう。本誌の読者の中で、「私の経営する病院では、女性医療職の残業は月80時間程度と聞いている。『過労死ライン』ギリギリで良い状態とは言えないが、たとえ何らかのメンタル疾患になっても、労災と認定されることはないだろう」と思っている人はいないだろうか。

 もちろん「月80時間」の時間外労働自体問題なのだが、特に医療職の場合、単純に時間数だけでは測りきれない面があるのだ。さらに、その医療職が女性の場合は、持ち前の真面目で完璧主義的な性格、家庭との両立、女性ならではの体調のリズムなど、男性には無い負荷がかかりやすいともいえる。その辺りを考慮しないと、女性医療職に現場で元気に活躍してもらうことは出来ないのだ。

 それにもかかわらず、医療現場というのは他の職種以上に労働時間が長くなりがちな職場でもある。しかも、この看護師のように「帰宅してから勉強」など、職場での労働だけが全てではない。休日を返上して学会や講習会に行く人も多いだろうが、それは決して時間外労働にカウントされないのである。

 もちろん、こういった問題を解決するにはどうしてもマンパワーが必要だが、人件費や人手も限られている中では、それにも限りがある。

 北欧の国では医療や福祉職にもワークシェアリングを取り入れ、一つのポストを2人でシェアして働くことにより、1人当たりの労働時間を短くしたり、ミスや休職者を少なくしたり出来るという効果が表れているという報道を読んだことがある。

 しかも、「2人でシェアするのだから、1人当たりの報酬は半額」とするのではなくて、なるべく正規雇用に近い金額を支払えるようにしているところもある。そうすると人件費は当然増えるが、それにも増してサービスが向上するので売り上げ増につながるのだそうだ。

 「働き方改革」という場合、特に女性医療職に対しては「なるべく残業を少なくする」といった小手先の工夫だけではなく、「一つのポストを2人でシェア、でも給料はあまり下がらない」といった思い切った改革が必要になるのではないか。そうすることで働く人自身も、医療の受け手である患者さんも、そして経営者も皆がハッピーという結果につながることが考えられるのだ。

 今回、取り上げた看護師の裁判では、国は全面的に争う姿勢を見せており、改めて労災と認定されるかどうかは分からない。しかし、夢を抱いて医療現場に飛び込み、悲しい最期を迎えることになった若き女性医療職のためにも、この分野に関わる人はぜひ、「ハッピーな働き方改革」とは何かを考えてほしい。

 もちろん、冒頭で触れた「女性医療職エンパワメント推進議員連盟」の今後の活動にも期待したい。

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