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「地域医療連携推進法人」で生き残る

倒れ防ぎ、クラムを組む時
正医療法の4月施行に伴い、都道府県知事の権限によって「地域医療連携推進法人」の設立が可能になる。2月上旬には政令が公布され、モデル定款やガイドラインに関する通知も出される予定である。

 2015年の医療法改正で新たに創設された地域医療連携推進法人は、持ち株会社型で複数の医療機関を運営できる仕組みで、“連携”よりも強く“合併”よりも緩い制度とされる。具体的には、病院・診療所・介護老人保健施設を開設する医療法人など、複数の非営利法人が参加して設立する。医療法において、その社員には、「病院を開設する法人」「介護事業などを開設・管理する法人」と明示されている他、厚生労働大臣が「地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するために必要な者」と定めるとされている。

 また、省令案では、地域医療連携推進法人に参加する医療法人が増床を申請した場合、都道府県が医療計画で定める地域医療構想を達成するために必要であれば認められるといった条件も示されている。

効率的な地域医療体制を構築する仕組み

 さて、地域医療連携推進法人とは、その名の通り、少子高齢社会に対応して効率的な地域医療体制を確保することに主眼を置いた仕組みだ。すなわち、地域包括ケアシステムの構築や都道府県ごとの地域医療構想の実現を目指して、統一的な連携推進に向けた方針を策定する。この方針に基づいて、各参加法人は、医療・介護事業を推進していくことが求められる。

 かつて「非営利ホールディングカンパニー型法人」と呼ばれていた法人で、団塊の世代が後期高齢者になる25年に向けて、機能分化を進めるためのツールと位置付けられている。厚労省はその主たるメリットとして、患者紹介・逆紹介の円滑化、医薬品・医療機器などの共同購入、医師・医療機器の再配置などを挙げている。

 発端となったのは、13年の社会保障制度改革国民会議の最終報告書にも含められた「非営利ホールディングカンパニー」の枠組みであり、米国のIHN(Integrated Healthcare Network:広域医療圏統合医療事業体)がモデルである。その定義は、「人口数百万人の広域医療圏において、急性期ケア病院、診療所、リハビリ施設、介護施設、在宅ケア事業所、地域医療保険会社など地域住民に医療サービスを提供するために必要な機能を網羅的に有する統合医療事業体」(松山幸弘、キヤノングローバル戦略研究所)と示されている。

 米国では1990年代からIHNが増加しており、全米に600余りが存在するとされる。背景には、診断群別包括支払い方式(DRG/PPS)導入などで平均在院日数が短縮され、医療機関の収益が激減したことがある。また、保険会社が医療行為に対する管理を強化したために、小規模病院ほど足場が危うくなった。こうして、非営利ホールディングカンパニーのもとにグループ化して規模拡大を図り、対抗措置に打って出たとされる。IHNの大半は非営利で運営され、役員も地域代表の社外取締役が中心となっており、地域住民の共有財産として位置付けられているという。

 日本では、4月に向けて、いくつか具体的な動きが始まっている。

 山形県では、県と酒田市が出資し、日本海総合病院(646床)を経営する独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」(酒田市)と同市内の医療・社会福祉法人の計5団体が、地域医療連携推進法人の設立準備を進めている。

 また、米沢市では、米沢市立病院(322床)と一般財団法人三友堂病院(190床)が地域医療連携推進法人の設立を目指すことで合意したとされる。両病院とも経営難で、統合による効率化を模索しており、年内にも統合の形態を決め、病院の建て替えについても協議するという。

 愛知県では、藤田保健衛生大学病院(1435床)を運営する学校法人藤田学園(豊明市)の呼び掛けに、名古屋市などの12市町の13の病院や介護施設が応じて、新たな地域医療連携推進法人「尾三会」(仮称)を設立する準備を進めている。難易度の高い手術は大学病院で受け入れ、回復後は近医に戻すといった通常の医療連携に加えて、他の医療・介護事業者の研修への協力、職員の相互派遣なども視野に入れている。また、法人を窓口として、医薬品・医療機器、医療材料などの共同調達、電子カルテの共有などで効率化を図り、コスト削減も見込んでいる。

 岡山県では、真庭市にある共にケアミックスの2病院、社会医療法人緑壮会金田病院(172床)と、市内の医療法人社団井口会落合病院(173床)が、これまでの連携からさらに進めた、近隣医療機関を含めた地域医療連携推進法人の設立も視野に入れた検討に入っているとされる。

 鹿児島県では、社会医療法人博愛会が、女性のための専門病院である相良病院(80床)を核に、従来からの連携を基にした県内の医療法人のグループ化を進め、地域医療連携推進法人の設立を目指している。設立前から、グループ内では地域医療連携推進法人と変わらない運営がなされている。

 石川県では、ケアミックスの社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院(七尾市、426床)が、地域医療連携推進法人に名乗りを挙げている。北海道でも、社会医療法人社団カレスサッポロと北海道医療大学が、地域医療連携推進法人の準備を始める。地域のリーダー的な病院も、足下を固めに入っている。

“競合”から“協調”へ

 国の例を見ると、米バージニア州のIHNの場合、総合病院を核として半径100kmの医療圏に約120の医療関連施設を保有する複合事業体である。総合病院と小児専門病院などの基幹病院が、周辺の医療機関と経営統合しながら発展し、地元の医科大学や開業医と連携して医療・介護福祉・教育の複合体を形成している。

 日本とは規模も制度もやや異なるが、“経営悪化”を回避するという目的では共通しているようだ。500床規模の急性期病院においては、安定経営のためには病床稼働率8割を維持することが大前提となってくる。2016年4月の診療報酬改定では、急性期病院の要件として、患者の在宅復帰率や重症患者の受け入れ割合が高められている。

 人口減少と高齢化が急速に同時進行する中で、首都圏を除く地方都市においては、患者が減少へと転じている。地域の医療機関が“共倒れ”にならないために、生き残りを賭けてスクラムを組んでいく時代が到来している。患者を取り合ったり、抱え込んだりしていれば、地域医療の崩壊を招きかねない。“競合”から“協調”へ、近隣の診療所をも巻き込みながら連携を強化し、医療機関同士のグループ化や機能転換を含む病院の再編が本格的に到来するのは間違いない。

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