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首脳密月演出後に待ち受ける「真の日米交渉」の中身

首脳密月演出後に待ち受ける「真の日米交渉」の中身
日本の上に載せ

本の首相は、トランプ大統領のハートをつかむ方法を教えてくれた。それは、へつらい(Flattery)なのだ」——。

 2月10日付の米『タイム』誌は、今回の安倍晋三首相の訪米について、このように報じた。

 例によって日本の大手メディア各社はNHKを筆頭に、今回の日米首脳会談があたかも何か有意義で論ずるに値するかのような報道に徹した。それとは正反対に、米国ではまだジャーナリズムの批判精神が残っているということなのか。

 安倍は昨年11月に、大統領選挙に当選したばかりで何の公職にも就いていなかったドナルド・トランプ詣でにニューヨークの自宅を訪れ、現職大統領だったオバマを激怒させたというが、とにかく強い者にはやたらと「へつらい」たがるのが、安倍の本性なのだろう。

 今回も全く同じだが、その本性の2番目が、田舎芝居もどきの演出癖にある。

 トランプと安倍との会談は約40分間だったが、通訳を入れるから、本当に中身のある議論はせいぜい10分程度だろう。

 その後のゴルフだの会食だの、さらには過剰な握手や「ハグ」をこれでもかというほどテレビ画面に映し出せば、一件落着というわけだ。

 「有権者」は共同声明など関心もないだろうし、「友好ムード」で訪米が成功裏に終わったという「フェイクニュース」を流せば、茶の間に座った彼らを難なく支持率アップに誘導出来るという計算だろう。

 政治家の「へつらい」姿など、まともな国ではマイナス要因だが、何しろ米国に戦後このかた、ほとんど「へつらい」だけしか示してこなかったこの国の外交に、「有権者」は何の疑問も感じなくなっている。

 政治家が「へつらい」を生業にする幇間紛いになって、それでも何か国益にプラスになれば話は別だが、相手は真顔で「日本では我々の車の販売を難しくしているのに、数十万台の車が大きな船で米国に入ってくる」と放言する、不動産ブローカー上がりの稀代の経済無知と言われるトランプ大統領だ。

 こんな相手に幇間外交をやってのけても、多くの国民が安倍への「好感度」とやらを保つのを止めないのは、メディアもまた安倍のように幇間と大差ない仕事しかしていないせいだろう。

懸念される米国からの不条理な要求

 だが、ツケは必ず来る。

 最大の懸念は、今回の訪米で決定した、副総理兼財務相の麻生太郎と副大統領のマイク・ペンスが仕切る新しい経済分野協議の枠組み設定にあると言える。

 政府や経済界は、今回の訪米でトランプ側から日本の為替・金融政策や貿易黒字に対する批判がなかったことで「安堵」している風の報道が溢れ、安倍も「満額回答」などと自画自賛しているが、この認識はいかにも甘い。問題は、これからだ。

 トランプは就任直後、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明し、TPP参加は米国への「へつらい」のための必須項目と思い込んでいた安倍を慌てさせた。

 しかし、自民党は野党時代に「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」と宣伝していたが、与党になってからどのように臨んだか。TPPが大筋合意された2015年10月の米アトランタでのTPP閣僚会合では、決着だけを目的に、米国に何でもかんでも譲る姿勢に徹したのだ。その「へつらい」ぶりに、他国から「よくそこまで譲れるな」と皮肉が飛び出すほどだった。

 牛肉・豚肉の輸入、乳製品の輸入では日本はほぼ全面的に譲歩し、「聖域として守る」としてきたその他の農林水産品目についても、守ったものはゼロ。

 聖域とされた重要5品目について、タリフライン(関税における対象項目を細目ごとに分類した品目数)で約3割が関税撤廃となり、「主権を損なうから合意しない」と、野党時代に反対を公約した「ISD条項」(投資家対国家の紛争解決条項)も盛り込まれた。

 さらに、自動車の対米輸出関税率でも、乗用車は14年間、SUVを含むトラックは29年間、関税率の引き下げが全く行われないことを、安倍は諾々と受け入れている。

 今後設置されるという経済分野協議とは、このTPPのように不条理極まりない要求が突き付けられる交渉の場が、経済分野協議という名の2国間交渉に移行するだけの話だ。

日米並行協議では全ての分野が対象

 そこで日本側に筋の通った対応が出来るかどうかは、今回の訪米を含め安倍が第2次政権下でやってきた約5年間の国益無視の幇間外交を振り返れば、すでに予測は何ら困難ではないはずだ。

 早くも米政府高官から「2国間協定では、TPPのような多国間協定と比べ、米国にとってより有利な条件を交渉することができる」との発言が報じられているが、得意の「へつらい」が、TPP以上に発揮されることになろう。

 トランプは、今回の共同記者会見で「両国に利益をもたらす自由で公正、互恵的な貿易関係を目指す」とも述べているが、額面通りには受け止められまい。

 共同声明には「経済関係」の強化として「市場障壁の削減」が挙げられている。いくら安倍が「へつらい」の限りを尽くして追従笑いを浮かべようが、相手に舐められるのは目に見えている。

 TPPと同時に交渉が進められていた日米並行協議では、両国は「公的医療保険を含む全ての分野が交渉の対象になる」と明記された、「交換文書」に合意しているくらいだからだ。

 現時点で、これまでの動きから予想される米国の要求は、①水道事業の民営化と外資の参入②外資企業が容易に従業員を解雇できる労働基準法の改悪③混合診療の拡大と国民皆保険制度の実質解体④現行薬価決定システムの撤廃⑤遺伝子組み換え食品の表示義務撤廃等々、文字通り国民の生活に直結する「全ての分野」に及ぶ内容となろう。

 通用するのは「米国と米国企業第一」の理屈で、日本の主権は無視される。「ISD条項」一つとっても、日本の法規より多国籍企業の利害が優先するのだ。

 常識的に考えれば、こんな要求に屈するのは属国に等しいが、安倍や自民党は何の痛痒も感じまい。米国に「へつらい」を尽くせば尽くすほど、自身の権力が安泰になるのを経験則から知っているからだ。

 このままだと「トランプ時代」が、「日本の属国化が完全に仕上がった時代」となるのは疑いない。

(敬称略)

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