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第18回【イギリス】ホスピスから見た高齢者医療

第18回【イギリス】ホスピスから見た高齢者医療

 今回は英国の高齢者医療について見てみよう。「ゆりかごから墓場まで」という言葉は、第2次世界大戦後の英国における社会福祉政策のスローガンとして出来たわけだが、現在の英国医療はそこまでのレベルではなさそうというのが、前回見た通りの結論である。

 しかし、近代看護の祖であるナイチンゲールをはじめ、ホスピスをはじめとするケアについては定評がある。

セント・クリストファー・ホスピス (写真①)


 医師で著述家でもあるシシリー・ソンダース女史(1918〜2005年、写真②)が1967年にがん末期患者のために設立、近代的ホスピスの第1号として知られる。

 四つの病棟と48床を有し、年間約770人の入院患者(約540人の在宅患者)、外来は年間約2600人(2014年)を抱える英国最大規模のホスピスとして、ロンドン南東部のケアの中核を担っている。看護師は93人、総スタッフは420人(医療関係者が222人)で、この他に1100人のボランティアがいる。

 患者は80%ががん、20%が心不全や腎不全、呼吸不全などで、そのうち25%の患者が在宅に戻る。平均在院日数は14〜16日である。年間予算は19ミリオンポンド(1ポンド=140円として26億6000万円)。33%が国民保健サービス(NHS)からの予算で、残りが寄付やファンドレイズ(民間非営利団体)による。

 ここには、創業者のソンダース女史の理念が今でも根付いている。ソンダース女史の当初のキャリアは医療系ではなく、政治や哲学、経済学を大学で学んだ。その後、看護師になり、ソーシャルワーカーの資格を取る。

 実は、最終的にソンダース女史はSt Thomasʼs Hospital Medical School (今はKingʼs College London GKT School of Medical Educationの一部)で学び、1957年に医師になる。その後、Knight に相当する勲位に叙せられた婦人の敬称であるDameの称号を得る。

 ソンダース女史が30歳の時、がんで若くして死んでしまった恋人のポーランド系ユダヤ人、デイヴィッド・タスマ氏との出会いが彼女の人生を変えたといわれる。彼が寄付した500ポンドが同ホスピスを建てる動機と最初の寄付金となった。その後、ソンダース女史が50万ポンドの寄付を募って、同ホスピスを創設した。

 同ホスピスの理念は社会面、身体面、精神面、感情面から痛みを診ていく、というものである。英国には現在、220のホスピスがある。英国のホスピスは在宅にもデイケアにも発展し、心不全など非がん患者の終末期にも、その緩和ケアの手法が拡大している。

 「End of Life Care」において、より良いケアを受けて死んでいくことは全ての人に必要で、しかも国民の多くが家で家族に囲まれて亡くなりたいと考えている。進化したホスピスが「がんの方のみならず、全ての人の終末に提供されるべきだ」とした考えを提唱し、ホスピスが街づくりのハブという考えを進めている。2011年には234カ国のうち136カ国にホスピスが存在するという。

 ちなみに、同ホスピスは安楽死には反対である。また、痴呆に対するケアが英国でも重要になってきたり、患者の合併症が多くなり障害者も増えてきたり、家族構造が変わってきたりしていること(少人数あるいは一人暮らしの増加)が今後の緩和ケアにおいて注意を払わなければならい点であるという。

MEADBANK CARE HOME  and LONDON BRIDGE SUITES(高齢者施設)

 非営利の民間保険会社として英国トップの会社であるBUPAは介護事業も行っており、この施設はその傘下の老人ホームになる。同ホームの受け入れ年齢は65歳からで、身障者も多いため痴呆症やパーキンソン病、ハンチントン病の入所者の世話も行っている。

 現在176室(個室)があるが、うち33室が富裕層向けになっている。サービスとしてはPalliative Care(緩和ケア)、 Respite Care(ショートステイ)、Convalescent Care(回復期ケア)、Physiotherapy(理学療法)などを行っている。

 高齢者向けに様々な工夫を施しており、例えば高齢者が施設内で迷子にならないように、Des-tination pointとして昔のバス停や、英国ならではのパブを模した背景の前に椅子(写真③)を置くなどしている。

 医師は平日に診察に来るのみで、入所によって原則的にはかかりつけ医を新たに登録することとなるが、民間保険や自費対応の場合にはかかりつけ医の診察も認められている。24時間対応は看護師が行っている。ちなみに、かかりつけ医と看護師のやり取りは紙ベースであるという。

 在院日数は様々で、1年未満から10年以上の人もいる。3階は緩和医療、2階は虚弱な高齢者、1階は痴呆症患者のフロアとなっているが、日本のような要介護認定の基準は用いられていない。

 施設はCare Quality Commission (CQC)の監査を受けている。保険会社も運営しているBUPAの患者を優遇することはなく、BUPAグループに属しているが、独立した運営を行っている。

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