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第104回 “ヒラメ病院”のパラダイス

第104回 “ヒラメ病院”のパラダイス

 この国の医療機関は診療所と拠点病院だけとなり、患者はその間を行き来する。流れはそのようだ。なるほど、拠点病院がしっかりした世界最高水準の医療を24時間提供できるまともな病院なら、これは素晴らしい!

 だが、この国にまともな病院などそうはない。拠点病院=官公立や大学付属病院などの“見た目そんな感じの病院”の医療水準は大概低い。それに、でっかい病院といえば、大体院長は天下りだ。

 それらしい年齢だから、という理由だけで院長職に納まり、居座っているのが多い。

 お寺には必ずご本尊の仏像が安置されている……みたいなノリである。

 「あの仏像は確か薬師如来……じゃなくて、盧舎那仏だったか、いや弥勒菩薩だったかも? まあ、とにかく仏さんですよ、確か」みたいな見た目重視の人選だ。どこかの医療雑誌の表紙を飾っている御仁はどうだろう?

 そういったお役所的な病院が専門医療のクオリティを保つことは非常に難しい。1人の医師が身を削ってその実力を発揮する、という環境では決してないし、医師に限らず周辺スタッフも同じく、いかに個人的資質は有能でも、医療人本来のまともなモチベーションなど維持できまい。

 当然、患者目線から見ても、己が命を預けるべく信頼できる実力を持った医師には決して見えないだろう。

 この原因は全て職員の「ヒラメ化」による。ヒラメ化とは保身第一、上ばかり見て患者や現場など一切見ない。

 医療機関の本来の使命そっちのけの「医療従事者のための医療安全」や現場全く無視の「労働基準局に叱られない勤務体制を遵守すること」が彼らの最大の関心事なのである。

 「こんな患者を診ていたら、職員が5時に帰れなくなります。断ってください!」

 「夜勤したら、次の日はお休みしてもらわなければ。人がいない? ああ、じゃあ、予定の手術は中止して下さい」

 拠点病院とは結局、大部分がこんなヒラメが泳ぎ回るコンクリートの箱になるのだろう。

 それも仕方が無い。世界は民主主義が終焉し、経済はこれからどんどん縮小し、国民総貧困時代に突入する。

 医者も含めて、まともな就職口などそう簡単に見つからない事態となるのである。大きな病院で職を得られた人たちは必死でしがみつくしかない。

 シマウマが外敵に襲われた時、お尻を向けて輪になって、攻撃してくる外敵を蹴り出そうとするように、外から自分たちの平穏な生活を奪うかもしれない患者という厄介者を蹴り出そうとする、そんなリスク管理が常態化することだろう。

 そうなれば、まともな医療を必要とする患者は大量に難民化する。

 ヒラメによる、ヒラメのための、ヒラメの病院、すなわち“ヒラメ病院”の誕生である。ヒラメ病院には、行政や理事長の顔だけ見ている“ヒラメ院長”がいて、書類しか見ない“ヒラメ経理”がいて、言われたことだけきっちりやる“ヒラメ事務長”がいる。現場になど一切関心はない。

 そして、運良くそこで職を得た医者は労務管理と安全管理の名の下、何もしなくていいのである。パラダイスなのだ。

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