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第99回「百合子旋風」と日本政治の行方

第99回「百合子旋風」と日本政治の行方

 今年も「百合子旋風」は健在のようだ。正月からメディアの関心は東京都の小池百合子知事の動向、特に7月とみられる東京都議選に集中し、テレビの露出度では安倍晋三首相を大きく上回り、米国のトランプ大統領と双璧をなしている。女性初の都知事に向けられた熱い視線は新鮮味を欠く国政への不満と、変革への期待かもしれない。

 「彼女は細川護煕首相を生み出した日本新党の出身で、細川連立政権時代には小沢一郎氏(自由党代表)の側近だった。小沢氏と別れてからは今の幹事長、二階俊博のそばで政治の裏表を学んだ。だから、新党を作って政局を動かす術は熟知している。舛添要一前知事のような政局音痴じゃないから、侮れないんだ」

 自民党長老の一人は、小池知事の裏側に「政界の壊し屋」と呼ばれた小沢氏の影をみるという。小沢氏と連携しているという意味ではなく、小沢流の政治的駆け引きに長じているという趣旨だ。

 小池氏は10年ほど前、日本新党→新進党→自由党→保守党→保守クラブ→自民党と渡り歩いてきた遍歴についてこんなことを言っている。

 「1990年代初めからの政界再編の荒波の中で生きてきた結果、自慢にはならないが、新党の立ち上げはお手のものだ。党名、綱領、政策、キャッチフレーズに、党名ロゴ作りまで、3日もあればまとめる芸当さえ身に付けた」

 新党結成など「お茶の子さいさい(簡単)」だと明言している。党本部も手を焼いてきた都議会自民党を下野させるべく、新党結成をちらつかせながら揺さぶりを掛けているのは、計算ずくめということなのだろう。

 確かに、小池氏が主宰する政治塾「希望の塾」も、原点は小沢氏が細川政権時代の新生党時代に始めたものが雛形になっている。自身の目指す政治理念に合致した人材だけを選りすぐって都議会に盤石な知事与党の基盤を築く。これは、小沢氏がかつて強引に進めて、排除の論理と批判された「純化路線」と同根だ。

 民主主義はある意味、自分と異なる者を認めることが基礎になる。政党復活予算200億円の存在は、都民からすれば、透明性を欠く、いかがわしいものに見えるかもしれない。だが、これも都庁の役人ではなく、有権者の声を受けた政党の考えを予算に反映するための一手段と言えないこともない。小池氏のレッテル貼りで、「悪い慣行」と位置付けられてしまったが、そう簡単に割り切れるものでもない。

(小沢+小泉純)÷2=小池知事?
 小沢氏の「純化路線」は安全保障問題という理念がベースにあった。自衛隊は「違憲」だと主張してきた社会党を説き伏せ、基本政策である安全保障に統一感を持たせようとの試みだった。しかし、野党だった自民党がこの策を逆手にとって社会党を抱き込み、政権を転覆させる。「小沢よりはまし」と自民党にすり寄った社会党は、さんざんもまれた挙げ句、安全保障政策を飲まされ、解党の憂き目を見ることになる。社会党にすれば、嫌いな奴(小沢氏)に殺されるより、親しい奴に殺された方がまし、ということだったのかもしれない。

 小池氏が掲げたのは政治の透明性だ。具体的な政策ではなく、政治スタイルの問題といっていい。これはある面、好みの問題であり、矛先を向けられた都議会自民党は戸惑いを隠せない。小池氏の軍門に下って、政党復活予算の廃止に同意すればメンツは丸つぶれ、自らの過去の悪事を認めることになるから、それはできない。

 当然の成り行きとして、都議選での真っ向勝負となるのだが、新党ブームの効果を熟知した小池氏の術中にはまる可能性が否定できない。さらには、いつも勝ち馬を選ぶ都議会公明党が自公連携を破棄して、小池氏に接近してしまった。次々に先手を取られ、反撃のチャンスを待つしかない状況まで追い込まれている。

 「小池氏を語る上で、もう一人の男がいるんだよ。小沢氏を見限った後にくっ付いた小泉純一郎元首相だ。かつては恋仲とも言われたけどね。『自民党をぶっ壊す』だよ。小泉さんが永田町でやった事を東京都でやっているんだ」

 自民党長老は、小池氏の政治遺伝子は「小沢+小泉÷2」ではないかと分析している。「自民党で閣僚までやった人が、自民党の『悪者』を退治するという勧善懲悪の単純な物語なんだけどね、これが意外に国民に受けるんだ。今回の悪者は政党復活予算にしがみつく都議会自民党、とりわけそのドンと呼ばれる内田茂・東京都連前幹事長だ。選挙に弱い若手はすでに腰が引けている。小池支持派はそれなりに議席を取るだろう。自民党は惜敗でとどめたら御の字だろうな」。

 党本部の反応は意外に冷たい。都議会自民党には、何度も党本部の意向を無視してきた過去があるからだ。とはいえ、次の国政選挙の指標になるともされる都議選で惨敗ともなれば、安倍政権にとってもただでは済まない。

 「大阪の橋下徹知事の時と状況は似ているが、弁護士出身で理論にこだわる橋下氏に比べ、国会議員出身の小池氏は融通無碍で捕まえ所がない。東京五輪の見直しで大した成果が上げられず、急降下と思いきや、矛先を政党復活予算に転じて、一気に巻き返してきた。食えないおばさんだ」。自民党選対関係者は小池氏の柔軟性が厄介だと吐露する。

総選挙遠のき、都議選が政治の焦点に

 その小池氏は次のように語っている。

 「極論すれば、小沢氏の政治行動の基準は、わずか2枚のカードに集約される。それは『政局カード』と『理念カード』である。『政局カード』とは持論である政権交代という錦の御旗を立てることであり、『理念カード』とは安全保障を中心にした政策構想である。政治的駆け引きに長けているように見えるが、やり方はシンプルだ。ある時は『政局カード』を振りかざし、それが手詰まりになると見るや、今度は『理念カード』を切る。この繰り返しである」

 至言であるが、これは小池氏にもピッタリ当てはまりそうである。

 さて、問題の都議選(定数127)だが、4年前に59人全員当選を果たした自民党は既に52人の擁立を決め、第1会派死守の構え。自民党と別れた第2会派・公明党は公認23人全員の当選を目指し、小池都政に是々非々の共産党も現在の17議席からの上積みを狙う。小池氏との連携を模索し、国政レベルでの変革にもつなげたい民進党は36人の擁立を決めて勢力拡大をうかがい、小池塾ではタレントのエド・はるみ氏ら目玉候補をそろえ、公明・民進との連携による過半数(64議席)確保に自信を深めている。「北方領土返還合意」→「衆院解散」の安倍シナリオが崩れ、総選挙が遠のいた現状で、都議選は今年の政界の行方をも左右する重要な政治決戦になりそうだ。

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