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第106回 「高齢者優遇」転換で社会保障・税一体改革は頓挫

第106回 「高齢者優遇」転換で社会保障・税一体改革は頓挫

 2016年末に決まった17年度以降の医療や介護の制度改革案は、これまでの「高齢者優遇」とは一線を画している。12年の社会保障・税一体改革大綱で打ち出した「年齢を問わず、能力に応じた負担」との理念に沿った見直しとなったためだ。だが一方で、一体改革の柱、消費税率アップの先送りにより、社会保障の充実策は縮小が相次いだ。

 「3年で1・5兆円(の社会保障費の伸び抑制)を、流れを汲んで予定通りやっている。小泉(純一郎)政権時代、竹中(平蔵経済財政担当相)は勇ましいことを言っていたが、出来なかっただろ」。16年12月22日、約97・5兆円の17年度政府予算の閣議決定を受け、麻生太郎財務相はこう胸を張った。

 「3年で1・5兆円」とは、16〜18年度の社会保障費の伸びの合計抑制目標額。17年度は16年度より6400億円程度膨らむ見通しだったが、政府は1400億円ほど圧縮し、5000億円増にとどめる。16年度も当初予算は約5000億円増に抑えており、17年度と18年度も5000億円ずつ抑制できれば「3年で1・5兆円減」は達成できるというわけだ。

 17年度の「1400億円圧縮」のメニューは、▽大企業の従業員の介護保険料引き上げ(440億円抑制)▽月々の医療費の自己負担に上限を設けている高額療養費の上限額引き上げ(220億円抑制)▽がん新薬「オプジーボ」の薬価を半減(200億円抑制)▽後期高齢者医療の保険料軽減措置の縮小(190億円抑制)▽65歳以上の療養病床入院患者の光水熱費アップ(20億円抑制)——など。

 高額療養費のうち、70歳以上の一般所得者(住民税課税世帯で年収370万円未満)向けの外来上限額アップには公明党が強く抵抗した。それでも、最終的には今の限度額(月1万2000円)を17年8月から1万4000円、18年8月から1万8000円に引き上げるとともに、14万4000円の年間限度額を新設することで落ち着いた。

 従来、政府・与党はこうした社会保障抑制策でなるべくお年寄りに痛みを求めることを避けてきた。だが、高齢化率が3割近くとなる半面、支え手の現役世代は減る一方だ。年末の自民党厚労部会では「年齢に関係なく、どのくらい負担できるかで負担額を決めるのは当然」との意見も飛び出した。17年度の圧縮メニューを眺め、厚労省幹部は「73年の老人医療費無料化以来の過剰な高齢者優遇が、ようやく適正化に動きだした」と漏らす。

 ただ、同省が拠り所とする社会保障・税一体改革は、消費増税と社会保障の充実をセットとしていた。それが安倍晋三首相が増税の先送りを続けていることで、17年度も充実は大きく後退した。子ども・子育て支援の充実(1000億円)こそ財源を確保したものの、国民健康保険への財政支援拡充(800億円)は300億円縮小され、低所得者の介護保険料軽減(1400億円)、低年金者向けの月最高5000円の給付金新設(5600億円)は実施を見送る。

 「こんな経済状態で増税など出来るわけがない」。最近、首相はこう漏らしている。一体改革について、ある厚労省幹部は「片肺飛行だ。首相はもう終わりにしようとしている」と、肩を落とす。

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