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第83回 糖尿病用剤の評価に疑問

浜 六郎 NPO法人 医薬ジランスセンター(薬チェッ)代表

 糖尿病用薬剤は2000年以降、インスリンアナログ、GLP-1作動剤、DPP-4阻害剤、SGLT-2阻害剤の4系統、26成分、55製品が新たに承認された。インスリンアナログ以外は全て、国際的に2005年(日本では2009年)以降に導入された新しい作用の薬剤だ。

 死亡につながる疾患用の薬剤は、総死亡率を減らしてこそ意味がある。少なくとも死亡を減少する傾向があり、その疾患の重大な合併症(糖尿病では網膜症や腎不全、心血管疾患、悪性腫瘍)を有意に減らすか、苦痛を有意に軽減する必要がある。そのためには、標準治療に新規製剤あるいはプラセボを上乗せして比較し、「プラセボに対する優越性」を証明する必要がある。

 ところが、これら3系統の市販後長期試験は、1剤を除いて、試験計画書の段階で優越性証明は目指していない。「非劣性」つまり「プラセボに劣らない」ことを証明するだけで高価な新薬と評価されている。

非劣性のお墨付きはFDA
 この奇妙な評価方法にお墨付きを与えたのは、米国FDA(食品医薬品局)だ。米国で2008年までに承認された糖尿病用剤は、どれも、総死亡はもとより心血管疾患を減らすことを証明できなかった。ロシグリタゾンに至っては、心血管イベントをむしろ増加させた。そこで、2008年12月、FDAの内分泌代謝疾患用薬剤に関する諮問委員会で、以下のことが確認された。

(1)心血管の予防には血糖値のコントロールが重要(2)従って、HbA1cを承認根拠とすることは妥当(3)心血管系イベントの改善を承認の要件とはしない(心血管リスク改善の証明は困難との判断で)。

 その一方、「第2相/3相試験中に何らかの心血管系の問題が検出された場合には、リスクが許容範囲を超えないかどうか確認するための、長期試験の実施を承認前に実施すべきか」をFDAが委員に諮問した結果、賛成多数で「実施すべき」とされた。その後、承認済み薬剤の非劣性試験が相次ぎ、危険度(ハザード比)の95%信頼区間の上限が、1.3未満なら害は許容範囲と判断された。

HbA1c低下で死亡増(ACCORD試験)
 実は、諮問委員会が開催される約半年前の2008年6月、ACCORD試験が公表され、厳格コントロール群が通常コントロールよりも死亡率が高く、HbA1cが代理エンドポイントとして機能しないことが証明されていた。それを無視し、さらに、「血管イベントの減少は無理だから、せめて悪化しないことでよしとする」と決めてしまった。その後、メーカーだけでなく、NIH(米国国立衛生研究所)も糖尿病用薬剤の試験に資金を投入している。つまり、“権威ある”NIHとFDAが、「甘い」試験の実施を認めたのである。

 このように支離滅裂な手法は許されない。薬剤を使う意味を原点に戻って考え直すべきである。

欠陥試験でのみ優越性を報告
 GLP-1作動剤リラグルチド(LEADER試験)やSGLT-2阻害剤(エンパグリフロジン)でプラセボに対する優越性を主張している試験は二重遮蔽が外れ、治療/管理の差が結果に表れていると考えられた1-4)。プラセボと同じものに、なぜ二千数百億円も支払う必要があるのか。情報開示の上、検証を要する

参考文献
1) Editorial、薬のチェックTIP.2016:16(5):102
2) 薬のチェックTIP.2016:16(5):108-12(LEADER試験)
3) 薬のチェックTIP.2016:16(6):127-8(FIGHT試験)
4) 薬のチェックTIP.2016:16(6):142-3(エンパグリフロジン)

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