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第105回 受動喫煙「総論賛成・各論反対」に頭痛める厚労省

第105回 受動喫煙「総論賛成・各論反対」に頭痛める厚労省

 2020年の東京五輪・パラリンピックに間に合わせるべく、政府が検討している「受動喫煙(他人のたばこの煙にさらされること)防止策」の策定が難航する気配をみせている。「総論賛成・各論反対」の象徴のような議論で、罰則付きの個別規制には飲食業界などが強く抵抗しているためだ。厚生労働省幹部は「頭が痛い問題だ」と苦悩を明かす。

 「これでも随分、譲歩したんだ。何としても取りまとめろ!」

 厚労省10階の大臣室では日々、そんな塩崎恭久厚労相の叱声が響く。「譲歩」とは、同省が10月に公表した、受動喫煙防止策のたたき台のこと。たばこ嫌いの塩崎氏にとって、本来は飲食店からもたばこを一掃したいところだったが、たたき台は店内に喫煙室を設置できる妥協案とした。嫌煙派と、たばこ排除に慎重な業界双方に配慮した結果だ。

 受動喫煙については、健康に悪影響を与えることが科学的に明らかにされている──。そんな一文で始まる厚労省のたたき台は、3段階に分かれている。官公庁や社会福祉施設などは「建物内禁煙」。小中高校や医療機関はより厳しい「敷地内禁煙」とする一方で、飲食店や事務所などは喫煙室の設置を認める「原則建物内禁煙」としている。違反者には、過料などの罰則を適用する。

 03年に施行された健康増進法は、受動喫煙対策に関して施設管理者の努力義務にとどめている。厚労省は多くの外国人観光客が訪れる東京五輪・パラリンピックをにらみ、来年の通常国会に受動喫煙防止策を強化した改正法案を提出する意向だ。多くの五輪開催地、開催予定地は受動喫煙に対する罰則付きの法律を整備済み。公共の場を屋内全面禁煙と法で定めている国は14年末時点で49カ国に及び、世界保健機関(WHO)からは日本の対策の遅れを指摘されている。

 しかし、対象の業界は対策の重要性は認めながらも、我が身に降りかかる規制には慎重姿勢を崩していない。

 「経営悪化を招く。各店が判断すればいい」「小さな店は喫煙室の設置費などなく、つぶれてしまう」

 11月16日、東京都内で厚労省が開いた業界団体からのヒアリングでは、日本フードサービス協会や全国飲食業生活衛生同業組合連合会など、飲食業界を中心に反対論が相次いだ。経団連や日本商工会議所も「経営への悪影響」を懸念した。

 一方、全日本シティホテル連盟などは「原則建物内禁煙」を容認したが、こちらは少数派。サービス業は大半が反対に回り、消費者団体の代表が「喫煙者の権利ばかり」と嘆く一幕もあった。

 業界への周知や喫煙室の設置を踏まえると、時間的に余裕があるわけではない。また、飲食業界の中でも全国焼肉協会は徹底した建物内禁煙を求めている。喫煙室の有無で、売り上げに差が出るのを嫌ってのことだ。厚労省幹部は「業界団体内も一枚岩でなく、悩ましい。ゼロ回答は許されず、ぎりぎりの接点を見つけるしかない」と言う。

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