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第104回 厚労省を悩ませる「混合介護」導入論

第104回 厚労省を悩ませる「混合介護」導入論

 介護保険と保険外のサービスを組み合わせる「混合介護」の導入論が、厚生労働省を煩わせている。公正取引委員会(公取)の提言を受け、政府の規制改革推進会議が10月、規制緩和の目玉政策として重点項目に掲げたことで、にわかに混合介護という言葉にスポットが当たったからだ。ただ、厚労省は導入に慎重なのが本音。強く反発する自民党厚生族議員らと組み、押し返そうとしている。

 医療の「混合診療」とは違い、介護保険法は混合介護を禁じているわけではない。例えば、保険が適用されるサービスの一つ、利用者の衣服の洗濯と、保険外サービスの犬の散歩の組み合わせは可能だ。ただし、犬の散歩は洗濯が終わった後、といった具合に、二つのサービスについて場所や時間を明確に区切る必要がある。

 こうした仕組みに公取が異を唱え、9月に混合介護の弾力化を提言。これを受け、規制改革推進会議は10月6日、混合介護の促進を来年6月にまとめる答申に盛り込む方針を打ち出した。想定しているのは、洗濯と犬の散歩の組み合わせなら、ヘルパーは洗濯機を回している間に犬の散歩に出るといった、「同時・一体的」なサービス提供だ。高い技能を持つ特定のヘルパーを指名した際に、今の介護給付サービス費に「指名料」として上乗せ料金を設定できるようなことも考えている。

 同時・一体的なサービス提供が可能となれば、事業者はサービス時間を延長せずとも保険外の料金を徴収できる。利用者の使い勝手が良くなれば需要も増え、サービスの質も改善する、というのが規制改革推進会議の言い分だ。同会議の議長、大田弘子・政策研究大学院大学教授は「介護を厚みのあるマーケットに育てていきたい」と意欲を語る。

 これに対し、自民党の介護に関するプロジェクトチーム(座長=田村憲久・前厚労相)は猛反発している。10月13日に開いた会合では、尾辻秀久・元厚労相らが「めちゃくちゃだ」と声を荒らげ、公取の介入にも反発が相次いだ。田村座長は会議終了後、記者団に「公取に文句を言いたい。越権行為ではないのか」と批判するうち、ヒートアップ。公取が特別養護老人ホームの経営に株式会社の参入を認めるよう提言していることも取り上げ、「誰のためか。株式会社に頼まれたのではないか。ふざけんな、というぐらい頭に来ている」などと不満をぶちまけた。

 混合介護の場合、混合診療のような「安全性の不確かな治療がはびこる」「保険適用範囲の縮小につながる」といった反論はしにくい。それでも厚労省は「同時・一体的サービス提供まで認めると、利用者が想定もしない料金を請求するような業者が出てくる可能性がある」とし、利用者保護の観点から反対している。

 規制改革推進会議が公取の提言に飛び付いた背景には規制緩和のネタが底をつき、答申の目玉を見いだしにくいという事情がある。同会議は9月に発足したばかりだが、メンバー14人中6人は前身の規制改革会議の委員だった。新味ある改革案が出にくい状況もある。厚労省幹部は「混合介護は丁寧な議論もないまま、目玉づくりでねじ込まれたようだ。族議員の先生方の協力も得て、導入論の息の根を止めたい」と語る。

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