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第7回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第7回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第7回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」を開催いたしました。
2016年10月26日(水)17:00~18:30衆議院第一議員会館第3会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第7回勉強会を開催いたしました。詳細は、月刊誌『集中』12月号にて、事後報告記事を掲載いたします。

まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。「医療界でも、危機管理、コンプライアンスが重要視されるようになっています。2000年を境に、新聞社などの大手メディアには医療班ができ、医療機関は大手メディアにウォッチされるようになりました。以来、誹謗中傷的な記事が新聞をにぎわせています。本日は医療のコンプライアンスに関する第一人者である郷原先生にお話していただきます。」

続いて、当会国会議員団代表の原田義昭・衆議院議員からご挨拶いただきました。「国会が大変な時期ですが、勉強すべきことは、皆さんと一緒に勉強していきたいと考えています。本日は、医療分野で多くの経験を積んでいる郷原先生に講師を務めていただき、望外の喜びであります。」




今回の講演は、弁護士の郷原信郎氏(郷原総合コンプライアンス法律事務所)による
『環境変化への適応と医療をめぐるコンプライアンス』と題するものでした。


以下はその要約です。
コンプライアンスとは「法令遵守」ではなく、「組織が社会の要請に応えること」である。
医療の分野でもそれは同じで、組織は社会が認めているからこそ存在し、活動することができるのだから、社会と組織の関係は、社会の要請によってつながっていると考えていい。
医療をめぐる要請は複雑化し、大きく変化しているが、その変化に対応して、そのときどきの要請に適応していくことが求められている。
環境の変化に対応できないと、そこにリスクが顕在化し、紛争が発生し、コンプライアンス問題が現実化することになる。
環境の変化とリスクとの関係を、1つ1つ具体的に把握していき、根本原因を明らかにしていくことが、医療や医薬品をめぐるコンプライアンスとして重要な取り組みになる。

講演に関して質疑応答が行われ、次のような発言がありました。

尾尻:「医師法21条の取り扱いは、大野病院事件の前後で変わったのでしょうか? 医療界が萎縮しているように思うのですが。」

郷原:「法医学会のガイドラインが出たのが契機になったと思います。そのガイドラインでは、診療行為に関連した予期しない死亡及びその疑いがあるものは、医師法21条による届け出の対象になるとしています。医師の管理下にある死でも、警察への届け出の対象になるということです。これによって、届け出の範囲は大きく広がりました。」

尾尻:「医療事故を刑事事件として扱うのは難しいというお話でしたが、大野病院事件でそれが明らかになったわけですか?」

郷原:「大野病院事件では、医師を逮捕までしたにも関わらず、無罪判決が出て、検察は控訴すらできませんでした。あの事件は検察にとってトラウマになっているでしょう。それ以降は、よほどのことがない限り、医療過誤事件を刑事事件として扱うなというのが、検察の基本方針になっているのではないかと思います。」

篠原裕樹(篠原湘南クリニックグループ理事長):「高齢化に伴い認知症患者が増えていますが、患者自身が自己決定できない場合、家族の代理判断はどこまで認められるでしょうか?」

郷原:「理屈の上では基本的権利であっても、ただそれを尊重すればよいというものではない、ということがいろいろな分野であります。たとえば消費者主権といっても、消費者リテラシーの問題もあるし、誤ったイメージや印象が先行し、自己決定の前提となる情報が不足している場合もあります。理念としての消費者主権が、必ずしも社会にとってプラスとは限らない。それと同じで、自分の受ける医療を自分で決定するのは当たり前のことですが、それをよりよく実現していくには、ベターなシステムの運用を目指していく、ということしかないと思います。運用においては、両者が納得できるようにしていくことが重要ですが、現在の事故調査委員会では、そこがうまくいっていません。」

真野俊樹(多摩大学医療・介護ソリューション研究所所長・教授):
「医療分野では民事裁判もけっこうありますが、それについては?」

郷原:「民事の医療過誤裁判にはいろいろなレベルがあり、一般化することができません。刑事裁判は構成要件が決まっていて、それに当てはまることが有罪判決につながりますが、民事裁判は紛争解決のための手段で、最終的には裁判官がどう判断するかです。司法は医療の問題解決に万能ではないし、それほど大きな役割を果たすこともないと思います。」

馬渕茂樹(トータルライフ医療会理事長):「社会の要請についてですが、現在、国が進めているのは、「治す医療」から「治し支える医療」へのシフトです。
さらに「予防し治し支える医療」ということも言われるようになっています。これについてどうお考えですか?」

郷原:「治す医療から、治し支える医療、予防し治し支える医療へと社会の要請が変化しているのかもしれませんが、どこかベストのところに設定されるべきなのでしょう。それを判断するのには専門的な知見が必要になりますから、私のような専門外の人間にはわかりません。」

楠岡英雄(国立病院機構理事長):「3月まで病院長をしていました。病院で患者さんが亡くなったとき、医療者には自然の経過と見えても、遺族が納得せず警察に被害届を出すことがあります。警察はそれを受理し、病院にきて証拠物件やカルテを押収し、関係者の事情聴取を行います。病院業務を圧迫しますが、病院はそれに協力します。その後、送検されたのかなど、わからないまま時間がたち、たずねても教えてもらえません。数年後に、事件にならなかったので証拠品を返しますと言われたりします。病院としては大変ですが、どうにかならないのでしょうか。」

郷原:「捜査機関や検察が何をしているのか、どういう判断をしたのか、ということについての情報開示はほぼなく、説明責任は果たされてきませんでした。そういう状況に対して、マスコミを含めて、世の中が文句を言わずにきました。しかし、一般社会での活動に関連して起こった問題については、刑事手続きがどうなっているか、どういう理由で何が行われているのか、きちんと開示しないと社会に混乱をもたらします。患者側・遺族側の思い違いで被害申告されたような場合に、警察から任意で提出してくれと言われたら、強制捜査でやってくださいと言っていいでしょう。とてもそんなことはできないはずですから。一つ一つすじを通していくことで改善していくしかない、と私は思います。」

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▼勉強会資料
第7回_日本の医療と医薬品等の未来を考える会_郷原信郎




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