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未来の会

第6回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート

第6回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」開催リポート
北村唯一(きたむら ただいち)

1973年 東京大学医学部卒業
1979年 東京大学医学博士取得テキサス大学研究員
1985年 東京大学医学部講師
1994年 東京大学医学部助教授
1998年 東京大学医学部教授
2008年 東京大学名誉教授
    あそか病院院長
2014年 自靖会親水クリニック院長


第6回「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」を開催いたしました。

ojiri 2016年9月28日(水)17:00〜18:30、衆議院第一議員会館国際会議室にて、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の第6回勉強会を開催いたしました。詳細は、月刊誌『集中』11月号にて、事後報告記事を掲載いたします。まず、当会主催者代表の尾尻佳津典より、挨拶させていただきました。

 「本日は厚生労働省の子宮頸がんワクチンの担当の方にお話いただくことになっていましたが、諸事情にて登壇が出来なくなり、北村先生に急遽お願いしました。子宮頸がんワクチンについては、賛否両論さまざまな意見があり、大きな話題になっています。誹謗中傷になることは避け、自由闊達な議論をお願いいたします。」

harada 続いて、当会国会議員団代表の原田義昭・衆議院議員からご挨拶いただきました。「厚生労働省の担当課長に講演をお願いしていましたが、昨日から国会が始まったこともあり、どうしても時間がとれないとのことでした。このワクチンに関して、行政としては、使えとも使うなとも言えない状況になっています。効用はあるわけですが、リスクがあるという指摘には真摯に検討しなければいけません。議論を深めていき、いつの日かこの問題がクリアされることが大切だと思っています。」

 今回の講演は、北村唯一(性の健康医学財団理事長・東京大学名誉教授・自靖会親水クリニック院長)による「子宮頸がんワクチンとHPV——子宮頸がんワクチンの対案としてのHPV郵送検査の提案」と題するものでした。以下はその要約です。

 HPVは子宮頸がんの原因ウイルスと認められており、その感染を水際で防ぐワクチンとして子宮頸がんワクチンが開発された。日本でも厚労省の勧奨に基づいて使用されたが、副反応の問題が出て、勧奨中止となっている。副反応の頻度は他の予防接種より高く、自己免疫疾患が発症するとされている。子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんを100%防げるものではなく、本当の効果が明らかになるにはまだ5〜10年はかかると思う。そこで、膣の擦過細胞を自己採取した検体を郵送するHPV郵送検査を提案したい。自己採取によるHPVの検出率は78%と高いことが分かっている。まず郵送検査を受け、それで高リスクHPVの感染が明らかになれば婦人科を受診する。この検診システムに公費助成をお願いしたい。

講演に関して質疑応答が行われ、次のような意見が出されました。

takaku高久史麿・日本医学会会長
 「子宮頸がんワクチンにより前がん状態が減っているというデータが、すでに外国の文献に2〜3本出ています。外国では70%ほどの若い女性がワクチンを受けていて、日本が先進国の中で極端に少ないことは間違いありません。これから10年たって、先進国の中で日本だけが子宮頸がんが減っていないという結果が出たとき、誰が責任を取るのかが問われます。もちろん厚労省は責任を問われるでしょうが、医学界が何もしなかったら、やはり責任を問われることになります。」

nakabayashi中林正雄・総合母子保健センター愛育病院センター長
 「ワクチンを接種するとき、欧米ではホームドクター制がしっかりしているので、普段から慣れ親しんだ医師が注射しますし、母親への説明もきちんと行われます。日本では集団で予防接種する習慣が残っていて、どんどん進められました。そういったことが、精神面で多少問題があったのではないかと思います。ワクチン接種後のレスキューも不十分でした。現在、経口薬によるHPV対策の研究も進められています。今後はワクチンも含めたいくつかの対策を、総合的に進めていく必要を感じます。北村先生が提案された自己採取による郵送検査も、いいアイディアだと思います。」

tsutsumi堤治・山王病院院長
 「HPVは進行した子宮頸がんの9割で検出されます。HPVは子宮頸がんの発がんには関係しますが、ある程度進行すると検出されないことがあるのです。自己採取による検診を進行がんの人が受けた場合、HPV陰性と出る可能性があります。そのあたりに対する配慮が必要かと思います。子宮頸がんの患者さんは30代にも増えていて、手術で治せても、子どもを産めないなど、大きな問題を残すことがあります。子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがんですから、基本的には推奨すべきと考えています。」

ohkuma大隈和英・衆議院議員(医師)
 「子宮頸がんワクチンに関するマスコミの報道には、非常にショッキングなものがあります。そうしたこともあって、エビデンスに基づいてワクチンの話をしても、お母さま方やワクチン接種をやめた地方議員の方たちから、なんてこと言うんだ、という目で見られたりします。見通しが立っていないところに問題があります。ぜひとも専門の学会にイニシアチブを取っていただいて、行政が動き、早く次のステップに進むことが大切です。この空白期間に、ならずにすんだ子宮頸がんになってしまう人が出ないような対策を打つ必要があります。歩みを早めて欲しいと思っています。」

kiguchi木口一成・東京都予防医学協会検査研究センター長
 「婦人科学会などの専門学会が、WHOの勧告やヨーロッパのしかるべき機関のデータに基づいてワクチン接種を進めないと、対象となっている若い女性たちが不幸な目に合うことになる、という声明を出しています。この間にも、他の先進国ではワクチンによって、子宮頸がんの罹患率も死亡率も減らしているという事実があります。ワクチン接種後の症状が出た方にはきちんと救済を進め、エビデンスのあるものに関しては、しっかり決めていただいて、前に進めていくべきではないかと考えています。」

shinohara篠原裕希・篠原湘南クリニックグループ理事長
 「北村先生の講演で、男性のHPV感性の話がありましたが、高リスクHPVに感染していた男性は、どうすればよいのでしょうか。」


北村唯一
 「HPVが感染したら、終生消えません。婦人科医は2〜3年で消えると言っていますが、私の研究では、セックスをしていない80代でも、HPV陽性の人がいます。HPVに対する薬はありませんから、本来であれば、コンドームを使用するのが好ましい。それでなければ、相手の女性は子宮頸がん検診を毎年受けるのが望ましいでしょう。」

 勉強会の後は、議員会館内の別室に移り、懇親会が行われました。参加した多くの方々が自由に交流し、活発に情報交換する場となりました。


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